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寺地はるな「水を縫う」を読んで

【第9回河合隼雄物語賞受賞作品】
松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。
学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、かわいいものや華やかな場が苦手な姉のため、ウェディングドレスを手作りすると宣言するが――「みなも」
いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。そんな時、母が教えてくれた、子育てに大切な「失敗する権利」とは――「愛の泉」ほか全六章。
世の中の〈普通〉を踏み越えていく、清々しい家族小説。

Amazon内容紹介

やっぱ寺地はるなさん、ええなー。
大切なことに気づかされる。
自分の狭量さを突き付けられ、心揺さぶられる。
それでも、どこか温かくて救われる思いです。
「大人は泣かないと思っていた」
「川のほとりに立つ者は」
に続いて読了3作目。


水泳を始めるか悩む祖母に清澄がかけた言葉。

でも、今からはじめたら、八十歳の時には水泳歴六年になるやん。なにもせんかったら、ゼロ年のままやけど

本文より

刺さりました。ほんとそのとおり。

物事を始めるのには遅いなんてことはない。
続けさえすれば、積み重ねることができる時間はまだまだたくさんある。

せやんな。まだまだ人生長い。
これからこれから!


あとはこんな台詞も印象に残りました。

なにをもって良い人生とするかは人によってさまさまだろうが、俺にとってのそれは所有する財産などではなく、情熱の有無によって決まる。追い求めるものがある人間は日々虚しさを抱えることがない。葛藤や焦燥はあれど。

本文より

黒田さん。ええ人。

自分と違うやりかたを選ぶ人を否定するような生きかたを、僕はしない。したくない。

本文より

よな。俺もそう思う。
否定してしまわんように、気を付けよう。


作中の関西弁が心地いい。

舞台は大阪府寝屋川市。

友達何人か住んでて遊びに行ったことあるけど、これまた雰囲気いい街。
香里園で食った焼肉うまかったなー。
あと僕の地元と同じく中学校がナンバースクール。
あれいいよね。「なん中?」って聞くかんじ。
「どこ中?」じゃなくて「なん中?」。
清澄よろしくなんかガツガツしてないイメージあります、寝屋川。

2009年。
僕がまだ高校生だった頃。
海外に修学旅行かなんかにいっていた寝屋川市の高校生と教員が、新型インフルエンザの国内初の感染者になったニュースがありました。
当時、帰国の様子や帰国後の滞在先の映像がメディアで散々取り上げられた。

http://www.asahi.com/special/09015/TKY200905090003.html

人生で初めて、同い年の一般人が大々的に世間の注目を浴びてる。
ちょっと怖い。インフル自体もやし、マスコミに張られてる感じも。
でも隔離で学校休んだりできんのはええなー。
羨望や同情もあり、当時は報道をみて複雑な気持ちでした。

これが自分だった可能性だって全然ある。
だって同い年やし。
一方で、海外の研修なんて自分にとってはテーブルにも上がらない話で。
そう考えると自分だった可能性は全くない。

でももしこの寝屋川市ってとこに生まれてたらありえたのかもしれない。

自分が暮らすのとは別の街に、全然違う環境で生活をしてる同い年がたくさんいる。

当然の事だけど、それを痛烈に実感するニュースでした。

また、自分も次の年には進学でどんな街に暮してるかもわからない状況。
もしかしたらニュースになってる高校生と一緒の大学に行ったりなんてこともあるのかも。

自分の世界の広がりがもうすぐそこに迫ってる高揚感にも胸が躍りました。

人生でも有数の印象に残ったニュース。
そこで初めて知ってずっと頭に隅にいました、寝屋川市。

またいってみたいなー。


めっちゃ脱線したけど、すばらしい本でした!

流れる水は、けっして淀まない。

以上


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