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不妊治療をやめるとき (3)

((2)からの続きです)

 もちろん、この作業を通して子どもがいない人生を受け入れていても、この先「もし子どもがいたら」とか、子どもがいないことをさびしいと思うことはきっとあるでしょう。特に、周囲が孫をもつ時期になるとそうです。ですが、その悲しみに、治療を終えた直後のような激しさはなく、あなたの人生や心を破壊する力もなくなっていることでしょう。

 悲しみを抱えて生きていくということは、口で言うほど簡単ではありませんから、今このようにいわれても、そんなきれいごとを、と思われるのではないかと思います。ですが、私がカウンセリングでご一緒した、治療をやめて子どものいない人生を選んでいった方を思うとき、この不妊や不妊治療の経験が、その方の人生にすばらしいものをもたらしているということを本当に感じます。生き生きと自分らしい人生を送っておられる彼女たちのように、もし治療をやめる選択をしても、それは決してネガティブな、あるいは「負けた」ことにはならないのだと信じていただきたいと思っています。

 ちょっと注意していただきたいのですが、今回の記事を読んで、治療をやめることを考える際に、不妊経験をすべて前向きに考えなくてはいけないと思わないでいただきたいと思います。無理に前向きになることがいいことと私は考えていません。後悔や悲しみは持ってはいけないものではなく、悲しみを抱えながらも意味ある人生は送れる、その力はすべての人が持っているのだ、ということが伝わってほしいと思っています。

 あなたなりの不妊治療の終わりに、お手伝いが必要なときには、どうぞカウンセリングルームの門を叩いてください。いつでもお待ちしています。


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