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マジックの手順 ~難しく考えてはいないので、千変万化です~

今は、レギュラーの現場位しか出ていないので
演じるトリックは、ある程度シナリオが決まっています。

ただ、基本的にあまりはっきりとした手順は決まっておらず
その場の空気感から、次に何を行うか考えつつ
トリックを進めていきます。

なので
「新しい手順を作りたい!」
みたいな事を言っている方を見ると、まじめだなあ(笑)
なんて思う事も。

僕自身、昔はかなりきっちりと手順を考え
それを演じていました。
でも、ある時から「ジャズ」な演技にあこがれるようになったのです。

確か、僕がまだ学生の時に
現在はテンヨーで活躍してる(某舞浜の所で)
和田さんが(世界3位の方ね)とある方を学祭に連れてきてくれました。

ご職業はバンカー(銀行員)なのですが、イギリスの方で
マジックサークルにも所属し、ガイとも仲がいい方らしく。
学生の僕はもちろんそんな方が演じるものに興味があり
少しだけ演じてくれたのです。

今となってはどんなものか覚えていないのですが
当意即妙に演じていった、いわゆるジャズな演技だったことだけ
印象に残っています。

その位のころから、だんだんとジャズな演技にあこがれていきました。
もちろん、ある程度の流れがあるうえで、いくらでも
アドリブを入れていけるようなものを手にしたいと。

30代も後半になり、ようやくアドリブの土台になるトリックを
ある程度の分量、頭と体に貯めこめたようで
明確な手順の「型」が薄くなっていった感じです。

今の僕の中には、各トリックが
「要素」
として存在してる感じで。

化学的に言えば、いろんな側鎖があるような感じ。

炭素の主鎖があり、適宜エステル化したり、ニトロ化したり
みたいな作業が入るので、その方が味わうものは
常に1回こっきりのトリックを見ることになるわけです。

「常連さんに何を見せるの?」
みたいなことを聞かれることもありますが
僕の答えは「いつもの」なんですね。

でも、その「いつもの」は、実は1回こっきりの物であり
2度と同じ「もの」は提供できません。
「同一」ではなくでも、「同質」のものを提供する自信はありますので
まあ、お金を頂いて演じていけていると思っております。

さてさて、そんなこんなで
今僕の体に染みついているトリックは1個1個が非常に小さな
要素で出来上がっていて、それらを適宜組み合わせ
大きなサイズにしていく位。

特にカードの手順は決まっておらず、その日の気分で
ポケットの中に入れておくものが変わります。

新しい「手順」を考えたり、作り上げるという事はほぼなく
新しい「要素」を手に入れる感じ。
だから、常に手順は変化し、それらは組み合わせられ
できるだけベターなものを探っていくわけです。

自身の創造性を発揮させて、1から作るような大変な事をするのではなく
既存の要素を組み合わせ、その結果として新しいものや効果的なものを
作り出せれば、と思っております。

負担のかかるような、大きなトリックを覚えたり
または作り出すのも、もちろん経験としては面白いのですが
そういった物が、自分の演じる場で出来るのか?
という冷静な判断も必要になるわけです。

レストランマジシャンを自称する僕としては
どんなタイミングでも、サッとテーブルから抜け
そしてどこで終わっても、きちんとオチるような要素を
組み合わせておくことが、サバイバルの手法になるわけです。

自分がしたい事ではなく、現場最適を意識しておくことになります。

むしろ、現象や手法はストレートで、演技が面白いものになっている方が
恐らくは時間のコントロールもできますし、相手に与える
インパクトも強いと思います。

ま、大きなトリックは
ショースタイルで自分の持ち時間がしっかりしている時に
とっておけばいいんですから。

千変万化に、水が流れるように
その動きを変化させ、相手に合わせていく。
そんな事を意識できると、日々の演技の中で
手順を作り出していくこともできると思いますよ。

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