『結婚の奴』を読んだら婚活時代の記憶が蘇った(1)

能町みね子さんのことを知ったのはいつだったんだろう。
私がtwitterを始めたのが2007、8年だったので、多分その頃だと思う。
性転換ツアーやモテない系の連載をリアルタイムで読んでいた。
同世代だし、何より私も岡田あーみんの漫画を毎月楽しみにしていたりぼんっ子だったので、全然他人とは思えなくて。
でも、だからこそ能町さんの核心みたいなものが滲み出ていそうな著作は意図的に避けてきた。
私の中の闇みたいなものが能町さんの文章を通じて突きつけられるような気がして怖い。
自分のことを考えはじめたら、日々の生活すらおぼつかなくなってしまう。だから目を背けていた。

なのに『結婚の奴』だけはちゃんと読まなくちゃなと思った。
能町さんのtwitterやイベントを通じてほぼリアルタイムでサムソンさんとの結婚に至る経緯を見聞きさせてもらっていて、お二人の関係性がめちゃくちゃ羨ましかったし、何より結婚は私の30代に長くそして重くのしかかかっていた大問題だったから。

(以下、私の婚活時代の話です。)

今は精神的に解放されて明るく楽しく生きているけれど、2012年から2015年にかけての婚活時代はそれはもうめくるめく地獄の日々。
特に、結婚しなければしあわせになれないと信じる家族からの圧力に負けて32歳で入会した相談所での活動は最悪だった。
当時住んでいた修羅の国(仮)は男尊女卑が未だにキツい土地で、30を過ぎた美しくもない女の価値なんてほぼ0に近く、「お相手」として紹介されるのは10歳以上年が離れた実家暮らしの長男ばかり。
しかも彼らの「理想の嫁」像と言えば、両親に仕え、子を産み、家事・育児の一切を担い、さらにフルタイムで働いて家計を支える健気で頑丈な女と決まっていた。

つらい。
本当につらい現実。
自分より年上の、しかも相談所の決して安くない会費を支払えるような、いわゆる一人前の社会人が悪気なく「求む!奴隷」としか受け取れないような条件を提示してくることにまず驚き、呆れた。
そして、自分のスペックで結婚を勝ち取るためには奴隷として生きることを引き受けるほか道はない、という絶望に打ちのめされた。
結局、自業自得なんだ。
勝手気ままに好きに生きてきたツケが回ってきたんだ。
こんなとんでもないカードばっかり引いてしまうのは、誰のせいでもなく自分のせいなんだ。
元々限りなくゼロに近かった自尊心は、あっという間に砕け散ってしまった。

さらに悪いことに、私が入会していた相談所は「お相手」と旧来のお見合い的な手法で引き合わせておきながら、その後は恋愛のルールに則って各自で進行するスタイルを推奨していた。
そんなん、とんでもない無理ゲーじゃん!!!
30代以上の相談所入会者は、私を含めて恋愛の世界ではあまり上手くいっていない人、もしくは結婚や恋愛に消極的(だけど諸事情により仕方なく入会するよう)な人が多いのに。*あくまで私調べ
そうゆう男女がスペックやら条件やらによってある日突然ペアを組まされて擬似恋愛にチャレンジするなんて、どう考えても難易度が高すぎる。
そもそも、恋愛のしち面倒臭いプロセスを取っ払って結婚というゴールに向かうための相談所じゃないの…?

実際、私が面会した「お相手」の方々とは、結婚という共通の目的があるはずなのにもかかわらず、恋愛におけるマナーに則って当たり障りのない会話しかできなかった。
「お休みの日はどんな風に過ごしてますか?」、「音楽とか聴いたりします?」、「食べ物の好き嫌いとかありますか?」etc。
最初のうちは「ああ、脈なしなのね。それなら致し方なし、オーライ!」と深く考えずに話を合わせていたのだけれど、後日相談所からお断りの連絡は来ないし、メッセージ機能(会員制のSNSみたいなやつ)も閉鎖されない。
かと言って「お相手」から二度目の面会のお誘いがあるわけでもなく、代わりになぜか日々の出来事がメルマガのように毎日送信されてくるようになった。
次の「お相手」も、そのまた次の「お相手」も…。
そう、本当の地獄はここから始まったのだった。(つづく)

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