元プロのアマチュア参戦について

2024年(令和5年)に開催されたアマチュア・ビリヤードの試合「第32期 球聖戦(きゅうせいせん)」に元プロ選手が参加したという話を見掛けたので、他のスポーツでは元プロ選手がどのように扱われているのかを調べてみた。

結論としては元プロ選手がアマチュア選手へ戻ることを禁止しているスポーツは存在しない。

プロであり続けたいというプライドの問題はもちろん存在するので、それは自由意志として尊重されるべき考え方である。

しかし、テレビ番組でスポーツ解説者などをしたい場合、アマチュアでなければ勤めることができないなどの社会的な制約も課される。

職業選択の自由を挙げるまでもなく、社会の一員としてのあり方に対し、理不尽な不自由があってはならないものだと解する。

ボクシング

ボクシングの場合は「引退届」および「アマチュア転向・復帰申請書」を所属団体に提出し、承認を得て「アマチュア復帰承認書」が交付される。これで初めてアマチュアへの転向が認められる。

ただし、アマチュアへの転向に際しては承認後に6ヵ月の準備期間が設けられ、すぐにはアマチュアには戻れない。ではその準備期間中には何をするのかというと、アマチュア選手として活動していくための知識などを再度、学習しておくことが求められる。

プロ競技引退後,6か月間の準備期間が設けられています。その期間において,アマチュアボクシングの知識を蓄えることや,練習を行ってください。

『元プロ競技者のアマチュア登録について』より引用

また、プロ選手として優秀な成績を残していても、引退すればアマチュア選手として活動することが認められている。これは第一線から離脱した選手であるという考え方からかもしれない。

野球

野球の場合は退団してアマチュアの資格を得れば、社会人野球での活動が認められている。ただし、アマチュアは商品などを受けとったりPRしたりすることは制限されており、金銭授受も制限される。

ただ、野球関係者の場合は、引退後に指導者・コーチとして後進を育成していく立場に着くことが多い印象を受ける。野球界には、かつて「プロ・アマ規定」が存在していたために、指導者・コーチになることは容易ではなかったようだが、時代が変わるに従って柔軟に対応されるようになった。

ゴルフ

ゴルフの場合、日本アマチュア選手権などの大会出場の申込用紙にアマチュア資格の確認事項が記載されており、規定額面内の金銭や商品の授受は受けるられる。

レッスン動画配信や書籍出版も認められていて、あくまでプロ選手という名目で活動しなければ問題はない。

一方、ノンアマチュア選手としての考え方もあり、公式的な競技に出場しないのであれば額面の規定もないため、一般開催されるような試合にも出場できる。

ゴルフは他のスポーツと異なり、競技選手としてのプロとアマチュアがあり、その他の選手はノンアマチュアとという扱いをしている。したがって、ノンアマチュアがアマチュアになる場合にもアマチュアの要件を満たして復帰しなければならない。

将棋

将棋の場合は「アマ復帰規定」が設けられており、一定の期間を経てアマチュアに復帰し、アマチュア戦に参加できるようになる。アマチュア復帰は段位者と級位者でクールダウン期間に差がある。

サッカー

サッカーの場合もアマチュア転向は認められている。詳細な記述は見つけられていないが、野球やゴルフなどのテレビで放送されるスポーツと同じような規定があるのではないかと推測する。

要約

他にも多様なスポーツは存在するが、ここまでの情報でも十分なので一旦まとめる。

概ね、プロ選手は競技を通じて賞金を獲得したり、物品の提供を受けるたりと、営利活動を目的とした存在である。一方、アマチュア選手はスポーツごとに定義は異なるが、非営利であることが求められる。うち、ゴルフにおいてはノンアマチュアの枠を設け、スポーツ競技者か否かを分類している。

プロ選手からアマチュア選手の転向については、多くのスポーツでは問題視されておらず、如何に納得感のあるクールダウン期間を設定するのかが鍵となっている。

また、プロ選手とアマチュア選手の行き来が容易な理由は、たとえばボクシングではオリンピックへの出場を目指すなど、純粋にそのスポーツと関わりたい気持ちを汲んでいるなどの理由が考えられる。また、生活の事情によってはサラリーマンをしながらスポーツに関わりたいなど、セカンドキャリアを見据えてもいるのではないか。

しかしながら、マイナースポーツのプロ選手は概ね、賞金だけで選手生活を送るのは難しく、サラリーマンではなくともアルバイトなどで生活の糧を得て、軍資金を蓄えなければならないという現状がある。

その点においてはサラリーマンのアマチュア選手とは生活スタイルが似ており、比重をどちらに置くのか、賞金の授受があるのか、という違いのみが見出される。この点については今回の調査対象外だが、話の流れから付記した。

参考資料・参考サイト

・日本ボクシング連盟『元プロ競技者のアマチュア登録について』(2019-05-27 19:11:48版)

・愛媛県高等学校野球連盟『アマチュア問答集』

・INOUE GOLF ACADEMY『アマチュア資格とプロ資格の考え方』(2018-05-24投稿)

・Regina Web「ゴルフの「アマチュア資格」って? プロとの違いや賞金の上限額について教えます!」


・日本将棋連盟『全日本アマチュア将棋名人戦』

・THE ANSWER「Jリーガーから“サラリーマン選手”へ プロ歴17年の小林祐三がアマ転向を決めたワケ」


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