ごめんの一言が言えたとしても。

*年に1、2回ほど、思いついたときに必ず見ている映像がある。映画やドラマほど長くなく、広告ほど短くもない、たった10分やそこらの映像だ。それは「学校へ行こう」という番組であった「未成年の主張」という、あの、屋上からワーッて叫ぶやつ。告白したり、先生にぶっちゃけたり、秘密を暴露したりといろんなケースがあったと思うんだけど、ぼくの見ている回は「ごめんなさい」の回だ。

部活動で一緒だった同級生に、ある日勢いで傷つけるような言葉を放ってしまう。それも、傷つけようと思って言ったものでなく、軽口を叩いてみたら、くらいのものだったと思う。それ以来、その二人はギクシャクしてしまい、一緒に帰ることも話すこともなくなってしまったそうだった。特段仲がいいわけでもなく、ただ部活で一緒の、同級生、くらいの関係性のように見えた。

で、その「言った方」が、屋上から「言われた方」にあやまるんだよね。「ごめん!!!!」と。自分が馬鹿だった、そんなに傷ついているなんて知らなかった、と。大きな声で、顔をくしゃくしゃにしながら「ごめーん!!」と屋上から叫ぶんだ。不謹慎だけど、あれは気持ち良さそうな謝り方だとも思ったよ。で、さらに「ゆるしてくれ」と叫ぶんだ。あれはものすごくかっこよかった。

謝ることなんて、大人になればなるほどむずかしい。いや、いくつの子だってむずかしいもんだ。自分が悪かったと、自分の非をちゃんと認めて、謝るんだから。ぼくはあの映像が大好きで、忘れないように年に数回見るようにしている。映像の中では、言われた方も「おれもわるかった」と謝るんだけど、その後ふたりがどういう関係性になったのかはもちろん知らない。

・「ごめん」のひとことが言えたとしても、離れていく人もいる。「ごめん」と頭を下げられたとしても、許せない人もいる。謝ることはもちろんむずかしいけれど、謝ったからといってすべてが解決することばかりじゃない。それでも、きちんと「ごめん」のひとことが言える人間でありたいなと、ぼくはあの映像を見ながら何度も思うのだ。あわよくば、親や子供、恋人や嫌いな人にだって、きちんと謝ることのできる人間でいたい。あわよくば、だけどねー。


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