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群れの終焉

最近、何かとアリが目に付くのだが、今日はこんな記事を紹介したい。東京の多摩動物公園で、ハキリアリの展示が話題になっていたという。

動物園ならば、元気な動物たちの姿を見せるのが通常だろうが、この展示では、女王アリが死んでしまった後も展示を続けるようにしたということだ。女王の死が何を意味するか。それは、そのコロニー(群れ)の終焉である。新しい女王アリがそこを乗っ取ることもなく、新しい子どもが生まれることもないので、その群れは徐々に衰退していってしまうという。

アリたちは、統率する立場(女王アリ)がいなくなっても、自分たちの仕事をせっせと日々行っている。様々な担当があるのだが、各々が各々の役割を淡々とこなすのみなのである。その先に待っている滅亡に目もくれることなく。

そして、先月28日に展示は終了したという。穏やかに訪れる"滅亡"を見届けた人は多くのことを考えたそうだ(上記事参照)。人間社会、特に日本は目を向けたくないものから目を背ける傾向にある。死ぬことや、貧民の帝都に書かれているような社会的に弱い立場の人の存在。この展示はアリを通してではあるが、そういった忌み嫌われるものを直視できる、すごい機会であったように思う。

ここ最近も色々と恐ろしい事件が起こっていて、怖い怖いとショックを受けるけれども、一方で、事件を起こした人がどうしてそうなっていったのかまで、思考(報道)が及ぶことは少ない。苦しい立場に置かれた時の社会のセーフティネットは十分なのだろうか。被害者だけでなく加害者を救えた手段があったのではないか。

目を背けたくなる事象に対して、きちんと向き合った時、今まで考えていなかった何かが生まれるのだろう。そんな意味で、"アリ"の展示は、来場者に色々なことを考えさせてくれたものだったように思える。

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