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「3冠」セレッソ大阪アカデミーから感じる“風間効果”とフロンターレとの違い


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大好きな帯広の大会にて


8泊9日で帯広に滞在してクラブユースU-15を取材してきた。この大会は自分が一年間で取材する各大会の中で最も好きで、毎年楽しみにしてるものだ。

まず一つは場所である。北海道の帯広で行われるのだが、気候が良い。いうまでもなく本州より気温は低く湿度も低いため過ごしやすくて、選手や指導者からも評判が良い。

この雲

二つ目に街や地方としての魅力だ。温泉・サウナや自然ならびに食事と、観光客を楽しませる要素が揃っている。特に食事が美味しく、帯広駅周辺の居酒屋はどこへ行っても美味しい。

三つ目は大会のクオリティに対して取材者が少ないことだ。これが一番大きい。

全国大会なので中学年代のトップクラスの選手が集まるのは当然なのだが、48チームという枠の広さゆえ、冬の高円宮杯には出られないけど所属地域ではそこそこ強い街クラブを見られたりする。今回だと関東のクラブ与野や東海のFCV可児あたりか。

まだ世に発見されていない金の卵たちが活躍する姿を見られる機会としてとても貴重なのだが、遠方で経費がかさむ割に原稿の重要がないので黒字化しにくいことや他の大会との兼ね合いもあり、報道するライター達にとっては優先順位が低い。ゆえに、報道陣がいない。

実際、準決勝まで取材をしてたのは自分1人だった。取材要素を独占できるのはとても魅力的である。


意外だったセレッソの優勝

大会を制したのはセレッソ大阪U-15だが、正直に言って大会前の自分の予想にはかすりもしなかった。後々話す風間八宏の息がかかってはいるものの開花には時間を要すると感じていたし、中学年代では色々な意味でその場のちょっとした空気と勢いに呑まれやすく、”ブレずに技術を信じて勝ち続ける”には若さ(“経験の少なさ”とも言える)が邪魔をすると思っていたからだ。

しかし、グループリーグ初戦で横浜FCに0-3の敗戦を喫するも、決勝トーナメントでは接戦をモノにし続けて決勝では初戦で大敗した相手を叩いた。

大会を通じて印象的だったのは、志向するサッカーが色濃く出ていることと、接戦を勝つことで自信がついていった様子である。前述した“その場のちょっとした空気と勢い”を味方につけた形と言って良いだろう。

負けが込めば自分達のサッカーに疑問符も浮かぶし、技術を信じられなくなる。しかし、今大会のセレッソは愚直にやり続けることで勝ち星も拾っていったため、選手たちが試合を重ねるごとに自信をつけていった。これまでなかなか得られなかった”自分たちのサッカーをやり続け、勝ち続ける経験"を短期で取得できた。そうなれば試合中に発揮する技術を堂々と示すことができる。


いわゆる"止める” “蹴る" "運ぶ" "外す" の4つにこだわりひたすらその精度を磨くのが風間八宏的なサッカーだが、今大会のセレッソは特に中央のエリア、ボランチ2枚のところでボールが落ち着くし変に失われることはないことが目立った。出して動いて受け直して…の繰り返しでゴールに迫る。言うまでもなくラフでアバウトなロングボールはない。風間八宏のチームは必然的にクロスも少なくなるのだが、このチームは最前線のCFがフィジカル面で優位性があったため、点で合わせるクロスの場面はそこそこあった。それも一つの武器だったと言える。

そして、何よりも“静か”なのだ。これはフロンターレ時代から感じていたことで、ボールを保持しながら的に触られずうまく押し込んでいると、“破裂音”が少ない。ロングボールがないこともそうだし、競り合いもなければ球際で強くタックルで触られることもないからだ。

決勝のセレッソU-15はまさにそれで、静かに触られず、相手の首を絞めていった。ゆえに「セレッソのペースだな、これは点が入るな」と思ったものだ。そして、その予想が当たった。


“指導者育成”の成果

2021年に風間八宏がセレッソのアカデミー技術委員長に就任して1年半が経ち、U-15、U-18、U-18堺ガールズが日本一を取ったことになる。全国制覇を目的とした強いチーム作りが主題ではないのだが、それでも成果が出たことは賞賛に値するし、明確にこの人事は効果的だった、と言えるだろう。

就任してから今までこの組織を追っており、今大会もその姿を見届けたが、かつて風間さんがトップの監督を率いていたときに“川崎フロンターレがやりきれなかった“部分がセレッソではしっかり落とし込まれてあるように思った。

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