絹糸で織りなす日本アート大野浩邦氏を訪ねて
2021年9月30日 染織工房シルクトーン・道原(どうばる)ギャラリーへ
お父様から受け継いだ100年手織り機で、大相撲化粧廻しを織り続けて半世紀。代々博多織の職を営んできた大野家が化粧廻しを作るようになったのは、浩邦さんのお父様の代からだそうです。
博多織とは、先染めの糸を使用し、細い経糸(たていと)を多く用い、太い緯糸(よこいと)を筬(おさ)で強く打ち込み主に経糸を浮かせて柄を織り出すのが特徴とのことです。
生地に厚みや張りがあり、締めたら緩まないということで、重い刀を腰に差す武士の帯として重用されたといわれています。
770年以上もの歴史をもつ博多織。伝承されてきた絹糸の素晴らしさを次の世代へ繋いでいかなければと大野さん。
「伝統は、解りやすく言うと、ものまね。技術も形もね。それだけだと時代にそぐわなくなっていく。いつかは消えてしまう。今伝統と言われている技術も初代は、発明している。伝統はしっかりと継承し、伝え、尚且つ、それを基に創造性を高め、時代にあった新しい作品をつくりだしていかないと途絶えてしまう。」熱く語ってくださいました。
ここで大野さんがさまざまな技法を生み出し、日本だけでなく、世界に発信している作品を少しご紹介させていただきます。
【伝統】 大相撲の化粧まわしの生地
1万5千本、約3.5㎏にもなる絹糸を織機に掛け、幅68㎝、長さ約7mに手作業で織り上げます。
※こちらは、先輩が手書きで書いてくれたノート。
現代のニーズに合わせて、化粧まわし生地制作の糸を活用し、クッションやバック、お財布などの加工品もデザインされています。
カラフルな色の糸、優しい色の糸などで織られたバックは、しっかりとした生地でとても丈夫で可愛い色合いに仕上がり、女性にも人気です。
【進化:その1】織絵(糸のアート)
織機で経糸と緯糸を直角に織り込む従来の方法を変化させてつくった作品は、タペストリーや額装として空間を豊かにしてくれます。
経糸に遊びを加えたマフラーも素敵
【進化:その2】ランダム布
ランダム布とは、経糸横糸という織の規則性を無くし、糸をランダム(不規則)に重ねて制作した100%絹糸の不織布だそうです。
化粧まわしをつくるのに、糸を余分に用意するので、その残った糸を綺麗に切って、糊でとめてつくる技法とのこと。
こんな素敵なストールに
そしてカーテンや間仕切りとしても
Active Resorts 福岡八幡のロビーに飾ってあった作品は、鱒渕ダムから川。そして、その川にすんでいる魚が空に昇るイメージでつくったそうです。
そして制作中の作品を見せていただきました。
作品名は、「銀河」。写真は一部分で、実際には、かなり大きな作品です。
唯一無二の作品の数々とお話しに魅了されたひとときでした。
取材協力・・・・
染織工房シルクトーン(ギャラリー道原)
〒803-0266 福岡県北九州市小倉南区大字道原74-1
※ご紹介文は、個人の感想です。※写真はイメージです。写真は、下村様に撮影していただきました。
※掲載の内容は、2021年9月30日現在の内容です。
文・・・もちづき ひろこ
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