歳上の人に夢を聴くのにハマる

*若い頃、「おまえの夢はなんや?」と聞かれるのが、だいぶ苦手だった。いや、苦手だったけど、そういうのにハマっていた時期もあった、と正直に書いた方がいいだろう。街頭で「あなたの夢はなんですか?」みたいなイベントを企画してやったこともあったし、人の夢を聴いて回るようなこともしていたこともある。夢があるってそれだけで素敵で、いいじゃん!って言えるようなことが素晴らしいと、信じていたような時期もあった。いや、それはそれでもちろん素敵なんだぜ。

夢が苦手だとさいしょに感じたのは、小学生の頃だった。卒業式で、ひとりひとり「夢を言う」みたいなしきたりが確かにあったのだ。男の子はだいたい今やっているスポーツのプロが相場で、女の子はケーキ屋さんとか花屋さんとか、ありふれたものだった。ぼくも仕方なく「プロ野球選手になる!」みたいなことを言ったおぼえがあるのだけど、そんなのになれるやつは一握りで、おれみたいな才能のない奴はなれっこないよ、と妙におとなびた感じで思っていた。

それから二十歳ぐらいの頃、夢とかそういうのが素敵で、かつ人を巻き込める(きらきらして見える)もんだから、それっぽいことをよく語っていた時期があった。30代ぐらいのおじさんが酒場で言ってたらダサいかもしれないが、若いから許される、キラキラして見える、応援してくれる、みたいなのがあったのだろう。だから「やりたいこと」めいたものをよりキラキラした感じで言って、それまで、みたいな感じだったように思う。

今でも夢とか目標とかを、ぼくぐらいの若い人たちに聞くのは苦手なんだけど、さいきん自分より歳上の人たちに「夢みたいなものってありますか?」って聞くのが、好きなんだよなぁ。どうして歳上の人かというと、30年とか40年生きてきた人って、自分の「限界値」というか、手の届く範囲や自分のちからをある程度理解してきた人だと思うのね。昔みたいに大きいことは言えない、自分の今の延長戦で叶えたいこと、なりたいもの、ありたい姿ってなにかってのが、現実的な答えとしてかえってくることが多いんだよね。あと、重要なのは「夢」とかが恥ずかしい年頃ってのがでかいよ。

そういう年頃の人たちに、ある意味で若さを利用して「夢ってなんですか?」って聞くのに、さいきんハマっている。これ、けっこうおもしろいもんだよ。で、だいたい素敵なんだよなー。昨日も漫談をやられている芸人さんにそれを聴いたら「おれ、もっとあたらしいおもしろいものをつくりたいというか、そこに行きたいねん」って話してくれたのが、すげえよかったんだよ。


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