太平洋、スピード、そしてスピードだ!

速度だ。パシフィック・クロスでは速度だけがものを言う。

自律思考、自己修復、魔術原動機付二輪車《オートマチック》が行き交うこの《道》では、ハビタブルゾーン以外での脱落は死だ。野良オートマチックに食われるのだ。

東経140度31分、北緯20度50分に端を発し、奇妙に蛇行しながら、太平洋を斜めに突っ切って、南極大陸アデレード島へと至るパシフィック・クロスはある年、突如出現した。大混乱を乗り越えるとそこには逸脱した連中の無法地帯ができあがっていた。

「実際オマエら何者なのかね?」
「f*ck off」
「へいへい」

ミラーの映像に違和感を感じた。一騎のオートマチック、それを追う巨大な……戦車? 大聖堂並みだ。追われるのは乗り手も車体も燃えるような深紅。デカブツの砲塔がゆっくりと上がる。
「援護するぞ!」
「yes, my f*ckin master!」

【続く】

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