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Vol.17 RESASを活用したマーケット分析

今回は、RESASを活用して浜松市中区で20代女性をターゲットとしたイタリア料理店を開業するという前提条件で、マーケット分析をしてみたいと思います。
さあ、RESASだけでどこまで出来るでしょうか?

○人口分析

まずは、今回の前提条件がイタリア料理店ということで、そもそも浜松市中区(浜松市)にどのくらい食べに来ることが出来る対象者がいるのかは大きな問題になりますね。

<浜松市の人口ピラミッド>

出典:総務省「国勢調査」

人口ピラミッドを見ることで、世代ごとの人口構成を見ることが出来ます。
対象となる20代女性は、20~24歳が16,124人、25~29歳が17,130人で合計33,254人となりますが、その前後の世代である15~19歳、30~34歳まで対象を広げると70,010人となります。

これを多いと捉えるか、少ないと捉えるのかは経営される方のご判断になりますが、市場規模を図るうえで、この辺りは把握する必要はありますね。

<近距離移動分析>

出典:ヤフー・データソリューション、ゼンリン、ヴァル研究所、住友電工システムソリューション

真ん中のピンク色の部分が浜松駅付近になります。このグラフでは、この浜松駅付近を中心として、公共交通機関(飛行機なし)と自動車(一般道優先)を利用した時に、移動時間をヒートマップで把握することが出来ます。

これは先ほどの人口ピラミッドとは違い、年齢別で区分けは出来ませんが「移動の所要時間」を把握することで、どの程度の市場規模なのか、またどのエリアまで広告宣伝等プロモーションを行うのかなどを検討する材料になると思います。

また今回は、浜松駅周辺の中心街で開業するシミュレーションになりますので、あまり現実的ではありませんが、公共交通機関(飛行機なし)での対象エリアが狭いこともあり、駐車場の可否などについても検討を与えてくれるデータになりそうですね。

<滞在人口率>

出典:株式会社NTTドコモ、株式会社ドコモ・インサイトマーケティング「モバイル空間統計@」

こちらのデータでは、2020年14時と20時で、20代女性が、どのくらい浜松市中区に滞在しているのかを示しています。

黒の線が、浜松市中区の国勢調査人口(10,770人)となります。
青の折れ線が平日、赤の折れ線が休日の滞在人口を表しています。

浜松市中区においては、国勢調査人口以上の人たちが、14時、20時の段階に滞在していることが分かります。
つまり、浜松市中区には働きに来たり、買い物に来たり、学校に通ったりしている人が多いということになります。

逆にベットタウンのような街ですと、昼間は近隣市町村に働きに行ったり、買い物に行ったり、学校に通ったりして、国勢調査人口以下になる市区町村もありますので、ご注意ください。
ただ、その場合でもご自身が想定する以上の滞在人口となっていれば問題はないと思います。

<流動人口メッシュ分析>

出典:「混雑統計®」©ZENRINDateCom CO,LTD

まず最初に「流動人口」の意味からご説明します。
流動人口とは、一時的にある場所に滞在している人口のことです。つまり、通勤、通学、出張、旅行などで住んでいない別の場所を住んでいる場所から一時的に訪れている移動する人口のことです。

そして、色の見方ですが、青から赤に色が濃くなればなるほど、流動人口が多いということです。それだけ沢山、この地域外に住んでいる人たちがそのエリアに来ていることが分かります。

浜松駅周辺においては、中心街ということもあり色が濃くなっていますが、2019年9月の新型コロナウイルス発生前と発生後の2021年9月で比較すると色の濃いエリアが少なくなっていることが分かりますね。

<流動人口マップ月別・時間別推移>

次に、<流動人口メッシュ分析>の右側の図(2021年9月 平日)の青で囲った部分の月別・時間別の流動人口の推移を示します。

出典:「混雑統計®」©ZENRINDateCom CO,LTD

上の月別推移で見ると、下限の9月と上限の12月では、2,700人の違いがあります。
また、下の時間別推移で見ると、今回比較した下限の9月と上限の12月では、若干の違いこそあれ大きな違いにはなっていません。

ただ、ランチタイムの12時、ディナータイムの19時で比較すると両月とも10,000人弱の差があることが分かりますので、何かしらの対策は必要かもしれませんね。
(逆を言えば、月ごとの対策の必要性は少ないかもしれませんね)
※コロナ禍のデータとなりますので、随時調査検討する必要はあると思います。

<滞在人口の動向(V-RESAS)>

人口分析の最後は、V-RESASのデータで直近の人の流れを見ていきます。

出典:株式会社Agoop「流動人口データ」

これを見ると、浜松駅での人流の推移は、2019年同週比で「都道府県内(浜松市以外)」と「都道府県外」の方はマイナスで推移していますが、「市区町村内(浜松市)」の方の人流はプラスで推移していることが多くなっていることが分かります。

<将来人口メッシュ分析>

今までは、今現在の人口や人の動きについて見てきましたが、商売をしていく上では、将来的にその地域の人口がどのようになっていくのかも見ておく必要があると思います。

出典:国土交通省「メッシュ別将来人口推計」「国土数値情報」

このデータでは、人口の増減数をメッシュで示しています。
薄い青から濃い青にかけてマイナス幅が大きく、緑から赤にかけてプラス幅が大きくなっていきます。

このようなデータと先ほどまで見てきた現状のデータとも組み合わせ、十分に市場性(十分な市場規模)があるのかを見極めていく必要性がありますね。

ここまでは、人口分析として、ターゲットとなるお客さんがどの程度対象エリアにいるのかを見てきました。
この辺りを見ながら、市場規模の予測や売上予測が出来るかもしれませんね。

○業界動向分析

では、ここからは出店予定エリアでの競合他社の状況や、業界動向について見ていきたいと思います。

<事業所立地動向>

出典:日本ソフト販売株式会社「電話帳データ」

ここでは、出店希望エリアにおける産業割合や、飲食店割合について見ていきます。

左側の地図の黒枠のエリアを出店希望エリアとして見ていきますが、このエリアにはどのような事業所があり、また競合となり得る飲食店がどの程度あるのか見ていきます。

右上の「浜松駅周辺の産業割合」を見ると「飲食店」の構成割合が一番多く793社(31.11%)あることが分かります。
エリア的には、飲食店の激戦区ですね。

更に細かく見ていくと、その793社の飲食店割合も見ることが出来ます(右下グラフ)

「スタック・バー・酒場」が、51.83%と一番割合が高く、夜の歓楽街的なエリアということが見えてきます。
その中で、今回出店を予定している「イタリア料理店」は、18店あることが分かります。
これだけのエリアで18店ですので、意外に多いのかもしれませんね。

更にこれを細かく見ていくことも出来ます。

<競合分析>

出典:日本ソフト販売株式会社「電話帳データ」

先ほどの「飲食店」割合の上記5業態+イタリア料理で、2011年からの時系列で店舗数を見ることが出来ます。

これを見ると構成割合が一番高い「スナック・バー・酒場」は、145店の大幅な減少となっています。

また、「和食飲食店」「喫茶」も減少はしておりますが、「スナック・バー・酒場」ほどの落ち込みにはなっておらず、「その他レストラン」「ラーメン・餃子」については若干のプラス、今回対象の「イタリア料理」に関しては9社増となっており、夜の歓楽街としてのイメージが少し変わりつつあるのかもしれませんね。

出典:日本ソフト販売株式会社「電話帳データ」

更に、実際に上記のように事業所一覧も見ることができ、出店前に競合店舗の分析にも役立たせることも出来ると思いますので、ぜひご活用ください。

<飲食店情報の閲覧数、求人情報(V-RESAS)>

ここからはV-RESASで見ることができる業界動向になります。

出典:Retty株式会社 Food Date Platform、株式会社フロッグ HRogリストforアカデミアより提供

<飲食店情報の閲覧数>では、実際に売上という形ではありませんが、どの程度検索されているかで、現在のニーズ状況を把握することができるのではないかと思います。

閲覧数だけを見れば、まだまだ厳しい状況は続いているようですが、これらを見ながら出店のタイミングを図ることも出来るかもしれませんね。

また、そういった観点<求人情報>を見ると「飲食/フード」の求人数は徐々に上がってきているようですので、競合他社は今後の需要回復を見込み人材確保に動いているのかもしれないという仮説が立てられるかもしれませんね。

<POSで見る売上高動向>

出典:ナウキャスト、株式会社日本経済新聞社「日経CPINow」

最後に少し違った観点での見方をしてみます。
このデータは、「トマト調味料」「パスタソース」「乾パスタ」「冷凍総菜」のPOSで見る売上高動向になります。

これを見ると、イタリア料理に該当するようなパスタ関連の食材が良く売れていることが分かります。
つまり、自宅でパスタを作っている人が多いということですよね。

これら動向を掴むことで、店舗のみが競合ということではなく、家での食事や、持ち帰り等も競合になり得ることが分かります。

ただ、競合として捉えるだけでなく、もしかしたら自社でもこれらオリジナル商品やテイクアウトを取り入れることで、新たな顧客獲得や需要喚起に繋がるかもしれませんね。

○まとめ

今回見てきたようにRESASを使うだけで、ここまでのマーケット分析ができることをご理解いただけたのではないでしょうか?

ただ、毎回お伝えさせていただくことではありますが、これはあくまでもデータです。

これらデータと、先ほど見たような事業所一覧を参考にして、現地に行って競合分析を行ったり、実際に人通りを確認するなど、実地調査と組み合わせることが必須ですのでお忘れなく!


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