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Women&Power: A Manifesto by Mary Beard

イギリス一有名な古典学者Mary BeardによるWomen & Power: A Manifestoを読了。オックスフォードにある古本屋でたまたま見つけた本なんだけど、バンコク在住の友達の家でも同じのを見つけたので結構有名なのだと思っていた。したら驚くことに、Amazonでは267ものレビューがあり、かつ英国ガーディアンが「21世紀の100冊」に選んだらしい!章は以下の通り。

Preface
The Public Voice of Women
Women in Power
Afterword

最近、北村紗衣さんの『お砂糖とスパイスと爆発的な何か: 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』など面白い本が読めるようになり、フェミニスト批評がより身近になったように思える。本著はホメロスの叙事詩『オデュッセイア』やシェイクスピアなどを切り口に、いかに女性が公的な場で発言できなかったのかを論じる。見えてくるのは現代(西洋)社会と地続きにある女嫌い(ミソジニー)のルーツで、第二章では最近の事例として、サッチャーやヒラリー・クリントン、メルケルなど「Powerful women」の扱われ方にに着目する。基本的にpowerful womenに関しては、Kenji Yoshinoも言及しているcovering pressure(musclineな見た目、低い声など)に関して述べられていた。

フェミニズム系の本は結構読んだので、これといって新しいメッセージはなかったが、古典学者なのに、Twitterから見える現代のミソジニーの話とかも結構出てきて面白かった。絵なども多く載っていて興味深かったが、古典文学の素地がなく、かつあまり興味がないので、ふーん、へー、みたいな感想しか出てこなかった。日本神話とかだったらもうちょっと興味持てただろうか。

以下メモしたかった文章たち。

I know have the body of a weak, feeble woman; but  have the heart and stomach of a king, and of a king of England too. (22ページ) エリザベス一世の有名な言葉だって!
You cannot easily fit women into a structure that is already coded as male; you have to change the structure. (86, 87ページ)
I'm struck, for example, that one of the most influential political movements of the last few years, Black Lives Matter, was founded by three women; few of us, I suspect, would recognise any of their names, but together they had the power to get things done in a different way. (88, 89ページ)

最後の引用に関しては本当にそのとおりで、社会的ムーブメントは誰か一人のセレブリティ、あるいは強力な人がやる必要はないのだな。#BlackLivesMatter, #EveryDaySexism , #Metooなど 、ハッシュタグによるcollectiveな社会運動に今後着目したい。

西洋文化のルーツを見てみると、3千年前にすでに女は「部屋に戻って、糸巻きと機織りというご自分の仕事をしてください」的なことを言われていたのだが、他の文化はどうなのだろう。アフリカには女の地位が高い民族が過去にいたとか聞いたけど。

なお、哲学者Nkiru Nzegwuは1994年の論文、Gender Equality in a Dual-Sex System: The Case of Onitshaにおいて、ナイジェリアのOnitsha社会では、男女で完璧に役割分担がされているものの、男が担う役割と女が担う役割の重要性が完全に同じと社会で認識されているため、男女が平等であった論じている。この論文は超面白くて大好き。フランスからきたフェミニストのシモーヌ・ド・ボーヴォワールが一生懸命「女性は歴史を通してsubordinateな地位にいて家事とかやらされてた。Onitsha社会は女性に家事とかジェンダー的役割を押し付けてる」って首長(女)に言うんだけど、「え〜女は男になるつもりなのか?なんで?」って全然話が通じない。それもそのはず、家事という女性が担っている役割がOnisha社会ではsubordinateにあるとは全く思われてないのだもん。この論文で、元来「女性的であるもの」に価値を見出す見下してるのは私たち自体なんちゃうか?という疑問が出てくる。なので、本書で述べていた「Power」を見直すという作業は本当に大事だと思う。

本書の日本語版が何故か『舌を抜かれる女たち』というタイトルで出ているのだが、どうしてこんなにタイトル変えてしまったのか…。

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