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営業秘密の漏えい?営業秘密の3要件や罰則・影響、対策ポイントを解説

「営業秘密ってなんだ?」
「万一、漏洩させたらそんな罰則が待っているの?」

転職者による営業秘密漏えいに関する事件が報道されることが最近増えてきましたよね。
もし、自分が意図せず営業秘密を漏えいさせて、事件に発展したら、目も当てられません。

結論から言うと、営業秘密は法律で保護される情報ですが、営業秘密の正体を正しく理解していれば、法律で罰せられることは回避できます
なぜなら、営業秘密の定義が明確であり、企業が正しく漏えい対策を行えば、従業員が誤って漏洩させる可能性を低減できるからです。

ここでは、営業秘密のあらましとともに、営業秘密漏えいの原因や罰則、漏えい対策のポイントについて、順番にお伝えします。
この記事を読み終わる頃には、意図しない営業秘密の漏えいによる法令違反を犯さないよう、日々の仕事でも注意できるようになります。

1.営業秘密のあらまし

営業秘密は、企業の存続にも影響する、収益に直結する非常に重要な情報を指します。

営業秘密は単なる情報の種別ではなく、法律で保護される情報であり、保護されるために満たさなければならない条件も明確です。
企業はもちろん、従業員も営業秘密を正しく理解していれば、予期せぬ無用な事故や事件を防止しやすくなります。

そのため、営業秘密の基礎情報として、営業秘密の定義・背景・要件を抑えておきましょう。

1.1営業秘密の定義

営業秘密は、企業における競争力の源泉であり、漏えいするとビジネス継続も危うくなるほど重要性の高い情報です。
不正競争防止法では、営業秘密について、以下のように定義されています。

秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの

引用:不正競争防止法 第二条 第六項

具体的には、技術情報では設計図や製造ノウハウが該当し、営業情報では顧客情報や価格情報が該当します。

営業秘密とは、企業が過去の経営活動から積み重ねた独自情報であり、企業の盛衰にも影響する最重要情報です。

1.2営業秘密が法律で守られる理由

不正競争防止法により、企業の公正な競争と経済の健全な発展をもたらす上で、営業秘密の保護が不可欠であるとされています。
なぜなら、営業秘密は企業の競争力の源泉であり、一度漏れると競争力を取り戻せず、従前通りの収益確保が非常に困難になるためです。

例えば、唯一無二の方法で作られた製品が市場シェアを占めていても、技術情報が漏れて同様製品が出現すればシェア低下は避けられません。
もし、製造ノウハウが他社に容易に漏れる状況だと、企業は差別化できず収益を上げにくくなり、最悪の場合は企業存続にも影響します。

収益をあげるために不可欠な営業秘密が法律で保護されるからこそ、企業は高みを目指し続け、持続的な経済発展が期待できるのです。

1.3営業秘密を決める3要件

営業秘密は、営業秘密と認められるために3つの要件を同時に満たす必要があります。
もし、3つの要件を満たしていなければ、法的保護の対象として見なされないためです。

2015年以前は、営業秘密の定義が裁判例でも統一されていないという指摘がありました。
そこで、2015年に経済産業省が営業秘密管理指針を改訂し、法的保護を埋めるために不可欠な要素を3つに整理しました。
3要件の中で特に重要なのは、該当する情報が秘密であると従業員に明示されている点です。

参考:経済産業省「営業秘密の保護・活用について」

企業は営業情報を守る第一歩として、従業員に当該情報が営業秘密であると分からせ、簡単には入手できない状況の整備が求められます。

2.営業秘密漏えいの原因や罰則

営業秘密の漏えいは、時代の経過と共に厳罰化の傾向にあります。
無形資産としての営業秘密の価値が再認識されると同時に、国内に加え海外企業に重要情報が漏えいする事件が増加傾向だからです。
そこでここからは、営業秘密漏えいの経路や罰則内容、実際に発生した関連事件の内容を、実際の調査や報道内容を踏まえて整理します。

2.1営業秘密の漏えいが発生する原因

営業秘密は中途退職者が起因となっているケースが最も多いです。
そもそも営業秘密は企業内部に在籍する、または在籍した人間が営業秘密の漏えいルートになっている場合が大半です。
外部から情報を持ち出されるケースもありますが、全体の占める割合は低いことから、営業秘密の漏えい原因は内部にあると言えます。

参照:独立行政法人情報処理推進機構「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020調査概要説明資料」

国としても転職を後押しする現状を踏まえると、今まで以上に転職した中途退職者による営業秘密の漏えい事件が増える可能性が高いです。

2.2営業秘密を漏えいした場合の罰則

営業秘密を漏えいが認められると、10年以下の懲役又は最高で3000万円以下の罰金、もしくは、両方が科される場合があります。

当初の罰則規定では、罰金は1000万円以下とされていましたが、2015年の改定で2000万円以下に引き上げられました。
さらに、海外への漏えいの場合には、上限が3000万円と設定されました。
なお、法人として営業秘密の漏えいを犯すと、国内での漏えいだと5億円以下、海外への漏えいだと10億円以下の罰金が課せられます。
参考:不正競争防止法 第二十二条

ようするに、国は営業秘密の価値の重要性を再認識し、漏えい件数の増加に歯止めをかけられるよう、罰則内容の強化を進めています。

2.3営業秘密漏えいになるケース・ならないケース

企業における重要情報の漏えい事件でも、営業秘密の漏えいとして認定される場合もあれば、認定されない場合があります。

実際に発生した事件では、営業秘密としての判断は、営業秘密の3要件の充足状況により分かれています。
例えば、ここ数年で企業から重要情報が漏えいした事件を比較すると、同様の内容でも適用される法律が異なった2つの事件がありました。
違いは、営業秘密の3要件の1つである非公知性が漏えいした情報に認められるか否かです。

画像引用:日本経済新聞「かっぱ寿司元社長、営業秘密持ち出し認める 地裁初公判」
「名刺データ、管理にリスク 個人情報提供疑いで初逮捕」

営業秘密の漏えいはもちろん、営業秘密に準ずる重要情報が漏えいしやすいビジネス環境を踏まえて、企業が従前以上の対策が求められます。

3.営業秘密漏えいの対策ポイント

営業秘密の漏えい対策は、実際の情報持ち出しの行動に合わせた取り組みを複数組み合わせると、防御効果が高まります。
情報漏洩の主たる経路である人間が情報持ち出しを完了するまでに、いくつもの防ぐチャンスがあるからです。

営業秘密は企業により対象となる情報が異なり、必要な対策は千差万別です。
そのため、人間による情報漏洩の行動を起点に、各社の状況に合わせながら対策検討や実行が求められます。

情報漏洩の対策ポイントを抑えながら、効率的な対策を講じましょう。

3.1営業秘密漏えい対策の基本

参考:経済産業省「営業秘密の保護・活用について」

営業秘密の漏えい対策を効率よく講じるためには、5つの目的を同時に満たす取り組みをムリ・ムダ・ムラなく進める必要があります。
なぜなら、営業秘密が漏えいするパターンは複数あり、特定の対策のみを進めても、防ぎきれないためです。

経済産業省が示す、営業秘密の漏えい対策は3つの方針に分類されます。
しかし、企業ごとに営業秘密の内容や情報のありかが異なるため、営業秘密の状況に合わせて対策を取捨選択しなければなりません。

企業は、かけられる費用や自社の状況に対する合理性を見比べながら、5つの目的を満たせる適切な取り組みの実行が求められています。

3.2情報持ち出しの流れにおける漏えい対策の有効ポイント

参考:経済産業省「営業秘密の保護・活用について」

営業秘密の漏えい対策における5つの目的は、情報が持ち出されるまでの犯行者における行動の流れに合わせて、防御効果が発揮されます。

情報漏洩までの行動の流れは3つの局面に分解されます。

  1. 「悪意の発現」局面
    悪意そのものを発現しないようにする、「社員との信頼関係の維持・向上」が効果的です。

  2. 「犯行の決意」局面
    情報の漏えい行動を思い止める、「接近の防御」「視認性の確保」「秘密情報に関する認識向上」が有効です。

  3. 「犯行の実行」局面
    犯行を防ぐ、または、その場で犯行を確認するために、「持ち出し困難化」「視認性の確保」「秘密情報に関する認識向上」が求められます。

営業情報の漏えいを防止するためには、犯行行動の流れに合わせた多段階の対策を講じて、情報漏えいの可能性を極力低下させましょう。

3.3営業秘密漏えい対策の今後

営業秘密を守る不正競争防止法は見直しが進んでおり、2023年の改正にて、営業秘密に関する規制が強化されました。
見直しの背景には、知的財産のデジタル化や国際化の進展への対応があります。

営業秘密に関する規制見直しの主なポイントは4つです。
営業秘密を持ち出された企業がより、保護されやすい規定に変わっています。

参考:経済産業省 「不正競争防止法 直近の改正(令和5年)」

営業秘密を保護する法律が強化されたといえども、犯行を抑制に直接繋がらない状況も想定されるため、対策を緩めないようにしましょう。

まとめ:意図せぬ営業秘密の漏えいによる競争力低下は回避しましょう

この記事では、営業秘密のあらましとともに、漏えいの原因や罰則、漏えい対策のポイントについて紹介しました。

  • 企業の存続にも影響する収益に直結する重要情報であり、法律上の保護対象でもある

  • 営業秘密の漏えいの主因はヒトであり、必要要件を満たしていると不正競争防止法により情報持ち出し者は罰せられる

  • 法律での保護強化が進むが、漏えい防止のためには、企業自身による多重の対策が不可欠である

営業秘密は、それぞれの企業の歴史や特徴が濃縮された門外不出の情報です。

人材不足が叫ばれ国も転職を後押しする制度の構築が進む中、意図の有無に関わらず営業秘密が漏れ出す危険性は高まっています。
例えば、転職者が悪意なく気づかず持ち出してしまい、転職先で利用したことが法律に触れる可能性も否めません。
情報のデジタル化が進み、簡単に情報を取得しやすくなっている今こそ、企業も社員も更なる注意が必要になっています。

営業秘密の存在を理解して正しく情報を取り扱い、日本全体の経済競争力を高め合うことが今まで以上に求められています。

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本記事にて、皆様の理解、そして行動のお役に立てていました幸いです。

以上、Shuntaroでした!

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