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美人投票では自分の軸が現れない。

ケインズの美人投票。

 金融の世界では有名な言葉であるが、投資家の行動パターンが、みんなが美人だと思う人を投票して、それを当てた際に景品が貰える状況と似ているところから来ている。

 景品というインセンティブが発生する場合、人は本気で当てに行こうとするものである。そうなると、自分が美人だと思う人に投票するよりも、誰もが美人だと思う人に投票する方が勝率が上がると考え、勝つために本心とは異なる行動を取ってしまうのが人間の心理である。

 投資でも実利と言うインセンティブが発生するため、割安で放置されていつ上がるかも分からない高配当銘柄よりも、今をときめく人気絶頂銘柄に身銭を投じて相応なキャピタルゲインを狙う方が確かに効率は良いのかも知れない。しかし、それでは自分の投資感が形成されないのではないだろうか。

 異次元金融緩和による金余りで相場に資金が流入し、決して楽観的とは言えない世界情勢であるにも関わらず、金融市場が悪くないどころか、情勢を考えれば好調と言っても良い位である。

 現時点では流行りのグロース株に乗っかった方が利益が得られて良いのかも知れないが、その流行はトレンドが転換して永遠に続くことはないだろうし、リーマンショックの時みたく、5年スパンで市場が低迷することがないとは言い切れない。

 そんな市場が低迷している時は流行りもクソもなく、株式市場全体がオワコンな空気が漂うものであり、相場が悪い時にも自分が買った銘柄を根気よく保有し続けるだけの信念が、美人投票のパターンで選定した銘柄で貫けるだろうか。私なら自分の軸で選定していない以上、難しいのではないかと思ってしまう。

バフェットさんの名言に学ぶ。

 投資の神様であるバフェットおじさんも、「たとえ証券取引所が10年閉鎖されることがあっても喜んで持ち続けたい銘柄だけを買え」と発言している。

 今をときめくのはGAFAやテスラだが、10年前の2012年の世界時価総額ランキングでトップ10入りを果たしているのはGoogleとAppleだけである。当時はチャイナショック前ということもあり、3〜5位にペトロチャイナ、中国工商銀行、チャイナモバイルがランクインしている他、エクソンモービルやウォルマート、マイクロソフトがGoogleに肉薄していたが、現在はご存知の通りの状況である。

 美人投票で流行に乗っかるのなら、当時の中国株はどれを買っても高確率で上昇する時代であったが、同じことが10年後の今でも通用するだろうか。要するにGAFAが10年後も資本主義経済を牛耳っているかは分からないのだから、流行りではなく自分なりの投資感を持って応援したい企業や、生涯保有したいと思える銘柄を選定し、己を信じて保有する気持ちが弱気相場を乗り切る最善の心構えだと考える。

 周りの意見を鵜呑みにしていれば、いつか市場の波に揺さぶられ、焦って銘柄をガチャガチャ組み替えて手数料負けするだけでなく、一定数は波に飲み込まれて退場してしまう。だからこそ自分に合った心地良い投資法を20代や30代のうちに模索して、ブレない投資感を持っている人を見ると個人投資家として魅力を感じずにはいられない。

私の投資感。

 私は2022年にグロース株からバリュー株にトレンドが転換する前からのバリュー株派であり、トレンドが転換した時の時価総額増加はなんとも表現し難い高揚感であった。

 米国株ではキャピタルゲインの税率が10%で、インカムゲインは20%と、税制上キャピタル狙いで売買した方が有利だが、日本株の場合はインカムだろうがキャピタルだろうが一律で20.315%課税される。

 しかし、所得が330万円以下で所得税率が10%以下の社会的弱者の位置付けとなる場合、確定申告で配当控除が利用できるため、税制上インカム狙いで保有した方が有利となり米国と逆転する。また日本独自の株主優待制度は少額投資家ほど割の良い内容となっているでなく、事実上の非課税である点も優れている。

 厳密には税法上雑所得として区分されるため、総額が20万円を超える場合に申告が必要になってくるが、個々の優待を金額換算するのは現実的でないし、そもそも企業からモノを頂いてそれを消化した場合は貨幣経済を介していないため、所得を証明するのは難易度が高く、国税がそれ単体で摘発するよりも先に狙いうちすべき高所得者がゴロゴロ居るだろうから、優待の総額が20万円を超えたところで放置されているのが実情である。

 優待名人として知られる桐谷さんがTwitterで「株主優待には税金がかかりません。」と言い切ったことからも、雑所得として申告していなくとも国税からお尋ねが来ていないものと思われる。月曜から夜ふかしの初登場時に600社1億円分の銘柄を保有していると紹介されていることから、平均で2%の優待利回りと仮定しても200万円相当の優待を受け取っており、明らかに20万円以上の経済的利益を受けている。そんな人ですら摘発されないのだから少額で喜んでいる我々が心配する必要はない。どう考えても真っ先に桐谷さんが脱税で摘発されるだろうから、心配するのはその後で良い。

 何でもかんでも米国の真似をするのではなく、税制や投資環境を鑑みて、無駄にお金を取られない手法として高配当株は相性が良く、配当利回りが市場平均よりも高い銘柄を主軸にポートフォリオを構成している。

 それでも利回りが高い銘柄と言うのは、往々にして割安のまま放置されている相応な理由がある。それを自分なりに突き詰めて、それが許容できるリスクだと判断すれば、リスクを取って市場平均よりも高いインカムとスパイス的な位置付けの優待を貰い続ける長期保有が最適となる。

 それでも、相場の波で一時的に株価が釣り上がった時は売り、より配当が貰えるであろう大型株にポジションを変えたり、一時的な下落であれば配当金再投資でナンピン買いにより鼠算式にインカムを増やす二段構えによって、相場に波があっても退場することなく実利を得ている。これらは自分がこだわって選定した銘柄を、信念を持って保有する胆力があるから成せる技であり、美人投票の行動パターンで売買しているうちは同じ動きができないだろう。

 もちろん価値観は人それぞれで、私の手法に異議がある人も居ることだろう。だからこそ自分の投資に対する価値観を明確にして、試行錯誤を重ねて心地良い投資手法を確立することが重要ではないだろうか。一見すると奇異な投資スタイルで実利を上げている投資家が増えたら、実際にお会いして刺激を受けるような日を願い、私は今日も書き込み続ける。


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