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Vol.27 お金の流れから見る磐田市の産業

いつも自分の家がある浜松市を中心に分析していますが、今回は、お隣の町「磐田市」について調べてみました。

今回は、主に産業について見てみました。

ただ、やってみて改めて感じたのですが、RESASを見れば、その地域についてのデータを見ることが出来るのですが、実際の人の流れであったり、地域性など、その街の特性を把握していないと分析って本当に難しいなぁ~、と。
だから、そういう点を差し引いてみて下さいね。

一方で、現在別の街で事業をしている方が、新たな進出先として、その街の特性を知るためには、いきなりその街に行くよりは、今回のように、まずはデータで見るってことも必要だと思いますので、そのような観点で見ていただくと良いのかもしれませんね。

<地域経済循環図>

まずは、地域経済循環図から見てみたいと思います。
私は、いつも街を見る時に、一番最初にこの地域経済循環図を見て、ざっくりとその街の特性を知るようにしています。

出典:環境省「地域産業連関表」、「地域経済計算」(株式会社価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)受託作成)

地域経済循環図とは、都道府県・市町村単位で、地域のお金の流れを生産(付加価値額)、分配(所得)、支出の三段階で「見える化」することで、地域経済の全体像と、各段階におけるお金の流出・流入の状況を把握することができるため、地域の付加価値額を増やし、地域経済の好循環を実現する上で改善すべきポイントを検討することができるものとなります。

以前、この地域経済循環図についてまとめたことがありましたので、ご参考までに。

では、磐田市の地域経済循環図について「生産」「分配」「支出」の観点から見ていきます。

【生産】

2次産業、3次産業で9割以上を占めており、特に2次産業の割合が多くなっている。

【分配】

雇用者所得で磐田市外へ649億円流出している。これは、磐田市外就労者の給与が要因であり、磐田市外へ所得が持ち出されている(地域外から磐田市に働きに来ている人が多い)

【支出】

磐田市外に民間消費が796億円流出しており、観光や買い物などの各種消費が磐田市外でされていることが分かる(磐田市内にお金が落ちていない)
また、その他支出では磐田市内へ流入が多く、磐田市内の財・サービスが多く購入されていることが分かる(その他支出は、BtoBで考えると分かりやすいと思います)

今回は、【生産】で2次産業が多い、【分配】で磐田市内に働きに来ている人が多い、【支出】で磐田市外に民間消費が流出している、このような観点から産業として、何かやれることはないのかについて仮説を立てることにしました。

<産業構造(2016年:中分類):企業単位>

まず最初に、磐田市の産業構造について、ざっくり見てみたいと思います。

その前に、言葉の説明です。
今回のグラフは、主に「企業単位」としてみていきますが、この「企業単位」とは、その地域内に本社機能を有している企業を基準にしてデータ化しています。

一方、「事業所単位」というものもありますが、これは、その地域内に本社機能がなくても、例えば営業所や事業所・工場等を有していれば、それを基準にデータ化しているものになります。

つまり、地域の産業をどのような観点で捉えるかによって、使う単位が変わる可能性があります。
例えば、地域の企業を育成したいという観点であれば「企業単位」、地域の雇用について考えていくのであれば「事業所単位」で捉えるのが良いのかもしれません。

出典:総務省「経済センサス-基礎調査」再編加工、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工

これを見ると、「輸送用機械器具製造業」が、売上高、付加価値額、従業者数ともに非常に大きなシェアを占めており、当地域の主力産業であることが分かります。

ただ、「輸送用機械器具製造業」の企業数が少ないにもか関わらず、これだけ多くの売上高、付加価値額となっているということは、大企業の存在が大きく影響している可能性があります。(実際に磐田市には、世界企業でもある大きな会社がありますからね)

また、雇用という観点から見ると「輸送用機械器具製造業」は当然のことながら「飲食店」「洗濯・理容・美容・浴場業」「総合工事業」「飲食料品小売業」「医療業」なども、当地域にとっては、重要視していかないといけない産業になるのかもしれませんね。

では、次に上記で磐田市は、「輸送用機械器具製造業」が非常に大きな産業であることが分かったと思いますが、そこで働いている方々の属性について見てみたいと思います。

<通勤者の流出入者数の地域別構成割合>

総務省「国勢調査」

まず、流入者数、流出者数を全体的に見てみると、磐田市の通勤者においては、流入者(磐田市に働きに来ている人)が、流出者(他地域に働きに行く人)を上回っており、流入超過の状態になっています(磐田市へ働きに来ている人の方が、他地域へ働きに行く人よりも多い)。
そして、その数は、2010年から2015年にかけて、2,097人増加しています(流出者数は横ばい、流入者数は増加)

その地域別割合としては、流入者、流出者とも「浜松市」「袋井市」「掛川市」が上位となっており、仕事面における関連性が近い地域であると想定されます。

また、その中でも「浜松市」から流入してくる人が圧倒的に多く、約2万人の方が働きに来ています(2010年から2015年で、約1,500人増加)

<通勤者の流出者数の産業別割合>

総務省「国勢調査」

これを見てみると、流入者数については、2010年も2105年も「製造業」「卸売業、小売業」「医療、福祉」、流出者数については、「製造業」「卸売業」「運輸業、郵便業」が上位を占めており、変動がありません。

ただ、ここで面白い傾向としては、先ほど流入者数、流出者数を全体的に見たときに、2010年から2015年にかけて、2,097人増加し、流入超過数が、6,073人に増加しているのですが、その流入超過の要因について見てみると、「製造業」が、10,147人、「医療、福祉」が、92人の流入超過になっておりますが、その他の業種では、流出超過になっていることが分かりました。
この傾向からも、当地域は、「製造業」が、産業の基盤形成をしていることが分かります。

勿論、この主要産業である製造業を更に強化していくことも必要です。
ただ、今回の結果で、流出者数が多かった業種というのは、産業としての規模が成長していない、また、利益的に厳しくなっている等の理由があるからこそ、地域での雇用を受けることが出来ず、他地域へ働き口を求めて流出している可能性もあることから、次に流出者の産業について、なぜ、流出者数が増えているのかを検討するために、産業としての利益体質を測る指標の一つである労働生産性について、近隣市町村との比較をしながら調べてみました。

<通勤者の流出超過業種の労働生産性>

総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工

これを見てみると、やはりほとんどの業種の労働生産性においては、静岡県平均、全国平均、近隣市町村である浜松市、掛川市、袋井市よりも低くなっておりますので、利益体質的には厳しく、競争優位性が低くなっている可能性があります。

このような現状を踏まえ、労働生産性改善のためのDX化や、販路開拓等を行うことで、経営改善をしていく必要もあると思いますが、今回は、流出超過ではありますが、唯一労働生産性が、比較地域よりも上回っている「宿泊業、飲食サービス業」について、少し調べてみたいと思います。

<宿泊業、飲食サービス業の特化係数>

では、まずは「宿泊業、飲食サービス業」の特化係数について見てみたいと思います。

なお、特化係数とは、域内のある産業の比率を全国の同産業の比率と比較したもので、1.0を超えていれば、当該産業が全国に比べて特化している産業とされています。
労働生産性の場合は、全国の当該産業の数値を1としたときの、ある地域の当該産業の数値になります。

総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」再編加工

こちらのグラフを見ると、先ほどは「宿泊業、飲食サービス業」で労働生産性が高いことだけが分かったのですが、その中でも「持ち帰り・配達飲食サービス業」の労働生産性が高いことが分かります。また、それと同時に付加価値額の特化係数も高くなっており、利益的にも他地域よりも高い値を示していることになります。
「宿泊業」「飲食店」に関しては、それほど高くないことが分かります。

市場規模としては大きな隣町の浜松よりも「持ち帰り・配達飲食サービス業」に関しては、特化係数は高くなっております。

<磐田市地域の飲食サービス業の状況>

では、次に磐田市地域の飲食サービス業の状況について見てみようと思います。

出典:日本ソフト販売株式会社「電話帳データ」、国際航業株式会社「住所正規化コンバータR7」

上記右側マップで、ある程度磐田市地域を網羅したエリアを赤枠で囲いましたが、この赤枠内の産業割合が、左側上段のグラフになります。

これを見ると、今回該当する飲食サービス業が該当する「飲食店」は、6番目、構成割合としては8.37%になります。

更にその飲食店の中で「持ち帰り・配達飲食サービス業」に該当する「仕出し・弁当・宅配」は、19社(4.51%)となっています。

エリアとしては、磐田市中心部に多く集積していますが、北部、南部エリアにも立地していることが分かります。


出典:日本ソフト販売株式会社「電話帳データ」、国際航業株式会社「住所正規化コンバータR7」

次に、赤枠エリア内の産業別推移を見ると「仕出し・弁当・宅配」の店舗数は、2011年から2021年にかけて、12社減少していることが分かります。

なお、現在19社ある事業所一覧は、資料の右側に記載してあります。

<仮説によるまとめ>

RESASにおいて調べられることは、このくらいになるのですが、正直言いまして、データ分析も万能である訳でなく、ある程度これくらいまで状況を絞り込み、あとはヒアリング等を通して、深掘りをしていく作業が必要だと思います。

私であれば、事業所一覧から更に「持ち帰り・配達飲食サービス業」に該当しそうな事業所を絞り込み、ヒアリングなどを通して、先ほどまで見てきたような労働生産性や付加価値額についての実態を把握していきます。
また、現状のビジネスモデルを把握することで、それがどのような要因で起きているのかも知る必要があると思います。

大前提として、ヒアリングを通した、定性的な情報取得も必要性があることはお伝えしつつ、現状としては、以下のようなことを仮説検討するのはどうだろうか?ということです。

●流入者数で34,819人、流出者数で28,746人、合計で63,565人もの多くの通勤
  者がいるため、この方々をターゲットにして、労働生産性、付加価値額の
  特化係数が高い「持ち帰り・配達飲食サービス業」(仕出し・弁当・宅配
  業)の強化策を検討する
   ・大手企業等への給食や、持ち帰り弁当・総菜等の販売
 ※ヒアリング等をして現状を強化するのか、もしくは、持ち帰り用の商品
        開発、または帰り時間を見越した販売方法の検討等

●「仕出し・弁当・宅配業」と関連性の高い農業分野との連携により、相乗
    効果を狙う
 ・農業分野は、労働生産性、付加価値額の特化係数が1.0以下、また、移輸
        出入収支額(地域外から稼いでいるかどうかの指標)もマイナス
       ※資料割愛、ただしRESASで調べられます
    ・農業者の6次産業化を後押しし、稼ぐ産業への育成

まだ情報量が少ない中での、まとめとなりましたが、こういった形で少しずつ的を絞り込んでいくことで、やるべきこと、検討していくことが見えてくるのではないでしょうか?

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