アイキャッチ

ゲームはみんなで遊ぶもの

 ここまで見てきたように「敵が攻撃してくる」というスタイルのシューティングゲームが登場したのは、 世界初のアーケードゲーム『Computer Space』からだったことがわかります。しかし、Computer Spaceの商業的な失敗からわかるように難しいゲームは、まだ一般的なプレイヤーたちには受け入れにくいものだったようです。

 Computer Spaceは当初はひとりで遊べるようにできていましたが、Pongが世界的に成功したことで「ゲームはひとりで遊ぶものではない」という方向へと進むことになります。1972年になるとComputer Spaceも2人用が発売されるようになりました。

 さらに後年、ATARI社はCocktail(カクテル)筐体と呼ばれる、2人のプレイヤーが向かい合わて座れる筐体を多く発売しています。このことが当時のゲームが一人で遊ぶものではなく、2人で、あるいは仲間と何人かで遊ぶことが前提であることを示唆していると言えるのかもしれません。

 ゲームは多人数で遊ぶものだったことを裏付けるのが、1976年に発売された『Cops & Robbers』(ATARI、1976年)だと思います。 Cops & Robbersは横画面のゲームですが、画面の左右端に2車線のラインがあり、コップスチーム2台、ロバーズチームで2台に分かれてお互いに撃ち合うゲームです。刑事モノの映画でカーチェイスしながら銃撃戦を行うシーンがありますが、それをゲーム化したようなものだと言えばわかりやすいでしょうか。

 Cops & Robbersは1名から最大4名まで参加して対戦できることが目玉となっています。黎明期のゲームのほとんどがそうであったように、このゲームも時間切れ=ゲームオーバーでした。もし、相手チームやられてしまっても「よし、次はこうしてやるからな!!」と作戦を立てなおし、ワイワイと楽しめるようになっています。

 また同年に『TANK 8』(1976, Kee Games)という最大8名までが参戦できる戦車ゲームが発売されています。Kee Games社は「TANK」と名のつく一連のゲームを発売していることが、TANKシリーズの人気ぶりをうかがわせます。翌年にはColecoという会社が対戦型戦車ゲームだけを遊べるコンシューマ機『Telstar COMBAT』(1977, Coleco)を販売しています。戦車ゲームの小さなブームがあったと言えるでしょう。「Telstar COMBAT」の凄いところは、アーケード版と同じ操縦桿型コントローラーがついているという本格的な部分です。

 日本では1978年にスペースインベーダーが発売されてから「ゲームはひとりでピコピコ遊ぶもの」という暗いイメージが一般的にありましたが、21世紀前後になると「ゲームは他人とコミュニケーションを取りながら遊ぶもの」というように転換しはじめました。

 「以前から、対戦して遊ぶことができるゲームはいくつも発売されていた」という事実はあれど、ゲームに対するイメージが変わり、広く認識されたのは、1990年代初頭に起きた対戦格闘ゲームによるブームを端にしていると考えることができるでしょうか。

 カプコン社の発売した『ストリートファイター2』(1991年、カプコン)は、「俺より強い奴に会いに行く」というキャッチコピーにしたがって、ゲームの中で世界各地を巡り強い対戦相手と闘っていくゲームでした。しかし、これが現実でも似たような状況を生み出しました。

 それを後押ししたのが、1枚のゲーム基板の映像を2つの筐体へ出力させるという新しいゲームスタイルの提供でした。筐体を向かい合わせる、あるいは横並びにさせて対戦して遊ぶというゲームスタイルがを生み出したのです(*1)。

 1990年代も後半になると、『ポケットモンスター』(1996年、ゲームフリーク)では子供たちが通信対戦を楽しみはじめ、2006年には任天堂社が『Wii』という多人数で遊ぶためのパーティーゲームを前面に押し出してくるなど、ゲームの楽しみ方は大きく転換していたといえるでしょう。

------

*1 1984年、任天堂社はファミコンブームに合わせ、『任天堂VS.システム』(1984年、任天堂)という向かい合わせの画面に座って遊ぶゲーム筐体を発売しています。『テニス』『アイスクライマー』などが遊べました。翌年、テーカン(現テクモ)社が発売した『テーカン・ワールドカップ』(1985年、テーカン)も対戦ゲームの走りと言えるかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?