熊本地震_1_202002

#1 耐震等級2が倒壊した理由?

まず、「耐震等級」という言葉はご存じでしょうか?

「耐震等級」とは、住宅の耐震性能をランク付けした等級のことです。
「住宅性能表示制度」の構造に関する項目で、「等級1」から「等級3」まで3段階で表示されます。
「等級1」は、建築基準法レベルの耐震性能を満たす水準とし、「等級2」はその1.25倍、「等級3」はその1.5倍の強さがある事を示します。

この建物は、「長期優良住宅」を取得するために「耐震等級2」で計算しました。
その「耐震等級2」の建物が、倒壊したのはなぜか?


① 地震地域係数による低減

地震地域係数202002

「耐震等級」を検討する際に計算を行うのですが、地震力を計算するときに「地震地域係数」なるものを使用します。
これは、相対的に地震が発生しにくい地域、被害が出にくい地域は「0.9~0.7」までの範囲で設計地震力が割り引かれるということです。
この詳細は、建築基準法施行令で規定されています。

簡単にいうと、地震が発生しにくいだろう地域は、耐震強度を低減してもよいということです。
私の住んでいる大阪は、「1.0」なのですが、熊本は「0.9」となっています(一部地域除く)。

1.00 × 1.25倍(耐震等級2) × 0.9(地震地域係数) = 1.125倍

上記のような計算となり、「耐震等級2」と言いながらも、実質1.125倍となり1.25倍になっていないということになります。

ああ、新築の話か…じゃないですよ。
リフォームにおける耐震補強工事も同じです。
耐震診断を行う際に、同じ地震地域係数を使用し計算していますので、同じように注意が必要ですね。

実際、大地震が発生してるんだから、「0.9」のわけがありませんよね。
場所によると「0.8」なんて場所もあります。
沖縄なんて、「0.7」ですからね。

1.00 × 1.25倍 × 0.8 = 1.00倍 … 「耐震等級2」の場合
1.00 × 1.50倍 × 0.8 = 1.20倍 … 「耐震等級3」の場合

「耐震等級2」で建ててるんで安心だと思ってたら、実は「耐震等級1」と同じだった?
「0.8」の場合は、「耐震等級2」も「耐震等級3」も、「耐震等級1」になっちゃいます。
これ、お施主さん 知りませんよね?

私は、大阪ですので地震地域係数「1.0」以外で考えたことが無いのですが、やはりその地域の設計士さんは低減してるんでしょうか?
低減しても、間違ってるわけではないですもんね。

結論としては、
地震地域係数は、一律「1.0」にすべきです!
日本で地震が来ないところなんて無いんですから。

ちなみに、静岡県は条例で「1.2」に割り増しを義務化しました。
南海トラフ大地震を想定しての事なんですが、この地震が来て最悪の場合は32万人の死者が出ると言われていますが、その内10万人以上が静岡県で発生すると考えられています。

静岡県の地震地域係数は「1.0」ですが、静岡県は県民の命を守るために数値の割り増しをする事は、いいことだと思います。

② 地盤が悪かった

軟弱地盤だから。という内容です。
「建物の問題では無く、地盤が悪いんですよ。」
この責任逃れをしているように聞こえるヤツです。

この建物の地盤は、10m程度まで軟弱な為、鋼管杭を施工していました。
通常、軟弱地盤の場合は地震力を増幅すると言われています。
例えば、震度6弱の地震が震度6強程度に増幅されるといった感じです。
つまり、軟弱地盤が原因ではないか?ということです。
でも、だから鋼管杭で地盤を補強していたんでしょ?って事なんです。

しかし、お隣は、柱状改良杭で被害は少なかった…となると、細い鋼管杭がダメなのか?
ちょっと、その辺りは不確かでよくわからない感じです。

詳しいことは不明ですが、<軟弱地盤では地震が増幅される>のは間違いない話です。
大阪で軟弱でない地盤は少ないです。
できる限り、地震に耐えれるように「耐震等級3」を標準で考えたいですね。

注意)
耐震補強の場合は、基礎の強度が新築とは違うため、一概に「評点1.5」以上というわけにはいきませんので、そこは専門家と十分話し合ってどういう補強を行っていくか検討しましょう。

参考ですが、国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)が【J-SHIS Map】という地震ハザードステーションを運営しています。

そこに表層地盤の増幅率を示したMAPがあります。

画像2

表層地盤増幅率とは、表層地盤(地表面近くに堆積した地層)の地震時の揺れの大きさを数値化したもので、地震に対する地盤の弱さを示します。
防災科研の分析では、「1.6以上」で地盤の弱いことを示すとしています。
MAPで示されるオレンジ色が「1.6以上2.0未満」で、赤色の部分が「2.0以上2.5未満」の地域となります。
関東、大阪、濃尾、福岡など人口密度の高い平野部に集中しており、大都市部の過密地域では住民の半数以上が軟弱な地盤で生活していることになります。

もちろん、実際にはご自身のお住まいになっている地盤の地盤調査をして確認するのが一番いいのですが、まずは【J-SHIS Map】を参考にして、どの程度地盤の弱い地域に住んでいるのか確認してみてはいかがでしょうか?
ちなみに私は、「特に揺れやすい」と言われる赤色の「2.0以上」の地域で暮らしています。

▶▶▶ 次回は、#2 筋交いは粘りがない? です。


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