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備えあれば憂いなし。

副業解禁。ただし、グループ会社に限る。

 私は10月7日のニュースに、JR九州が副業解禁の見出しに驚愕した。JR西日本が9月付けでグループ会社内副業を導入したのは把握していたが、JR他社が追従する形で2ヶ月後に導入する運びになるとは想像もしなかったからである。

 因みに、JR東日本は鉄道事業の社員を4,000人規模で縮小し、退職による自然減と配置転換で物流や不動産に振り分けることを公表しており、副業なども促進すると9月1日の日経新聞に記されているため、西日本や九州と同様のシステムが導入される可能性が無きにしも非ずと言った具合である。

 これは疫病以前の、鉄道事業に従事する社員の基本給が、労働集約型産業の典型とも言えるレベルで安く、生活残業、臨時給与(ボーナス)ありきで生計を立てていたものが、疫病によって経費削減を余儀なくされ、残業も臨時給与もカットされて、金銭面で既に限界な社員もさぞ多いのだろう。

 そうして、余っている鉄道事業の人員を、不足している事業の人員を補う目的で副業を解禁したがために、グループ会社限定で容認していると言った具合だろう。そもそも、一介の民鉄社員である私がJRの内情など知る由もないため、全て推察に過ぎないが、同業他社であることには変わらないため、確度の高い推論である可能性は高い。

 こうして、会社側の思惑を読み解いたところで、「副業などけしからん」、「会社に魂を売る気はない」、などの労組が好きそうな綺麗事を並べられるのは、実質的に金銭的に余裕のある社員だけで、私の感覚だと恐らく全体で見れば極々少数に留まると思われる。

 実態として、組合の偉い人は武士は食わねど高楊枝的な、やせ我慢を強いられるだろうが、若手は四の五の言わずに飛びつく可能性が高い。

雇用主に生殺与奪権は握らせない。

 とはいえ、仮に私が所属する事業者でも、同様の措置が取られることになったところで、私は端た金のためにグループ会社で副業することはないだろう。それは既に金融資産所得で自分ひとりが生きて行ける程度のキャッシュフローを構築して、経済的には独立しているからである。

 経済的に独立するのに義務教育が満了できそうな歳月を要したし、同級生が人生の夏休みであるキャンパスライフを謳歌する中、高卒で就職して奨学金を借りることなく無借金で社会に出て、大卒の同級生が社会に出る頃には、ある程度まとまった元本を運用して、複利の恩恵を受ける側のポジションを築き上げての経済的独立だから、代償は決して小さくない。

 疫病前のインバウンド全盛期の頃は、賃上げや臨時給与の増額があったため、周囲は良い気になって生活レベルを上げる中、ひとりだけ頑なに生活レベルを上げず、お金のかかる趣味のひとつもなければ、職場には弁当や水筒持参で、想定と対策が可能な出費は極力抑えていた。

 周囲から「人並みに生活できるだけの賃金は貰っている」と、倹約ぶりを冷笑するかのような素振りをされたこともあったが、早期に経済的に独立することの方がよっぽど大切だった。コップの水が溢れるほど溜まっていない中で、水を飲んでいる場合ではないのは明白で、見栄や世間体に屈して大量消費社会の波にのまれることは一度としてなかった。

 資産を増やしたいのであれば、収入を増やすか、支出を減らすか、運用利回りを上げるか、3つのうちのどれか若しくは複数を愚直に行わなければ資産は増えない。

 収入は鉄道会社で正規雇用とはいえ、労働集約型で年功序列制であるため、20代で年収400万円が関の山で、スキルの溜まる仕事でもなく、最終学歴も高卒であったため、転職によって年収を大幅に上げることは難しい。とはいえ、新卒の会社が薄給ブラックだったことから、平凡な事業者に鞍替えしただけでも、結構な年収アップを果たせたが、それでも先述の400万円辺りが限界であることに変わりはない。

 収入の増加が見込めないならば、支出の削減と運用利回りでカバーする他ない。noteの処女作でも記したように、基本的には倹約と運用だけでトマス・J・スタンリーさんがお金持ちと定義する、年齢×年収÷10を優に超えるだけの資産を築き、嫌なことがあれば即座にF◯ck you!と吐き捨てて社畜を辞められるカードを手に入れ、晴れて生殺与奪権を雇用主から取り戻したのである。

備えるだけの時間はあった。

 固定資産を全て揃えてからでなければ事業として成立しない鉄道は、疫病を機に莫大な固定費用を賄えるだけの収入を得られず、JR私鉄各社が赤字転落した。そこから、従業員の賃金を含めた固定費のコストカットが始まり、2年半が経過して金銭面が限界な社員が溢れている。

 周囲が残業の取り合いに躍起になっては給料日にため息が漏れる中、相変わらず弁当、水筒持参で質素倹約に努め、一切の残業をせず「人並みに生活できるだけの給料は貰ってますから」と嫌味を残して超特急で退勤している私だが、今やその徹底した倹約ぶりを冷笑する者は居ない。

 前々から日本経済は2020年の東京五輪がピークで、そこから先は徐々に衰退していくシナリオを想定していたが、疫病によって根底が覆されたのは言うまでもない。

 とは言え、2020年以降は日本経済が停滞するバッドシナリオを想定し、それに備えるだけの時間や余裕が十分にあったのは、周囲が倹約ぶりを冷笑していたことからも明白である。景気が上向いている時は、その状態が一生続くと錯覚しがちだが、景気循環の観点でそうはならない。

 鉄道会社なら一生安泰。会社が潰れることはない。身内親族や職場内で散々聞いた話だが、思春期にJALの経営破綻を目の当たりにしたため、そんな幻想は単なる傲りとしか思えず、決して首を縦に振ることはなかった。

 そんな、安定神話に懐疑的でありながら、当時は会計の知識が乏しく、理屈立てて説明ができず、直感でそう思うからの域を出ず、モヤモヤしていた私だったが、このモヤモヤは疫病の赤字転落と、簿記の取得によって解消された。

 別に鉄道会社に限った話ではなく、公務員に置き換えても同様である。夕張市は財政破綻したし、今後、少子高齢化で限界集落化した自治体から順に財政破綻や統廃合が行われる可能性はある。安定は絶対ではない。だからこそ、余裕のある時に独力で、賃金以外のキャッシュフローを構築しておき、有事に備えることが重要なのである。


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