幸福をかき集めて

*あんまり好きな言い方じゃないけど「幸福度」ということばがある。どこでどのようにして測られてるかは知らないけど、世界の幸福度ランキングなんてのも耳にしたことがある。この幸福度って、瞬間瞬間で変わりそうなもんだよね。告白する前と、告白に失敗した後じゃあ、そいつの幸福度は天と地の差があるように思うし。

いや、とくに幸福度について言いたいことがあるわけじゃなくってね。みんなそれぞれが感じている「幸福度」を、ひとつの場所にかきあつめて、それらを全人口で割って平均して配り直すと、どうなるんだろうと思ってさ。みんな幸福になるのかな、それとも不幸になるのかな。はたまた「どっちでもない」になるのだろうか。いまこの瞬間、どれくらいのひとが幸福を感じていて、どれくらいの人が不幸を感じていて、残りのどれくらいがなんとも思っていないんだろうね。

いやなにも、ぼくたちが手にしている幸福だけ集めるというのも、変な話かもしれない。手にしている幸福しか感じられないことはないはずだ。地位や名声、富に権力といったわかりやすい言葉に置き換えられる幸福だけじゃなく、さらには安心とか安全とか恋とか愛とか、そんなものでさえも追いかければ逃げていく。前に逃げていく幸福を追い求めて、気付けばなんにもない場所に来ちまった、みたいなことだってある。

ぼくが、ぼくらがいまだ手にしていない幸福たちは、もしかするとそこらじゅうに散らばっているかもしれない。そいつらも一緒にかきあつめて、平均して配り直したら、どうなるかなぁ。え?感じられなきゃ意味がないって?ばかもん、そんなのは感じたいときに感じれば良いんだよ。


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