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伝説のせくしい屋

ふふふふふ。ものすごいタイトルでしょう。この言葉ね、私のスマホケースに飾ってあるコラージュのステッカーなんですよ。

顎と首がなだらかな滑り台になった秋元康氏似のおじさんが、斜め上を向いているコラージュ。髪は上からカズレーザーのような金髪を被せられている。そのまま右上に振られている「伝説のせくしい屋」という文字を、口半開きになったまま見つめているという写真。なんせ秋元康のような眼鏡をかけているので目元がわからない。せくしいという文字だけが赤文字に縁取られた派手なピンクでコラージュされており、秋元康似の怪しいおじさんとの違和感がいっそう不協和音を響かせている。
この秋元康似が果たして「せくしい屋」なのかは分からないが、そもそも「せくしい屋」がなんなのかも、「伝説のせくしい屋」がなんの賞賛なのかすらわからないが、コラージュの仕方やこのワーディングのセンスはとりあえずこの上なくシュールで、ブリリアントな一品だというのはわかる。これは趣味でコラージュをしている広島の人にもらった物だけど、こんなにイケてるステッカーは今までに見たことがない。私の青春が終わるその時まで、私はこの伝説のせくしい屋ステッカーを持ち歩きつづけることだろう。

なぜなら私の理想が、まぎれもない伝説のせくしい屋だと気づいてしまったからだ。

ここいらで早く説明しないと皆ソワソワするだろうから、「伝説のせくしい屋」についての見解を語ろうと思う。

前に私、何度かみうらじゅんがなりたい理想の大人だと書きました。それから予備校時代のちょっと変わった講師たちも。

私はああいう人がまさに「伝説のせくしい屋」だと思う。私にとってのせくしいとはつまり、深い教養とクセのある持論をいっぱい持っている人のことだ。何もえろい話しではない。思考力の深さと、それにスパイスのようなユーモアを掛け合わせている人。そういう人を私はせくしいと呼ぶ。私はせくしいになりたい。ちなみ私は女の人で「せくしい」と思ったことは一度もない。

何度書けば気が済むのかと思われそうだけど、私の中での「レジェンドオブせくしい」はやはり、みうらじゅんなのだ。これは間違いない。
まあみうらじゅんはその名の通りガチのセクシー系にも通じている()人なのだけど、みうらじゅんのおもしろさは不快にならないエロい話をする点だけではない。果ては画家、果ては仏像マニア、もうひとつの果ては新しい文化をつくってしまう文化人(?)という、脳内の守備範囲が誰よりも広い点にある。それはきっと好奇心力、おもしろがれる力もあるけれど、まず脳のメモリが莫大にあるということもポイントだ。どんな球を投げても必ずヒット以上で返ってくるスゴさ。私は彼の教養と守備範囲の広さと誰も不快にならないユーモアに日本一の「せくしい」を感じるのだ。私にとって、予備校の講師をもっとレベルを上げた哲学巨人みたいな存在がみうらじゅんだ。そう、みうらじゅんは私にとって現代のポップな哲学者。こう書いてみて、やっぱり私はサピオロマンティックなのかもしれないと思った。サピオロマンティックの意味は興味があればしらべてみてください。

最近、私の中でこの手の「せくしい」人材がまたひとり増えまして。
それがこのおくりバント会長の高山洋平さん。

インタビューの文章を読んで感動した。


またサングラスにややロン毛(アフロ)というテンプレのやばそうな様相をしているのだが、この方実は自身を「プロ営業マン」と謳うくらい、めちゃくちゃ営業ができる人なのだ。実際会社の会長だし、中国で支社を持ったことがあるそうな。しかも三国志とかヒップホップとか、ひたすら中華カルチャーの話で商談を盛り上げたらしい。

みためも、側から見れば高円寺のディープな狭い居酒屋にいそうな正体不明の人に見える。いずくんぞ誰がこの方をいち企業の会長だと思うだろうかいやない。でもそれを許されるだけのたしかな実力がある。その振れ幅が最高にせくしいではないだろあか。

川田十夢さんとのJWAVEのラジオもめちゃくちゃ面白かったなあ。高山さんはひたすら一人で飲んで仲良くなる方法を語っていたっけ。

せくしいの秘訣、それは淡々としたユーモアの存在だ。みうらじゅん同様、高山さんにも真顔でキメてくるユーモアがある。
サングラスで真顔でおもしろいことを言う人ってずるい。ちなみに高山さんはおもしろセーター愛好家でもある。

↑このツイートを私はわざわざブクマまでして定期的に見返している。
よくわからんけどこのシュールさがたまらなく笑えてしまうのだ。何度みても笑える。単純にツボということなんだろうか。

そして副業DJという横断性。外国人の歌う日本語ソングに魅力を見出し、ワールドJポップという独自の名前をつけている。まさにみうらじゅん的せくしいさではないだろうか。このサビの「ヤキソバ〜ヤキソバ〜」が頭から離れなくて今も困っている。それに不健康に光るペヤング。最高にシュールである。

みうらじゅんとこの高山さんと予備校の講師というサンプルが揃ってなんとなくわかってきた。「せくしい」の暫定解はこうだ。

・コンテンツ、歴史、社会あらゆるジャンルでの教養がある
・努力で地道に(しかしそれを苦労とは思わず)いつの間にか人よりも並外れた知識か能力がある
・その割にお高くまとまっておらず、おごらず、むしろ見た目はどちらかと言うと不審者
・職は色々やっていて、あまりにも横断的
・局部集中的な変なこだわりの強さがある
・他の人は気にも留めない何かに並々ならぬ価値を見出し、愛着を持ってそれらを世に広く伝える

今書いていて、そう言えば昔読んだ仏教説話にこういう感じの狂った僧が出てきたような気がしてきた。葬式か法事の最中に急に現れたボロボロのお坊さんが、(みんなはそれを不審者だと思っている)途端に良いことを説き始める、みたいな。わたしはやはり僧に興味があるのか…?
今のは完全に独り言なので無視してください。

そういうわけで、私も「せくしい」になりたくてしょうがない。教養があり、ある分野では極端なこだわりを持ち、ユーモアを欠かさず、変な見た目なのに人からは愛され、そんな気はなくとも常に自分が好きなものを探して増やしているような人。多くの人が見落としてしまう小さなものを見つけ、価値を見出し、言い出しっぺとなって世に広く届ける人。総じて普通じゃない人。
前も書いたけど、これからはその女版を開拓せねばならないのだ。ただしエロスの力を借りずに。女でそれがいないのが不思議すぎる。女がエロスの手段を用いることがあまりにも容易だからこそ、はっきり言って文字通りのセクシーは最終の最終の最終手段なのだ。文字通りのエロは使いたくない。頭と素手で勝負しないといけない。

こいつ何言ってるんだ?と毎度思われているだろうけど、ともかくこの「伝説のせくしい屋」は、私にとってその決意表明とも言えるものなのだ。


どうですか?最高にブリリアントなステッカーではありませんか?
私は伝説のせくしい屋になりたいのです。






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