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FRBが物価目標を事実上の3%に…。

4%ルールの前提条件が覆る可能性。

 近頃、米国の急激なインフレにブレーキをかけるための金利上昇によって、世界同時株安や、金利差から円売りが続き、円安傾向が続いている。10月からありとあらゆるものが更に値上げされるなど、スタグフレーションと化して目先の生活が厳しさを増している。

 株安や物価上昇で生活が直撃している最中、FRBは物価安定や雇用拡大の折り合いを付けるためなら、インフレ率3%を下回ったら、それ以降は無理に抑制しない方針を打ち出した。つまり、グローバルスタンダードではインフレ率2%と定めているが、3%になったら市場原理にお任せして、FRB側では手を打たないと捉えられる。

 目標インフレ率が1%上昇したくらいで、と思われるかも知れないが、インフレ率は複利効果があるため、72の法則に当てはめると、これまでは36年で物価が倍になる計算だったものが、24年に短縮されることを意味する。

 成人後に72年生きると過程すれば、インフレ率2%であれば倍々で4倍で済んだものが、3%を容認すると4倍から更に倍の8掛けした物価となる可能性がある。

 失われた30年間、預金一辺倒で過ごしてきたであろう日本人からすれば、資産がインフレによって目減りするため、現金等をインフレ耐性のある株式などの資産に持ち替えなければ、ジリ貧となる可能性が高い。

 そして、既にインフレ耐性のある資産に変えている身としても、インフレ率が1%上昇するということは、運用リターンをこれまでよりも1%引き上げられなければ、想定した運用成績が得られない可能性がある。

 現に、経済的に独立するために参考にされている、退職資産の合理的な取り崩し方法として、トリニティ大学で研究されたトリニティスタディの論文にある4%ルールは、米国株式と債券のインデックスファンドを1:1の割合で、年間支出の25倍運用することで、25年後に96%の確率で資産が残るどころか、中央値のシナリオでは資産が増加していると結論付けられている。

 これは、先述のポートフォリオによって期待されるリターンが長期目線で年率6%、想定インフレ率2%を差し引くことで、実質的に4%で取り崩せば理論上、元本が目減りしないとされているためである。

 しかし、想定されるインフレ率が3%に変わってしまえば、取り崩すのは3%に留めなければ、毎年元本部分を1%ずつ取り崩す形となり、長期での資産生存率に大きな影響が出てしまう。

FIRE後のインフレにどう立ち向かうか?

 金融資産運用で賃金に頼らずに生きる方向にシフトしようとしている私からすれば、由々しき事態である。どうにかしてインフレに立ち向かわなければならない。

 最も有効なのは先述の通り、取り崩し率を3%にまで抑えることであるが、これを実現するためには3%の逆数である33.3倍の生活支出分を、資産形成の目標にしなければならず、容易ではない。

 仮に年間支出額が120万円だとすれば、4%ルールであれば3,000万円で早期リタイアに踏み切れたものが、インフレ率3%に対応するためには、4,000万円必要となってしまう。若年期の時間を労働に費やすことが勿体無いと感じているから、早期リタイアをしようとしているのに、追加で1,000万円必要だと言われたら、気が遠くなりたまったものではない。

 これでも毎月10万円で生活することを前提にした場合の話で、これを大卒初任給の生活レベルである20万円に引き上げれば6,000万円から8,000万円に跳ね上がる。

 現状の生活費用のまま、インフレ率が3%となれば、早期リタイアに必要な資産は想定したよりも多く必要だが、これに抵抗感がある場合、生活レベルを落とし、耐乏生活に慣れる方向で対応するしかない。

 「働きたくない」が早期リタイアの目標であれば、生活拠点を職場中心に考えなくて良いのだから、家賃が安く、自家用車を必要としないで生活が完結する地方都市に移住する形で、生活費用を削減することは十分可能である。

 移住によって年間生活費が25%カット出来れば、4%ルールで想定した目標資産額のまま、3%ルールに対応できる形となる。

 この場合、運用せずに取り崩してたとしても、インフレを無視すれば33年分の生活費用を持っている計算となるのだから、33年で使い切るとしても、年金受給を繰上げした60歳から逆算すれば、27歳でリタイアに踏み切っても逃げ切れる計算となる。

 学歴は別にしても、一般的な会社員の道を選択した場合、27歳時点で3,000万円を用意できる人は収入か、支出か、運用利回りのいずれか、もしくは複数がバグっていなければ到達できないレベルで、入金力の観点で大衆比では間違いなく支出に無駄がない筈である。

 パーキンソンの法則で、「支出の額は収入の額に達するまで膨張する」とあるにも関わらず、収入よりも遥かに少ない支出で暮らせていたのであれば、早期リタイアで金融資産所得のみに減少すれば、心理的には更なる節制が期待できる。

 一方で、元から生活レベルを上げておらず、既に無駄を削ぎ落とし終えている場合、これ以上コストカットをする余地がない可能性も大いにある。この場合、インフレ率の差分である1%相当を自分のビジネスなどで捻出するなど、金融資産所得一本ではなく、多少の労働は必要だがパラレルインカム化で対応するなど、妥協が必要になってくるかも知れない。


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