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8/30(水)日記

*すり抜ける女

どうでもいいけど「すりぬける女」と「すり抜ける女」はまるで雰囲気が違う。前者はどことなくエロスで後者はなんとなく小賢しくて失礼だ。見出しを「すりぬける女」にしようとしたが、字面がなんとなく嫌だったからやめた。

占いという地場においては「あなたは〜〜な人です」という言葉に安心するのに、それ以外の場所、たとえばさして深い話もしていない人に「お前はこういうやつだろ?わたしにはわかる」と言われるのは本当にむかつく。お前におれの何がわかるのか、と言いたくなる。

占いみたいな、もう自分ではどうにもできない超人的・天体学的な観点で決めつけられるのはむしろ快感を覚えるが、そうではない、ふつうの人に自分の何かを決めつけられるのはどうも嫌らしい。決めつけてくる人を気持ちよく裏切りたくなるし、自分も「まだまだこんなもんじゃねぇぞ」という反骨心がめらめらと湧いてくる。

今日、とある人に「心理学的な観点から言うと、あなたの行動は〇〇だ」と言われ、幼稚にもすこしムッとしてしまった。ごめんなさいね。

*おクーポン、ご携帯

永井玲衣さんの『水中の哲学者たち』を読んでいる。
永井さんは、学問的な哲学を研究するというより日常的で答えのない問いを対話形式で参加者と一緒に考えるということをされている。

永井さんは私の10倍くらい言葉に敏感な方で、今日読んでいるパートにも
「『おクーポン』と言われてどきっとした」みたいなことが書かれていた。

「おクーポン」はさすがに笑う。これでは、目の前にいる客より紙切れのクーポンを崇めているようなニュアンスになる。けれどおもしろい。「おクーポン」という言葉の響きもなんだかかわいくてばからしくて、思わず読みながら吹いてしまった。

いやいや〜、なんでも「お〇〇」と言えばいいわけじゃないだろう〜となんとなく思っていたら、それから数時間後に今度は会社で電話をしていた同僚が「〇〇さまの『ご携帯』でよろしかったでしょうか?」と言っているのを聞いた。
さすがに声をあげて笑ってしまった。なんだよ、「ご携帯」って。「お携帯」ではなく「ご携帯」。「ご」にしたのはなぜなんだろう。語感だろうか。

尊敬語はおもしろい。対象は人であるはずなのに、もはやその人が持っている持ち物まで及ぶというのか。確かに、店先で「『お荷物』お預かりします」とか「お車がきております」という言葉はよく聞く。でもさすがにやりすぎなんじゃないだろうか。
他にあるとしたら何が考えられるだろう。「おPC」「おマスク」「おペイペイ」「ごLINE」……あ〜どれも滑稽すぎる。

「おペイペイ」も相当だが、語感的にはやはり「おクーポン」に勝るものはないんじゃないだろうか。口に出すとなんともアホらしくて、笑えてくる。他にもあったら教えてください。やりすぎ尊敬語シリーズ。

*悩ましきプレゼント

こんなことを言うのはアレだが、昔から人へのプレゼント選びが苦手で苦手でしょうがない。どんなに関係性が濃くても、何をあげたら良いかわからなくなってしまうのだ。わからなさすぎて血迷って、落書きをしまくったじゃがりこをあげたりする。JKか。

同年代を見てみると、だいたいは香水かAesopの何かかAirpodsをあげている。でもそれだとなんだか面白くないよなと思いもう一度考えるのだが、なかなか良い案が思いつかない。

プレゼントってなんだか送る側の足元を見られているような気がするし、気を遣わせるので高けりゃいいという訳にもいかない。関係性の濃さと相手の興味をよくよく検討しなければいけない。
欲を言うならばちょっと粋なもの、私にしか思い浮かばないようなものをあげたい。ネット記事でSEOの上位に来るようなものではなく、ちゃんと自分の直感とアイデアに根差したオリジナルなものを渡したい。

中学生のとき。管弦楽部で同じパートだった2個うえの男性の先輩に、何をあげれば良いかわからなさすぎて、結局駄菓子屋で2,000円分のお菓子をビニール袋に詰め込んで渡したことがある。駄菓子は集まると意外にも香りが立つらしく、ぱんぱんに膨らんだビニール袋はすっぱいと甘いが混じったなんとも言えない香りを放っていた。男の先輩からはもちろん困惑した顔で「お。おお…!ありがとう…!」と言われ、それを横で見ていた同じパートの女の先輩も「こいつまじか…」という顔をしていたのが忘れられない。あの時の恥ずかしさ、自分の不器用さへの嫌悪感といったら。

さすがに今はそんな自暴自棄なプレゼントを渡すことも無くなったが、すこし年上の人や何が好きなのかいまいちよくわからない人に渡すプレゼントはいつもドキドキする。

でも今回、個人的にはかなりの傑作だ。これは絶対に喜ぶだろう、という確信がある。いろんな理由で詳しく書けないが、今、人生で初めてと言っていいほどプレゼントを渡すのを楽しみにしている。

喜ぶだろうなぁ、驚くだろうなぁ、あぁ、もうあの人が笑ってる様子が思い浮かぶなぁ……そうか、人はこの感覚がうれしくてプレゼントをあげるのか、と思った。

どきどきの結果はまた後日お伝えします。スベらないといいな。

今日の一曲。
Lampというバンド。
Twitterで「地味で寡作だけど海外でじわじわ聴かれてる」というツイートを見つけ、試しに聴いてみたらなんかよかった。

この『恋人へ』という曲はたった1分16秒で、しかもあえて録音環境を悪くしているのか声がくぐもって聴こえる。けれどそれがなんだか心地良くって、リピートして永遠に聴き続けてしまう。ジャケのなんとも言えない感じもいい。

こういうさりげない、なんでもない感じの曲も好きだ。昔の画質ガビガビ映像にロマンを感じるのと同じように、音質悪めの音も味があってよい。

うつくしけりゃいい、解像度高けりゃいいってものじゃないのよ、人間は。そんな単純な存在だったらとっくの昔に滅びてたと思う。

好きな季節はみじかいもので
気づかないうちにとけだしてゆく



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