熊本地震_2_202002

#2 筋交いは粘りがない?

今回の地震で筋交いの破断が目につきました。
筋交いは粘りの無いため、繰り返しの地震に有効では無かったのです。

ここでは、粘りのない根拠と考えられる点を挙げていきます。
筋交いと面材耐力壁との違いは、釘(ビス)の数と固定の仕方、そして破壊の仕方だと考えます。

釘(ビス)の本数

筋交い_面材_比較1_202002

まず、釘(ビス)の本数ですが、筋交いは筋交いプレートを固定する14本×両端(2)となるので、28本です。
面材耐力壁は、外周部と間柱部分に階高2.8m、15cmピッチと仮定して68本です。
なお、面材耐力壁とは、一般的には構造用合板7.5mm以上(通常9mmを使用)のことですが、各メーカーから出ているダイライト(DAIKEN)やあんしん(ニチハ)などもあります(メーカー品はそれぞれ所定のビスや釘及びピッチが決まっています)。
筋交いに比べて面材耐力壁の方が単純に2倍以上の釘を使用しているので、粘りがあると考えれます。

部材の固定

次にそれぞれ部材の固定の仕方です。
筋交いの場合は、筋交いプレートで固定しています。
その為、力が筋交いの両端(上の画像の赤〇)に集中します。
面材耐力壁の場合は、土台・柱・横架材に貼り付ける為、全体的に固定となります。
その為、右側の赤枠内の全体に力が分散します。
以上の事から、筋交いに比べると面材耐力壁は粘りがあると考えられます。

破壊の仕方

筋交いの破壊の仕方には2パターンあります。
引張の力のかかる端部の金物取り付け部分でビスが抜けて外れてしまう。
圧縮の力がかかった場合に、座屈で筋交いの真ん中が折れてしまう。
どちらの場合もその後、筋交いとしては全く機能しなくなります。

面材耐力壁が破壊する場合は、面材のコーナー部分より釘が抜けてきます。
しかし、部分的に釘が抜け出しても、すぐに耐力がなくなるわけではありません。

この破壊の仕方によっても、筋交いより面材耐力壁の方が粘りがあると言えるのではないでしょうか。

実際、熊本地震で大きな被害にあった住宅では筋交いの端部金物が破壊しているものと筋交い自体が座屈により折れているものが見うけられます。

筋交い_破壊_202003

筋交いのスパン

あと、もう1点。
長いスパンの筋交いも微妙との結果が出ています。

半間幅の筋交いが2セットと1間幅の筋交い1セットの場合を考えてみましょう。
この2つの仕様は、計算上は全く同じ強度で計算されます。
2.0倍の筋交いが半間(0.91m)×2セット=3.64
2.0倍の筋交いが1間(1.82m)×1セット=3.64
となりますので、同じですよね。

しかし、半間2セットの筋交いは、4個の筋交いプレートで固定されていますので、56本のビスで固定されている事になります。
しかし、1間1セットの筋交いは、2個の筋交いプレートですので、ビスは28本です。
先程の面材耐力壁の話とも似てきますが、やはり多くのビスで固定されている方が強度は高くなると考えれます。

筋交い_面材_比較2_202003

また、1間の筋交いの強度は半間の筋交いの0.7~0.8倍程度だとも言われています。
これはちょっと私はピンときてないんですが・・・。
45°に近い方が圧縮には強いような気がするのですが、筋交い自体の長さが長くなる為、座屈には弱くなるという事なのか?
ここは、ちょっと???な感じです。

しかし、筋交いを使用する場合は実際の強度と計算上の強度にズレがあることは間違いありません。
今回の地震で、面材耐震壁を使用した住宅の方が被害が少なかったという結果もあります。
不確かな強度計算になる可能性のある筋交いは多用しない方がよいのではないでしょうか?
また、先に述べた3つの粘りの無さも加えると面材による耐震壁を基本として考え、足りない部分を筋交いで補う程度が丁度いいように思います。

なお、私は耐震補強工事において、筋交いはほぼ使用していません。
このお話は、また別の機会で。


▶▶▶ 次回は、#3 直下率って何?耐震に関係ある? です。


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