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逃税したいなら合法的に。

年金事務所から差し押さえ。

 先日、車中泊で全国を旅する某人気漫画家が、20年近く年金を滞納していたのを放置したことで突如、預金通帳にサシオサエの表記とともに2,130万円が差し引かれていたことを、SNS上で呟いていたことが話題となった。

 年金問題や政府への不信感から、年金保険料など払いたくないと言う気持ちで20年間延滞していたのだが、人気漫画家と言うこともあり、高所得者と判断され、銀行預金の残高が差し押さえられた格好である。

 政府はこれまで、疫病による景気悪化を鑑みて、差し押さえを控えていたが、今年度から所得が700万円以上で、7ヶ月以上の滞納をしているものに対して、差し押さえを行う方針になっているらしい。

 脱税も同様だが、行政機関を敵に回すと、額が大きければ大きいほど手痛いしっぺ返しを食らう羽目になるのはお約束であるから、払いたくないの一心で冒険するリスクに見合ったリターンとは、個人的には到底思えない。

 「となりの億万長者」の中に、あまり有名ではないがこんな一文がある。

”尊敬を集め、誠実に、正直に生きる。そして何かをやり遂げたと言う自信を持てたら、黙っていてもお金持ちになれるさ。
お金はおまけのようなもの。人を騙したり、盗む事は無い。法律に背くことをしたり税金をごまかしたりする必要は無い。
正直に稼ぐほうがずっと簡単だ。いつも人を騙していたら商売が続かない。人生は長丁場なんだ。”

となりの億万長者|トマス・J・スタンリー,
ウィリアム・D・ダンコ,
斎藤 聖美(訳)

 年金保険料を納めても生活できる所得があるのなら、素直に納めるべきだし、仮に納めたら生活に困窮するほどの所得であれば、役場の窓口で相談すると免除や減額の措置が受けられるかも知れない。国もお金がない人から保険料をむしり取るほど悪魔ではない。

 人生は長期戦で、一度嘘をつくと、その設定を覚えて、嘘に嘘を重ねなければ、どこかで矛盾してしまうため、正直に生きるよりも、脳のリソースを余計に割かなければならない。それなら、最初から正直者で馬鹿を見るほうがよっぽどマシではないだろうか。

払いたくないなら理論武装は必須。

 とは言え厚生年金が国民年金への穴埋めに流用されたり、当初は積立方式で開始した制度にも関わらず、厚労省の連中が私利私欲に溺れ、私服を肥やすために、膨大な積立資金を利権や天下り先となる箱物に使いまくった成れの果てが、財源の枯渇へとつながり、現在の賦課方式に変更せざるを得なくなっているのは、厚生年金保険制度回顧録を見ても明らかである。

 政府に対する不信感がないと言えば嘘になるし、私も気持ちとしては、出来ることなら払いたくない。

 では、税金や社会保険料を合法的に支払わずにやり過ごす方法が全くないかと言えば、そんなこともない。所得税の103万円は有名だが、住民税はそれより5万円少ない98万円で、基礎控除と給与所得控除で課税所得が相殺されると、住民税非課税世帯となる。給与所得控除がない場合は55万円少ない。

 社会保障を見てみると、年金の全額免除が適用される所得は67万円以下、健康保険が7割軽減の措置が図られる所得が43万円以下となっている。そのため、税制上の低所得者に該当する条件さえ整えれば、役場に申請することで健康保険の3割を除いて、合法的に支払いを逃れることができるのである。

 確かに理論上は所得43万円以下に抑えれば、税金も年金も全額免除、健康保険料は7割免除で年間2万円ちょっとまで圧縮しても、公共サービスの便益は、通常の納付者と同等の処遇なのだから、やってみる価値はありそうだ。将来、年金で老齢給付の受取額が国庫負担分の半額になろうとも、いざとなったら生活保護を受けるつもりで、知ったこっちゃないと開き直れば、何も問題ないように思える素晴らしいプランである。

国保を3割だけ払い、便益はフルで享受。

 ただし、所得43万円以下でどうやって暮らすのかというのが一番の問題であることは間違いない。月に3.5万円程度の収入で生計を立てるのは常識的に考えるとかなり厳しいのは明白である。

 都内で月6万円生活を地で行く流石の私も、これ以上削る余地はないどころか、昨今のコストプッシュ型のインフレで生活コストが膨れ上がる可能性があるから、やはり無理ゲーではないかと思うが、家賃3万円を限りなくゼロに近づければ不可能ではない。

 都会暮らしは捨てる他ないが、職場の関係で仕方なく都内に居住している身としては、早期リタイアと共に住む場所に縛られる必要がなくなるため、地方部の空き家をタダで貰うか、ほぼ土地代の300万円程度の中古住宅を現金一括で購入すれば、固定資産税だけ支払う形となり、月あたり3.5万円程度の所得が確保できれば、理論上は収支均衡する。

 もうひとつの案としては、支出の削減が限界なら、収入を工夫すれば良いのである。所得は43万円以下に抑える必要があるが、金融資産所得を分離課税やNISA口座を活用することで、個人の所得として計上されることなく所得が得られる。

 また、株主優待制度を活用することで、所得に形状されない形で物を受け取れるため、実質的に生活費用を削減することもできる。厳密には20万円相当を超える場合、雑所得として申告しなければならないが、税務署が正確な優待の評価額を把握できない上、証明するのも困難を極めることや、ましてや低所得者を地で行く場合、税務調査が入ることは現実的ではない。

 そもそも論、優待名人の桐谷さんは、少なく見積もっても推定100万円以上の優待を受け取っているにも関わらず、雑所得として申告していないが、税務調査の対象となっていないのだから、株主優待がグレーゾーンなのは明白で、厳格化すれば桐谷さんが真っ先に標的となる筈だから、心配するのはその後で良い。

 こうして、分離課税や非課税制度を上手く利用することで、年金に相当する額の金融資産所得があっても、税制上の所得は43万円以内に収められるため、表面上は低所得者を装いつつ、実態としては金融資産で働かなくても食う分には困らない、高等遊民が完成するのである。

 私はこれを試したいがために、来春に早期リタイアに踏み切り、専業投資家として必要最低限の健康保険料と、株式の分離課税のみ税金を納め、公共施設や公的補償の便益を最大限享受する、コスパの良い生き方を実践する所存である。


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