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インバウンドの本格的な回復はいつ頃に?世界の状況から、訪日旅行客の増加を国ごとに予測

コロナからの本格的な回復がようやく見えてきた今、観光業界や旅館ホテルにおいて最も気になるのが、インバウンドが2019年水準に戻るのがいつ頃になるのか、という点ではないでしょうか。

そこで今回は、日本に興味のある外国人に向けたメディアとして日本最大級の規模を誇る「tsunagu Japan」を運営する株式会社D2CX代表取締役の中西恭大さんに、インバウンドのスペシャリストの立場から世界各国の状況と今後のインバウンド回復予測についてお話をお聞きしました。

★この記事のポイント★
これからの3年間にインバウンド客は拡大に向かい、コロナ以前の水準に戻るのは2025年と予測。



1.インバウンド復活への予測シナリオは?

日本のインバウンドの規模が最大となったのは2019年のことですが、観光業界の皆さんにとっては、長く続いたコロナの影響から脱していつ2019年の水準に回復するのかがいちばん気になることでしょう。

それを結論づけることは誰にもできないのですが、世界の観光状況の変化やデータに基づいて短期スパンでの予測を立てることは可能です。

多くの有識者や観光関連企業、またANAやJALなどの国内航空会社の分析によれば、総じて今後3年をかけて段階的に回復に向かい、以前の水準に戻るのは2025年前後になると予測されています。

この回復時期については国でも同様の見解で、2030年までのビジョンとして策定されている観光立国の基本計画を、2025年をターゲットとして一部改定する動きもすでに出ています。


2.この3年で訪日客はどのくらい戻ってくるのか?

菅政権時代のブレーンであり、新・観光立国論などを執筆されているデービッド・アトキンソン氏が今後3年間の訪日客の増加予測をしています。

これによると訪日客数は2023年が667万人、2024年は1,983万人、2025年には2,900万人に上るとされています。

デービッド・アトキンソン氏のこの予測の根拠は不明ですが、おそらくヨーロッパやアメリカ、タイなど、すでに開国している国々の回復状況や、これまでに最も来日客数の多かった中国の国内状況などを分析した結果であろうと推測することができます。


3.訪日客の増加については、円安の影響は限定的

現在の日本の円安状況を見て、「もっと急速に回復するのではないか?」と感じる方もいるかと思いますが、結論から言いますと、過去の例からも為替の影響によって訪問者数そのものが増加するという事実はありません。

つまり、円安そのものは「円安だから日本に行こう」という動機づけにはならないということです。しかしその一方で、ひとたび来日した海外旅行者の消費の拡大については、円安はとても大きな影響をもたらします。

たとえば仮に日本への旅行予算として2,000ドルを用意している米国人の場合、1ドル:100円の時期であれば日本で消費できる金額は20万円ですが、それが1ドル:150円となればそれが30万円と、観光で使えるお金が10万円も増加することとなります。

旅行者は自国の通貨によって旅行の予算立てをしていますから、円安になればなるほど同じ予算内で多くの買い物や消費ができることになり、日本国内の観光業界にとっては円安が「売上の拡大」という面で大きなメリットを生み出すわけです。


4.今後、訪日客の増加が期待できる国は?

では直近で、どこの国が訪日への期待が高いのか?これにも様々な要因が絡むため、正確な予測が難しいですが、観光庁が毎週金曜に公開している「入国者健康確認システム(ERFS)」の登録状況における各月・各週の外国人観光客の新規入国希望者数を見ると、日本への旅行を希望している方が多い国は、現在のところトップから韓国・アメリカ・タイ・オーストラリア・マレーシアの順となっています。

▲今後の外国人観光客新規入国希望者数の推移(出典:ERFS)

これは先ごろ規制緩和が発表される以前の情報によるランキングであり、個人旅行ではなく旅行社のパッケージツアーのみ、またビザの取得も必須というかなりハードルが高かった時点においても、これらの国々では高い来日希望を示していたことから、旅行の自由度が担保されると同時にこの5カ国を中心に数多くの来日客が訪れるだろうことが予測できます。

中でも韓国ではコロナ前に悪化していた日韓関係がまるで嘘だったかのように、来日モチベーションが急速に増大しており、FITが解禁された暁には最も入国者数の拡大が期待される国のひとつに挙げられます。

またこれから冬に向かう日本の観光マーケットにおいて期待できるのが、タイ・オーストラリア・マレーシアです。これらの国々も今後の入国規制の大幅な緩和によって、多くの旅行者の訪日が期待できるでしょう。

さらに、これまで日本のように厳格な水際対策を実施していた台湾や香港でも徐々に規制を緩和していくことが発表され、すでに日本旅行関係の市場の動きが急激に活発化しています。

こうした需要ベースの動きに合わせるかのように、韓国や香港、台湾などでは日本への航空便を増便する動きも具体化してきています。来日モチベーションの高まりを背景に、多くの便の運航によって日本への渡航手段が整備されれば、今後の訪日観光客の増加は間違いないと言えるでしょう。

5.気になる中国人旅行者の回復は?

2019年の訪日外国人観光客数3,188万人のうち、約7割の2,235万人を占めるのが東アジアで、中でも中国は全体の約3割である959万人を数えました。インバウンドにおいて最も大きなウェイトを占めている中国人観光客の動きは、観光業界にとっても特に気になるポイントでしょう。

▲2019年国籍別の訪日外国人観光客数(出典:JNTO)

しかし中国では現在も都市のロックダウンを含めたゼロコロナ政策が実施されており、こうした厳格な規制が今後もしばらくは継続すると考えると中国人観光客の動きは他国に比べて遅くなり、2023年時点ではまだ回復には至らないであろうと予測できます。

ただし中国の動きは現状不明瞭と言わざるを得ないのも事実で、ひとたび国内状況に大きな動きがあれば、事前の予測を覆して一気に来日客が増大するという可能性も秘めていますので、中国については今後も引き続き情報を注視していく必要があるでしょう。

<直近の訪日客増大が見込まれる候補国>
第一候補 :韓国
第二候補 :タイ・シンガポール・ベトナム・マレーシア・香港
第三候補 :アメリカ・オーストラリア・ヨーロッパ主要国
第四候補 :台湾

※中国は完全に未知数。政策の変動など状況の変化によっては急激な来日客の拡大も視野に。

▶今回参考にさせていただいた中西恭大さんのnoteはこちら
▶株式会社D2C X
▶tsunagu Japan 

※2022/10/20公開の記事を転載しています


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