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もはや指標の意味を成さない日経平均。

日経平均株価、最高値更新も…。

 「Sell in May」の投資格言は有名だが、5月の日経平均株価はバブル崩壊後、初の最高値を5/19に更新して、アノマリー通りに売ってしまった人や、空売りを仕掛けた逆張り投資家には厳しい展開となっているだろう。

 株に詳しくない人からすれば、実体経済はインフレで苦しいのに、株式市場は随分と羽振が良い。投資家憎い程度に思われているのかも知れない。

 しかし一介の個人投資家として、日経平均が上昇したからと言って、日本株市場全体が上昇している訳ではなく、むしろ下げている銘柄が半分近くあるため、株高にも関わらず、全然羽振りが良くはなかったりする。特に中小型株が下げている印象が今回は強い。

 そもそも日経平均株価の指標は、東証プライム(旧:一部)上場企業の約2,000社の中から、日本経済新聞社が取引が活発で流動性が高い225銘柄を選定したものとなっている。

 この中にはいわゆるゾンビ企業も含まれているため、米国株式の指標である、S&P500と比較されてしまうと、成長性の観点で見劣りする傾向は否めない。

 私も税制面や言語の壁から、日本人なら日本株に投資妙味があると考え、アクティブ運用で高配当銘柄や優待銘柄中心に、ポートフォリオを組んでいるのも、パッシブ運用で日経平均を丸々買いたくない心理の現れからである。

 そのため、パッシブ運用で日本株か、米国株かの二者択一を迫られると、後者を選択する程度に、日経平均に連動するインデックスファンドには妙味がなく、代わりの指標として参考にしているのが、JPX日経インデックス400である。

 これは日本証券取引所と、日本経済新聞社が共同で投資家に魅力の高い銘柄を、東京証券取引所に上場している3,400社の中から、400銘柄に絞り込んだ指標で、基本的には東証プライム上場銘柄を指標にしているTOPIXと同一とされているものの、ROEなどが選定基準としてあるため、典型的なゾンビ企業が除かれている点で、個人的には信用に足る指標である。

 とはいえ、肝心のインデックスファンドはマイナー故に、購入手数料も無料(ノーロード)ではなく、信託報酬も0.6%〜と、ひと昔前の割高な水準となっているために、手数料負けの可能性がオルカンやS&P500よりも高く、誰かに紹介しようとすら思わないのが実情である。

NIKKEI225?いいえNIKKEI5です。

 そもそも株に限った話ではないが、日本人は学生の頃から何かと「平均値」を指標にしがちである。

 平均=真ん中のイメージが刷り込まれている弊害だが、真ん中は「中央値」であり、平均の場合、極端に高い数値や、低い数字と言った異常値がデータに組み込まれてしまうと、平準化する際、それに引っ張られてしまい、実態とかけ離れた数値が算出されてしまうデメリットが存在する。

 年収が典型例だろう。国税庁が算出する平均年収が461万円だと民間給与統計調査の概要で明らかにされているのに対して、厚生労働省が発表している、賃金構造基本統計調査では中央値が366万円となっている。(いずれも2021年時点)

 失われた30年で非正規雇用が増加したことで、年収300万円前後がマジョリティとなっている一方で、数にして1割程度の会社役員であったり、高年収エリートが1,000万円超の数値を叩き出すことにより、平均を100万円程度嵩上げしていると捉えると、平均値と中央値で100万円近くもの差が出るのである。

 日経平均株価もこの原理と同様で、225銘柄が対象となっているものの、実に株価の3割がファーストリテイリング、ソフトバンクG、東京エレクトロン、ダイキン工業、ファナックの、たったの5銘柄の株価で支えられている、事実上のNIKKEI5と歪な構造になっている。

 つまり、5月に日経平均が続伸しているのは、この上位5銘柄が上昇している状況に引っ張られている側面があり、日経平均が上昇して恩恵が受けられるのは、この5銘柄中心に投じている人や、パッシブ運用や先物などでマルッと買い立てた人に留まるだろう。

日本株取引の6割は海外投資家。

 そもそも、日本株を売買している人の6割以上が海外投資家と言われていることから、円建てでの日経平均株価が、バブル以来の最高値を更新したことを意識しているのは、4割にも満たない国内投資家の話であり、我々は市場における少数派である事実を、厳正に受け止めなければならない。

 上記を踏まえた上で、米ドル建てでの日経平均株価を見てみると、日本人がイメージする日本株の印象とは、随分違った表情を見せるチャートに映るはずである。

 バブル時の最高値は$273.59で、これは2021年1月21日に$277.76に更新されている。今振り返ると円高水準とも捉えられる状態だったことが寄与しているのだろう。参考までに、この日の円建て終値は28,756円で推移していた。

 それに対して5/19の大引けは$222.95と、$50以上も届いていない。恐らく海外投資家が日本株で意識するとしたら、最高値の$277.76を超えられるか否かだろう。

 株価によって為替レートも変動するため、一概には言えないが、現在の138円前後のまま$277.76まで推移した場合、海外投資家によって日経平均株価は38,330円辺りまで続伸する可能性は想定できる。それを取引で心掛けるだけでも、建て玉をどちらで持つべきかの判断材料として機能し得るかも知れない。


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