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童貞、ナンパする(第四話)

童貞、アプリでカモになる

 時は社会人二年目の夏頃だったか
 はじめてマッチングアプリで出会いができた。
 名前はゆりこ(仮)さん。

 都内の店でコーヒーを飲む約束をしたのが始まりだった。場所は有機栽培のコーヒーが有名なカフェ。指定された席へ向かうと、緑あふれる店内の一角に彼女はいた。

 第一印象は颯爽とした感じ。
顔は多部未華子

そこにヨーダを足して÷2した感じ。


 表現が悪かったけど、とても可愛くて、その時の僕はすぐにメロメロになった。つまり下心スイッチオン。はっきり言って、相槌しか打てないくらい実のない会話をしていた。もうこの人とは会えないかもな。そんな気もしたのだけど、どこからか彼女が通っているラウンジの話になった。

ゆ「非モテ君は自分改革しないの?」

僕「したいとは思います。最近太りましたし。ゆりこさんは、きらきらしてますよね。」

ゆ「ありがとう。これでも今通っているジムみたいなもののおかげかな?」

僕「すごい!通っているんですね。」

ゆ「昔は自信がなかったんだけど、そこでは筋トレなどのトレーニングをしながら、髪型とかファッションも見てくれてるんだよ??」

僕「そんなところあるの?!」

ゆ「トータルコーディネートっていうの。興味ある?」

僕「ありますね。」

ゆ「そしたら、私から伝えるよ。今度行こう?」

 ということで、さっそく次の週にそのトータルコーディネートをするというラウンジに行くことになった。なんだか、可愛い女の子に釣られた気がする。

それから数日後

 午後20:00。
 青山のおしゃれな場所を、チノパンとジャージで歩く僕。仕事帰りの僕はゆりこさんと待ち合わせ、例のラウンジに寄った。先週のトータルコーディネートを行うところである。

 ラウンジ内はトレーニング機材やメイクアップブースなどがあり、角にソファがあった。
 ソファには既に今回の面会スタッフの女性が待っていて、ゆりこさんを見るなり挨拶をした。そこから1時間ほど問診票を書いたり、面談をしたり…

 ラウンジのコンセプトは「変わる」。今まで自分改革をしなかった人々が集まり、一緒にトレーニングやヘアセットを学びながら、みんなで可愛く・かっこよくなろう!というものだ。彼女が欲しいと願い、変わりたいと願う僕には魅力的に聞こえた。

 女性の話に「はいはい」とうなずき、
 全力で相槌を打ち
 頷きながら身を乗り出して、

 気が付いたら僕はラウンジに入会していた。

 もう一度言う。入会していた。
 正味1時間。
 1年契約で15万円

 プロのスタイリストやボディメイクのトレーナーさんとレッスンをするんだって。そう聞くと高くないけど、決して安くない。そして、薄々思う騙されているんじゃない?感。

 ただ、今まで何もしてこなかった僕が、何かを変えるきっかけがほしかった。その投資としては安いと思ったし、人間、「変わろう」と腹をくくったときが変われるチャンスなんだと思う。だから、僕は二つ返事で入会した。騙されていてもいいやと思った。少しでもここで何かプラスのことを吸収しよう。そう思った。入会したとき、後ろで見ていたゆりこさんも少し驚き、そして喜んでいた。
 即決だったのかもしれない。
 こうして、マッチングアプリで女性に釣られた男が、15万の大金をジムに支払うという構図が出来上がった。やっぱり非モテは搾取されるのだなあ。

【後日談】

 実はゆりこさんは、マッチングアプリに潜伏し、非モテとマッチしては、その人々をラウンジに連れていく手慣れだったのだ。そして彼女自身もこのラウンジ経営の一人であった。そう、非モテを入会させるプロ。僕(ら非モテ)は完全に女性に釣られて搾取されたのだった。

 ただ、ラウンジ自体面倒見はよくて、ファッション・ヘアセット・ボディメイクもプロが教えるだけあって、吸収できることはいっぱいあった。3か月は集中して通ったのだが、後々に自信がついた一つのきっかけになったと思う。
 ちなみに僕はその3ヶ月で10kg痩せた。


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「童貞、ナンパする(第五話)」

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