玄関ドアを引戸へ
■ はじめに
バリアフリーリフォームにおいて
玄関出入口をドアから引き戸へ変更することがあります。
■ 形状
片開きドア、または親子ドアから引き違い戸に変更することを
お考えになっていることが多いかと思うのですが、
実は引き違い戸では有効開口寸法が狭くなってしまう可能性が
高いのはご存じでしょうか?
下の図を見て下さい。
(図_B001 有効開口寸法)
現状の片開きドアや親子ドアの場合、
お家により若干寸法は異なってきますが、
現在の玄関ドアの一般的な寸法から考えると、
有効開口寸法は75.5cmです。
では、引き違い戸の場合はどうでしょう?
枠の内々寸法は約164cmで
戸1枚の寸法は86.5cmですので
片側に寄せると77.5cmとなり少しドアよりも大きくなると思うのですが
実際には引き残しがあるため、
有効開口寸法は67.8cmしかありません。
片開きドアの時よりも8cm近くも狭くなってしまいます。
そこでおすすめの仕様としては、袖付2枚引き戸です。
袖と言われる1枚は固定の為、
出入口は右側か左側かを事前に決めなければなりませんが、
有効開口幅は90.5cmと片開きドアの時から15cmも大きくなります。
もちろん戸は連動していますので、
把手を引けば2枚とも一緒に動きます。
■ ガラス
次に注意点をお話します。
ガラスのお話です。
現在では省エネの観点から、
複層(ペア)ガラスが主流で一般的です。
しかしバリアフリーの場合は注意が必要で、
玄関引戸の場合、ガラスの重量がポイントです。
複層(ペア)ガラスにすると
高齢者等の場合、重すぎて開け閉めが困難となります。
省エネ(断熱)の観点からは完全に逆行する話なのですが、
玄関戸を開けれない、閉めれないというのは大問題です。
本当はショールームなどで体感できればいいのですが、
ショールームにはそもそも引き戸の設置台数が少ない上に
単板ガラスの仕様はほぼ設置されていません。
体感は難しいと考えていただいた方がいいでしょう。
■ 引手・把手
従来の玄関戸の場合は、引手が一般的な仕様でした。
しかし、最近の仕様では把手が掴みやすいため、主流となっています。
把手とは大型のハンドルのことです。
少し費用は高くなりますが、室外はもちろん室内も把手をおすすめします。
ただその場合は、通常オプションの網戸は取付できません。
※把手が干渉するためです。
採風機構を内蔵した袖パネルもありますので、
そちらを採用することを検討してもいいかもしれません。
(図_B002 把手)
(図_B003 採風)
〇 リニアスライドシステムについて
リニアスライドシステムとは、扉が自動で開閉するシステムです。
定価ベースで+396,000円(税込・取付組立費等除く)とまぁまぁの価格。
※LIXIL製品2021年9月現在
一番の難点は、単板ガラス仕様の設定で、複層ガラスは幅187cm仕様のみ対応。
大阪では90cm又は91cmのモジュールが多い為、幅164cm又は169cm仕様が主流です。
ですので、複層ガラスはあまり現実的ではありません。
戸が重たいからこのシステムを使いたいと思っても対応していないって…
少し?いや大変残念に思います。
まぁ、それでも開け閉めが楽になるのはメリットですからね。
検討してみてもいいのではないでしょうか?
■ 結論
今回はLIXIL製品を元にお話していますが、
TOTO製品でもそんなに大きな違いがあるわけではありません。
引き戸はあまり進化していないという事です。
非常に残念ですが、
ドアは次々新しい仕様が発表されるのですが、
20年前と現在でどの程度の違いあるでしょうか?
たぶん…ほとんど変わっていないと思います。
とはいえ、
やはりバリアフリーの観点から考えれば、
玄関引戸となるでしょうし、
特に車椅子での対応となるとドアという選択はできません。
もう、我々にはメーカーさんにお願いするしかないでしょうね。
もう少し真剣に取り組んでほしいと…。
よく比べられる事ですが、
自動車業界の標準仕様は
住宅業界ではいつまでたってもオプションです。
それもハイグレードの…。
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