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内定に次ぐ内定

タイトルはオリンピックの10,000mのことである。昨日、105回目の日本選手権が開催され、男子は伊藤達彦選手(HONDA)、女子は廣中璃梨佳選手(JP日本郵政G)と安藤友香選手(ワコール)の3名が内定した。

女子のほうは、廣中・安藤の両選手のマッチレースとなった。前半は廣中選手が引っ張り、中盤は安藤選手が引っ張る。残り3周を切ったところくらいで廣中選手が徐々にその差を広げて、安藤選手を突き放す。それにしても廣中選手のフォームは力強くて、腕振りが物凄い。あそこまで上半身を使えるのは男子でもそういない。肩甲骨周りの柔らかさと筋力が並外れている。一方、安藤選手は忍者走りと言われるように、上半身をあまり使わない省エネなフォーム。対照的な二人が同時にオリンピックの出場権を得たのは、何だか面白い。

今日の優勝タイムは31'11"75で標準記録を突破している。先日新谷選手がマークした30'20"44という日本記録は、とても遠いところに感じるが、将来的に廣中選手に挑んでほしいタイムである。まだ、若干20歳の彼女には期待しかない。

一方、男子のほうは伊藤選手が終盤のスパートで抜けて、見事優勝を果たした。昨年12月の日本選手権で参加標準記録(27'28"00)を突破していたため、この試合で3位以内に入れば代表に内定する条件だった。だから、他の選手よりは精神的に余裕はあったはずだが、正月のニューイヤー駅伝で疲労骨折をしており、一時は諦めかけていたという。それをここまで戻してくるのだから恐れ入る。

相澤選手が日本記録を出したレースでは、スパートのタイミングが早くて勝負には勝てなかった(記録は前回のほうがよい)。今回は3位以内だからこそ、勝つためのレースに徹することができた。ただ、競り合った相手はまだ大学生の2人。駒澤大学3年生の田澤廉選手(2位、27’39”21)と2年生の鈴木芽吹選手(3位、27’41”68)である。田澤選手が大迫選手の持つ学生記録(27’38”31)を切るのは、もはやタイミングの問題と思うし、鈴木選手にも記録更新のチャンスは十分にあるとわかった。駒澤はこのツインターボを武器に来年の駅伝シーズンをどう戦うのか、とても興味深い。個人的には、鈴木選手の5区(山登り)は勿体なく思えてくるので、2区鈴木選手→3区田澤選手の並びを見てみたい。

話が逸れてしまったが、伊藤選手は大学4年で一気に頭角を現した選手である。大学3年の日本学生ハーフで61分台を叩き出し、その年のユニバーシアードでハーフマラソン銅メダルを獲得。そして、全日本大学駅伝では他校のエースを抑えて、2区で区間賞(区間新記録)を獲得。同年度の箱根では、ランニングデートと称された相澤選手とのデッドヒートが同大会のハイライトになったほどだ(記録は1:06'18"で区間2位)。今日の記者会見で以下のように語ったことも、本人が自分をエリートではないと評している証拠だろう。

若く、調子よい選手がきっちり内定を勝ち取った。ここ数年のハイレベルなレースが多く見られれば、陸上の人気も増えてゆく期待が持てる。"ランニングデート"を「面白い」と言えてしまう人間力の高さも、非常に魅力的だなと感じる。世界の壁はとても分厚いが、チャレンジする姿を見てみたい。

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