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心の全身打撲

大学時代の友達と久しぶりに会った。
意外とすくない同郷の広島出身で、一時期は同じ寮に住んでいたこともある元ルームメイト。お昼ご飯を一緒に食べていたときもあったし、三泊4日でタイ旅行にも行くほど仲が良かった。

久しぶり、と言っても前回会ったのは1年前だ。けれども随分とご無沙汰な感じがするのはコロナ禍以降、大学3年でオンライン講義がメインになってからほとんど会わなくなったからだろう。わたしも近況報告ができる唯一の手段だったインスタをやめたし、彼女は卒業後、関西の大学院に進学した。物理的にも疎遠になっていたのだ。

そんな彼女が大学院を終え、ようやくこの春から就職で東京に戻ってきたという。彼女の方から「会おう」と連絡がきた。心のどこかではお互いにいろんなことが変わっていることを知っているはずなのに、声をかけてくれたのが嬉しかった。

久しぶりに会った彼女は大学時代の頃とはやっぱり変わっていた。ショートヘアにショートパンツ、リュックを背負ってクロスバイクを乗り回していた当時とは違い、ロングスカートにロングヘア、前髪をつくって肩掛けカバンを下げた綺麗なお姉さんになっていた。

一方のわたしは、大学生のときから着ている親譲りのジージャンに祖母譲りのお手製トートバッグを相変わらず持っている。

当時から変わらずよく笑う彼女を目の前にして、近況を聞くのが途端に怖くなってしまった。

なんの仕事をしているの。
会社はどんな雰囲気なの。
どこに住んでいるの。
最近欲しいものはある?

聞かなくともわかっているのだ、友達のことだから。聞かなくともいい会社に入っていて、いい場所に住んで、当たり前のようにいい生活をしていると。

彼女は高校時代にアメリカ留学を経験していたこともあり、英語はペラペラに話せるバイリンガル。教養もある。院では冷戦に興味があって研究したらしい。受験は旧帝大を現役合格したが、ふたたび留学をするためにそちらを蹴り、制度がより整っている早稲田を選んだ。大学時代は国際学生寮の寮長のようなポジションにつき、そこでできた恋人もまた頭がよく、もちろん英語を話せる。大学時代は留学も経験した。

結局、彼女は就職先に外資系の大企業を選んだ
。外資系に進んだのはネームバリューではなく「一刻も早く就活を終わらせたかったから」だという。新卒から高給で、あたらしく東京で借りた部屋は月でふた桁万円する新築だった。

彼女の発言から節々に滲み出てくる頭の回転の速さ、純粋な意味でお金が好きなこと。エリートコースに進む人あるあるの、無自覚さ。皮肉ではなく、やっぱり彼女は彼女だった。良い意味で魅力に磨きがかかっていた。そして、やっぱり素敵な人だなぁ、と心から思った。

大学の頃からまぶしかったけれど、やっぱり今もまぶしい。まぶしくて目が開けられないほどだ。自分とはまったく違うけれど、考え方は似ている。大学の頃からその処理の仕方が全然ちがうのだ。彼女は就活が嫌だからと言って、わたしのように放棄したりしない。その逆手をかしこく取る。今も会うことはもちろん苦じゃないし、彼女のことが好きだ。頭が良くて、飾り気がなくて、自分にも周りにも正直。

それなのに。

久しぶりに会ってからもう数週間が経つのに、なぜだかずっと心が全身打撲したように痛くて苦しい。悲しくて、ずっと心が泣いてる。なんでこんなに痛いんだろう。どうしてこんなにも悲しいんだろう。

何に悲しんでいるのか、何が痛いのか分からない。もうすこし時間が経たないと分からない。でもこの自分の感覚を残しておきたくて、noteを立ち上げた。この気持ちは誰にも邪魔されたくない。誰にも言語化されたくないし、知ってる言葉で片付けたくない。

時が来るのを待とう。とりあえず、ずっと心が痛いことだけを今日ここに書き残しておく。

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