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第五回 群馬のソウルフード松浦パンのタイヨーレン

前橋駅改札前のハースブラウンが姿を消して数年、立ち食いそば屋まで無くなった寂しい駅構内に新しいパン屋がオープンした。
荻野屋が中心なって運営しているの新店舗は、イートイン併設で美味しいコーヒーを飲みながら電車を待つことが出来る。

パンも低価格で味もよく、60円台の小さなパンからサンドイッチまでと種類も豊富だ。昔はエキータの一階にも喫茶スペースがあったのだが、見るも無惨な廃墟と化しているため正直近寄りがたくなってしまった。

運営会社もどこかに消え、公式サイトは閉鎖となり、入り口にはテナント募集中のポスターが剥がれかけたままだ。

高崎駅は松浦パンが無くなり、新たに伊勢崎のグンイチパンが入った。
既に県内の百貨店からも松浦パンは姿を消してしまい、何でも運営しているパンセンターが破産してブランドそのものが無くなったらしい。

◻群馬パンセンター株式会社~破産手続開始決定
 http://www.kensin-gunma.com/news/3028/

群馬のパンと言えば松浦パン、トリアノンマツウラと言えば慣れ親しんだお馴染みのパン屋だった。

群馬のソウルフードと呼ばれたバンズパンを広めたのも、松浦パンだった。
あんパン、クリームパンと並んで例えられるくらいに身近で、アンバターバンズパンやバターバンズ等の変わり種もよく並んでいた。

しかし、当方が最も愛する群馬のソウルフードと言えば、同じトリアノンの「タイヨーレン」である。
県外の方で知っている人はほとんど居ない、料理研究本等を探してみると作り方だけ書いてあるスイスの伝統的なパンがタイヨーレン。

2000年初頭まではトリアノンの定番商品として発売していたのだが、その後は姿を消してしまった幻の食パンだ。

卵と牛乳を贅沢に使い、クルミとレーズンを散りばめた食パン。
高島屋やスズランでチラシの特売品になった時はいつでも行列が出来て、買えないと焼き上がるまで何十分でも待ち続けてまで手にしたい人気商品。

そのままちぎって食べても格別だが、トーストにすると絶品で文字通り舌がとろけてしまいそうである。

サクッとかじればパン本来の甘味と熱せられたレーズンの良い匂いが広がって、クルミのカリカリ感が増していく。

松浦パンの無き後では、完全に失われたパンではあるが一部トリアノンの暖簾分けされた店舗で2017年現在も販売を続けていて、地元スーパーとりせんの菅谷店と群馬町店併設のトリアノンで、あのタイヨーレンは簡単に手に入る。

タイヨーレン以外にも、厚切りのチーズがギッシリ詰まったパンや懐かしのチーズフランスに三色パンまで………。

最初に訪れた時は、数年ぶりのタイヨーレンを発見したあまりの嬉しさに店内で泣きかけてしまい、店員さんに驚かれた。
内緒でサービス券のおまけまでして頂き、思い返すと恥ずかしい限り。
タイヨーレンは、大切なソウルフードで想い出の群馬の味だ。

遠い異国のスイスの地で生まれて、日本の群馬県で今も作り続けられているタイヨーレン。昔は太陽連と言う名前で売られていただろうか?
百貨店にはもう、トリアノンマツウラの名前は無い。
いつかは、暖簾分けされた店舗が幕を閉じてしまう事も有るかもしれない。

けれど、このタイヨーレンの味が他県の方にも広がっていっていけばいいなと願いつつ、自分にとっての究極のソウルフードでこの旅の第一部を終えようと思う。
拙い文章をこれまでご拝読頂き、誠に感謝の限りだ。
また群馬のどこかにて、艦長。

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