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多様なPLATOゲーム

 PLATOでは教育向けのプログラムのほかにも、いくつかゲームが作成されています。PLATOで初めてゲームが作成されたのは1960年代末で、リック・ブルームという学生がSpace War!を移植版したものでした。この移植版はSpace War!の最もシンプルなバージョン、つまり「オリジナル版」と呼ばれるものを忠実に移植したものだったようです。

 これを契機に『Avatar』と呼ばれるダンジョンズ・アンド・ドラゴンズを題材にしたものや、Star Trekをマルチプレイヤーに対応させた『Empire』(1973年, Silas Warner/John Daleske)、『Airace』『Airfight』と呼ばれるマルチプレイヤー対応のフライトシミュレータ、タイピングゲーム『to Wordwar』、戦車シミュレータの『Panther』(1977)など、数多くのゲームが作成されていきました。

 PLATOで作成されたこれらのゲームは当時のゲーム業界に多大な影響を与えたとされており、中でもフライトシミュレータのAirfightや戦車シミュレータのPantherは、その後のシミュレーションゲームの先駆けとなったと言います。たとえば、ATARI社はPantherを発展させ、シューティングゲーム『Battle Zone』(1981, Atari)を作成しています。

 Spasimはそのような完成度の高まったAirfightまでのゲームで培かわれた技術を元に作成されたゲームでした。Spasimはゲーム黎明期では類を見ない多人数参加型のマルチプレイヤーゲームだったのです。ひとつのシステムから最大8名が参加可能で、合計4つのシステムを接続することで最大32名まで参加ができたのです。

 ひとつのシステムは惑星に見立てられ「惑星システム」と呼ばれます。これを4つのシステムで接続するので、4惑星間の戦争を行うことになります。プレイヤーはワイヤフレームで描かれた宇宙船に乗り込み、宇宙を飛行しながら光線銃やフォトン・トーピドを使って相手を撃破していきます。詳細な記載は残っていないようですが、どうやらプレイヤーが途中参加が可能だったようです。対戦格闘ゲームで行われる「次々と参加してくる他人と戦う」というゲームシステムが、すでにこの時代に行われていたことは感嘆に値します。

 Spasimはその後も改良されていきました。最初のリリースから4ヵ月後となる1974年7月にリリースされたセカンドバージョンでは、宇宙ステーションが登場し、燃料などのリソース管理が行われるようになりました。このような改良を行うことで、より戦略性を追求したゲームになったのではないかと思います。

 残念ながら、Empire以外のゲームはスクリーンショットなどが残されていないようです。いずれPLATOで作成されたゲームの情報が陽の目を見ることを祈るばかりです。

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