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高瀬隼子著「おいしいごはんが食べられますように」を読んで

だまされた!
心がざわつくざわつく。
もっとあったかい話やおもてた!
だって平積みの隣「宙ごはん」やったもん。

「僕らのごはんは明日で待ってる」とか「ランチ酒」とか。
美味しそうなごはん出てきて食欲そそられる、はいはい流行ってるやつねーと思いきや。

これやったら隣に「コンビニ人間」置いとってー!

第167回芥川賞受賞!
「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。
職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。
ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。


心の奥底

人が心の奥底で感じてることが言葉にされてて面白い。
「」付きのセリフの次の行には、真逆の心理が書いてある。

人に説明するのがめんどくさいような感情も。
倫理的によくなさそうで、人に言うのは憚られるような解釈も。
話を合わせておくか、考えを言葉にするかの逡巡も。

深層心理で考えたり感じたりしてることが節々に出てきてゆるく共感。

この人は追い抜ける、時間もかからず、すぐに、簡単に。そう感じた人を孫権するのは難しい。尊敬がちょっとでもないと、好きで一緒にいようと決めた人たちではない職場の人間に、単純な行為は持ち続けられはしない。

本文より

ぴったり「そうそう!それそれ!」って感じでもないんやけど。なんかわかる。

食べたくない手作りケーキを、できるだけ自然に断る方法考えてるとこ。
大好き。笑
めっちゃわかる。


二谷さん×押尾さん

顕著なのがたびたび出てくる2人でこっそり飲んでるシーン。
このシーンが大好き。
2人とも本音をちょこちょこ引きずり出されてる感じが良い!
こんな飲み、したい。

ほんとは文学部に行きたかったんだけど、男で文学部なんて就職できないなんて言われて、まあそうなんだろうなと思って、本を読むのは好きだったけど研究したいかって言われたら分かんなかったから、経済学部に入った。別に経済の研究がしたいわけでもなかったけど、しなくても卒業できたし

わたし別にチアが好きなわけじゃなくて、真面目で、できちゃったからしてただけなんですよね。

うまいね。こう、こっちにぐっと罪悪感を抱かせる感じの話し方

ほんでそんだけ喋って全部嘘なんかい!
みたいなのも含めて、良い。

すらすらと言葉を吐いたけど、それはほとんどが嘘だった

最高すぎる。


食のスタンス

食のスタンスも人それぞれですよね。
「食べる」ことにそんなに興味がない二谷さん。

自分の時間や行動が食べ物に支配されてる感じがして嫌。コンビニにあるならそれで済ませたい。

ごはん面倒くさいって言うと、なんか幼稚だと思われるような気がしない?


ここまで極端でもないけど、わかるとこもある。

僕の嫌いな食べ物はカニ。
別に味は好きでも嫌いでもない。無。
ただ、カニを殻から外したりほじったりする作業が大嫌い。
あんなんするくらいなら食べたくない。
例え人がしてくれたとしても、
「ああやってほじくりだされた身か…」と想像すると食欲なくなる。
カニとカニカマを選べるなら0:100でカニカマ。

ほんでこの話してもあんまり共感はされない。
「えー?なんで?おいしいのに」って人が多い。

そんな話をすると「アレルギー?」とも聞かれる。
説明してもわかんないだろうなーって人には、もう甲殻類アレルギーってことにしてる。
大嘘。

それの周辺も含めて嫌い

あぁ。二谷さん。超わかるー。


職場×食


お昼に外食に出たがる上司。
職場に頻繁に手作りお菓子を持ってくる女性。
職場と食にまつわる話も、いろいろ考えさせられます。

サラリーマン時代は、付き合いで食べなきゃいけないシーンも多くて大変だったなー。
食細いキャラつくってた。笑

消防では署員みんなで同じ晩ごはんつくって食べてて、それも諸説ある。

飯作ってるその時間で訓練できるやんっ話だったり、光熱費だって税金やんって話だったり。

災害時のレジリエンスに繋がるとか、署員みんなの一体感とか。

献立決める若手が揚げ物とか肉料理しかせんくておじさん達文句言うとか。
ボディメイク出る職員は…?
高脂血性指摘されてる職員は…?とか。

総じてめんどくさい!

消防に入った時は良い文化だと思ってたけど、みんなそれぞれ好きにしたらいいんちゃう?と思い始めてきた。

あとは、お土産不要論、差入不要論。
職場と食の話。
結構深いなー。笑


おもろいおもろい。
執筆のベースは、嫌なことを書き連ねた違和感ノートにあったんだとか。


癖になる作品。
高瀬隼子さん、また読みたいなー。

以上

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