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小説|瑠璃色の瞳(1)

ーーーー死神。

魂の選定者であり、地獄と天国との境で死者の生前の善悪を見定める者。彼らは契約に縛られ、それに逆らう事は許されない。
これは、そんな彼らが望む、儚く強い、願いの物語ーーーー。

ーーーーふぅ、と風は凪ぐ。

太陽が昇りきり、街を眩しく照らすその上空に、突如として一つの影が降り立つ。
雲一つない空には幾らか不自然なほどの黒いローブを身に纏い、顔をフードで覆い隠したその影は、建ち並ぶ街を静かに見下ろしていた。
暫くして、その影がゆっくりと口を開く。

「ーーーーここに、いる」

にたり、と口端を持ち上げ、隣の空間をふわりと撫でる。すると、今まで何もなかった空間にどす黒い塊が出現した。そらはみるみるうちに小さな生物の形を象り、そのままふつりと消える。

次の瞬間には、影も、その場から跡形もなく消えていたーーーー。


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