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9/8(土)日記

*続けてますよ

ここ数日、日記の書く書く詐欺をしながら疲れすぎて書く体力もなかったり酔いすぎて頭回らなかったりして、数日、というかほぼ1週間書いてなかった。すみません。

しかし私の頭の中で日記は続けてるんです……筋トレやダイエットみたいに数日やらなかったものを貯めて一気に解消する、なんてことは執筆もできないと思うのだが、それでも今は書かないと気が済まない状態までもっていけてるので、この気持ちを何とかキープしたい所存です。
更新こそできてませんが、毎日は書くことで溢れています。

*長野旅行①

人生で初めて、長野県の松本市に行った。
その前に奈良井という、知る人ぞ知る昔の宿場町へ行った。なんともディープなコースで、1時間に1本しかないワンマンのローカル線を使わなければならなかった。

列車の中は駅弁とか軽食を食べられる雰囲気で、リュックを背負った大人のひとり旅らしき人や、地元の高校生などがいたりした。大人たちの多くは新聞や本などを片手に、時折ぼーっと窓の外を眺めているのがなんだかよかった。紙の書籍、というのもよかった。つられて、私は8割くらい読み終えていた燃え殻さんのエッセイ集を読んだ。

私の目の前に座った人、あれは70代だっただろうか、白髪混じりで白いTシャツを着た腹がポンとつき出ている男性だった。その人は紫色の中が見えないビニール袋をひとつだけ持ってきて、座るなりすぐに袋からまずおにぎりを取り出し、窓を見ながら務めて静かに食べはじめた。のりを別で巻いている、三角タイプのおにぎりだったので海苔もパリパリしているはずなんだけれど、そのおじさんの食べ方はまるでパリパリとした乾いた音が聞こえない。なんとなく偏見を持ってしまっていたので、「意外と静かに食べるんだなぁ」と思いながら本を読んでいると、今度は同じビニール袋から菓子パンを取り出し、これもまた務めて静かに頬張っているのを目撃してしまった。今度はチョコがかかったデニッシュ風のパンで、こぶしより少し大きいくらいの丸い塊だった。

これもまた窓の外を見ながら音も立てずに口の中へ入れる。あまりにも静かにおにぎり×菓子パンという食べ盛りの女子高生みたいな食事をするので、なぜか見入ってしまった。

さすがにこのおじさんも満腹だろう、と思うと、今度はなんと、カスタードのケーキを取り出したではないか。表と裏にザクザクの格子柄が入っていて、バナナのように湾曲している、あれだ。これもまた静かに、座る位置的に進行方向とは逆の、どんどん過ぎていく景色を見ながら口にする。

ここまできてようやくお腹が満たされたのか、あの紫のビニール袋から次に新聞が出てきた時は少しほっとしてしまった。読んでいたのが朝日新聞で、もっとほっとした。これが偏った新聞社や下品なスポーツ新聞じゃなくて良かった、と。

そんなことを観察していたら、あっというまに奈良井へ着いた。
一通り歩いてそばを啜り、帰りの電車まで時間があるからと入った喫茶店のマスター(おじさん)、これもちょっと見ものだった。喫茶店は江戸時代から続く長屋を改装したもので、全体的に焦げ茶もしくは真っ黒の店内だった。2階へ続く階段を横から見ると、靴箱のような引き出しがしれっと格納されている。あたりを見回すと、古い洋風のランプや昔のアイロンのディスプレイなどがあり、全体的に、物こそ少ない古物商に見えた。

マスターらしき人が、カウンターにスマホを見ながら座っていた。佇まい的に客だと思っていたのだが、店に入った瞬間に「へい、いらっしゃい!」と元気よく居酒屋的に挨拶してきたので驚いた。「え、これお店の人なの?」と。

ふわふわとしたグレイヘアー、スマホをゆっくり見ながら、椅子を横に座っている。背もたれを脇腹と腕で挟む、高校生の時、クラスの窓側に座っていた子たちが休憩時間にしていたような座り方で座っていたのだ。マスターのマの字の緊張感もなかった。どうやら厨房に立っている女性、おそらくその妻が調理をしているらしい。休憩時間なのかマスターだけはずっとスマホをさわっていた。

すると、マスターがその横に座っていた若い女性の4人組にベラベラと大きな声で話し始めたのだ。

「最近さ〜、お店のInstagramをしてるんだけどさ〜、毎日やってたらDMでメッセージもたくさんくるわけ。それで色々話してたら盛り上がって、『LINEしよう』だなんて言われちゃって。でもねぇ、わざわざ知らない人とLINEするのもちょっとねぇ、面倒くさいじゃない。よくよく話を聞いてみるとさ、怪しい投資とかさせられるんだよ。めんどくさいよねぇ」

一緒に聞いていたはずの4人組の女子たちは、このマスターのめんどくささに気づいたのか、徐々にマスターの一人語りにオーバーリアクションをしなくなって行った。唯一「へぇ〜!」「たしかに、これはすごいですね!」「おもし〜い!」と最後まで言い続けていたのが、そのマスターのすぐに座っていたショートカットの女の子だった。

一緒の卓に座っているはずのグループに「助けてあげなよ……」という悲しさと、若干めんどくさく、その癖ネットのリテラシーだけは高いマスターへの
「騙されてなくて良かった」という安堵が入り混じり、ゆっくりコーヒーを飲む気にもなれなかった。結局1杯だけを早々に飲み干し、次の電車までの1時間を駅の待合室で過ごした。喫茶店としては過去最悪な居心地の場所だった。面白かった。



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