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ニホンミツバチの7つの秘密

「みつばちたちの秘密」と題したワークショップが、10月21日にいとう・住もうPT(移住促進官民プロジェクトチーム)主催で開かれました。その際に同PTの座長で、伊豆高原みつばち倶楽部の山本文夫氏が話された「ニホンミツバチの7つの秘密」の内容を以下に掲載します。
  
山本文夫

秘密1.働きバチのいのちは約40日、生まれてすぐには幼虫の世話や、巣作り、貯蜜などの内勤の仕事をして、寿命が短くなると外に出て蜜や花粉を集める仕事に変わります。外勤は外敵に出会って死ぬ確率が高い、それは余命が短い年寄りの仕事というわけです。これが人間社会と違う秘密の第1です。

秘密2.みつばちはお腹の段々から蜜ろうをプリっと出して、それをこねて六角形の巣房を造ります。他の蜂は木や草の繊維で巣をつくっています。みつばちはお腹から脂肪を出して巣材を自己調達している、これが秘密の第2です。

秘密3 働きバチが蜜を集めて帰ってくると巣の中で待機していた蜂が、帰ってきた蜂の蜜を飲み込み、酵素を加えて巣房に保存し、風を送って乾燥させ、糖度が80%近くになると蓋をして保存します。抗菌力、免疫力を自前で調達する、これが人が真似できない秘密の第3です。

秘密4 黄色スズメバチが襲ってくるとニホンミツバチは集団で取り囲み、体温で温度を上げてスズメバチを殺してしまいます。もちろんみつばちの何匹かはかみ殺されます。この犠牲の精神が秘密の第4です。

秘密5.春に女王が生まれると母親女王が生まれたばかりの娘女王に巣を譲り、新しいを巣をつくりに数千の働きバチと一緒に外に出ていきます。これが人間社会と違う秘密の第5です。

秘密6.働きバチはみなメスです。オスは新女王が生まれる直前に生まれ、女王が天空に飛び立つとオスバチたちも飛び立ちます。他の巣から飛び立ったオスバチたちと戦いながら空中で女王と交尾をします。これが終わるとオスバチは何もせずに死んでいきます。孤独な生涯のオスバチ、これが秘密の第6です。

秘密7.その時に新しいハチの群れはいったん近くの大きな木の枝に集結して、新居を探すために探索バチを多方面に放します。探索バチは次々と帰ってきて候補地を報告します。これを聞いて女王が決定すると思っていたら大違いでした。1万匹の蜂たちが、協議に協議を重ねて、全員の90%の蜂が合意すると新居に一気に移動します。これ以上の民主主義があるでしょうか。これをSwarm Intelligence(群れの行動原理知能)と言うそうです。これが人間社会と違う、ニホンミツバチの秘密の第7です。

   ニホンミツバチの社会は自己犠牲と自己調達で成り立っています。自らの力で必要なものを作り出し、人に有用なものを提供してくれます。めったに人を攻撃しません。暑い夏には巣箱の入り口に横に並んで内部に送風する、巣箱の中をいつもきれいに掃除する、集めた蜜に送風するなど懸命に生きていく。その勤勉、けなげな可愛さ、その魅力は他にたとえようがありません。
 ナポレオンは彼が座る玉座やガウン、ベッドカバーなどにたくさんのミツバチのマークをデザインしていました。ミツバチ社会の「規律と繁栄」を標榜していたのでしょう。
     ところで昆虫には感情がないといわれます。喜びも悲しみも、怒りも恐れもありません。ミツバチ達はただひたすら本能の求めるところに従って無感情で仕事をつづけます。
   そこが人と違います。それゆえ人は「心の貧しいもの、悲しむものは幸いだ」として慰めをうける必要があるのです。
   神がアブラハムに約束された地は「乳と蜜が流れる地」でした。そこは動物や植物が繁栄し、それゆえ人に幸福をもたらすところです。いま世界的に森林開発、温暖化、殺虫剤や除草剤の乱用でミツバチが減少しています。ミツバチがいなくなるということは地球生物に危機が来るということでしょう。
    昼にミツバチとアサギマダラと戯れ、夕に沖のイカ釣りの灯火と中空の三日月を湯船から眺める、これ以上の幸いがあるでしょうか。

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