酔っ払って書き残したメモより

*ぼくは毎日手帳をつけているので、基本的にどこへ行くときも、カバンの中に手帳を忍ばせている。酒場で飲んだり、友人とお茶をしたり、どこかへお出かけしたりして感じたことや書き残しておきたい言葉、おぼえておきたい感情、忘れたくない出来事を、手帳のその日のページに書き残している。その場で速記として書き残すこともあれば、何日か経った後にいつの日か忘れたけれど、適当に空いているスペースに書き込むこともある。

きのう、手帳の空いたところを埋めようと開いたら、書いた覚えのないメモを見つけた。

「リアクションで人生を進めるな、アクションで人生を進めろ。好きと言われるのを待つな、好きと言われて好きになってばかりいるな、先回りして好きになるんだ」

ううむ、書いた覚えはないけれどぼくの字で、ぼくが使っているペンだったので、筆者がぼくなのは明らかだ。ただ、言葉までぼくのものかどうか、定かではない。きっと、酔っ払って書き残しておいたのだろうな。ぼくっぽいと言われればぼくっぽいけれど、飲み屋で会ったおっちゃんが言ってたかのようにも見える。

違うページに、もうひとつあった。
「世界で起こるたいていの問題は、自分にとってはどうでもいい。自分に起こるたきていの問題は、世界にとってはどうでもいい。どうでもいいままにしておきたくないことだけ、考えてりゃいいさ」…ううむ、これもおれのことばっぽい。でも、酒に酔った哲学かぶれのことばっぽい気もする。いや、「酒に酔った哲学かぶれ」はそっくりそのまま、おれに当てはまるかもしんないけど。ま、書き残してあるメモに納得しているということは、おれっぽいのだろう。

おれは酔っ払ってこんなことを書いているのかと思うと、少し恥ずかしいところでもあるが、おもしろいもんだよなぁ。お酒をよく飲む人はみんなそれぞれあるのだろうか。お酒を飲まない人でも、酔っ払っている人がふいに放ったことばで、印象に残っていることばがあるのだろうか。ま、だいたいこんなことを言うやつは、酒に酔ってる前に自分に酔ってる気がしないでもないな、自分も含めて。


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