無人島のふたり〜120日以上生きなくちゃ日記〜 山本文緒
私は夫婦共に健康で「死」がリアルに迫ってはいません。
ただ、ここ数年の間、近しい人の死を目の当たりにしていたり、老い、ということを考えたり、以前よりも死については、より深く考えるようになりました。
本とは。
本を読みながら筆者と会話すること。
山本文緒さんは、がんで余命宣告をされてからの生き様をリアルに、時に面白おかしく、この本に残しました。
いまリアルに死へと歩んでいく人がいたら、その共感者にもなれるような、寄り添ってくれるような作品であると思いました。
そして、何か投げ出したいこと、逃げたらダメだけど逃げたいことがあるとき、一緒に向き合っていける共感者ともなれるかと。
自分に近しい者が死に直面していたり、そんな場面のあるようなドラマや小説など、何かの出来事がキッカケで死について考えることってあると思います。
そんな時に、あまり気分が重たくなりすぎると、人の生命や人生というものを真剣に考えぬきたい時に邪魔なノイズにもなります。
思い込み過ぎて自分自身を傷つけたり、次の一歩が出ずに塞ぎ込んだり。
この本は、もっと気楽に、肩の力をぬいて、死について向き合うことができる効果があると感じました。
非日常感はあまりなく、ノンフィクションですが、時々ひきこまれるような言い回しがあって、一つの作品として読めて、さすがプロの作り手だなとも思いました。「無人島のふたり」このタイトルネーミングのセンスも良いなと。