一発退場の後に

「まさか」が大舞台で起きる。110mハードルの決勝で2人が不正スタート(フライング)により失格となった。一人は前日に参加標準記録を突破した村竹ラシッド選手(順天堂大)、もう一人も自己ベストを更新して決勝に残った石川周平選手(富士通)だった。

優勝した泉谷駿介選手(順天堂大)の両隣には誰もいない格好となった。自分のペースでやれる選手ならば集中できそうな環境でありそうだが、2人も失格となった後にスタートを決めるのは結構勇気がいる。しかし、スタートもそれなり決まっていた。最初に飛び出したのは、このレース前まで日本記録を持っていた金井大旺選手(ミズノ)だったが、中盤のハードリングで泉谷選手がトップに立つ。その勢いのまま10台目のハードルも通り過ぎ、13"06の日本新記録を樹立、日本記録がついに13秒一桁台まで辿り着いた瞬間であった。終わってみれば、2位金井選手、3位の高山峻野選手(ゼンリン)の参加標準を突破していた3人が五輪内定となる順当な結果ではあったが、決勝で4~6位に入った3人も全員自己ベストを更新する、非常に高いレベルのレースになった。

泉谷選手は村竹選手のフライングに、いや、前日の参加標準突破が与えた影響は少なからずあったであろう。同じ順大の後輩が出した記録に、あいつが出したなら俺も…と思わないはずがない。記録としては個人が出したものだが、チーム順大としてのアシストがあったとも言えそうだ。

今日で日本選手権は閉幕した。走り幅跳びの大会記録、男子800mの1'46"台と、今日もなかなかの好記録が出た一日だった。オリンピックへの風当たりは依然として強いし、この状況下で行うことの意義は誰も説明できていない。とはいえ、選手たちのパフォーマンスを目の当たりにすると、この力を発揮する機会が無いのも寂しい限りだと思ってしまう。そんな日本選手権の4日間であった。

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