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2022年7月の記事一覧
小説|ユリテルド村の村長(7)
城を出たリュウ達はすぐに馬を用意した。フィルは国の内部でまだやるべきことがあるとの事だったので、ランシェルとリュウで先にユリテルド村へと向かった。
馬車だと1日かかってしまうのだが、馬で全力疾走した結果、半日で村へ着く事が出来た。
村へ到着すると、クリスが小走りで近寄ってきて2人を出迎えてくれた。彼女はランシェルの後ろに立つ男を見て、一瞬だけ驚いたように目をぱちくりとさせる。
「……まあ。どうし
小説|ユリテルド村の村長(6)
『ーーどうか、元気に育ってね』
「あ……」
そう……だ。夢の中。
夢の中の女の人の声に良く似ている。
……目を見開いてこちらを見ているランシェルを不思議に思ってか、王妃は小首を傾けて心配そうに尋ねる。
「……どうかなさいましたか?」
「あ……いえ。ただ……王妃様の声が、なぜか聞き覚えがあって、それが不思議だったものですから」
それを聞いて一度目をぱちくりさせると、得心がいった表情になった。
小説|ユリテルド村の村長(5)
舞踏会まであと五日となったブラウン王国の城内。城に滞在している貴族達の数も増えてきて、彼らは城と庭園の間にある壁際の廊下で対談を楽しんでいた。
そんな彼らを余所に、庭園をきょろきょろとしながら走る少女が一人。
「ーー……兵の、訓練場って、どこだっけ……」
『ーーいいか。明日は陛下と王妃に謁見する。昼頃に訓練場の前で待ってろ』
……そう言われたのは、昨日の晩だった。それから朝には目が覚めたのは良
小説|ユリテルド村の村長(4)
リュウが案内した離れに着いた時、真っ先に思ったのは"圧巻"。この2文字だけだった。王城もそれは立派なものだったが、ここは他とは次元が違うように思う。湖の水面に浮かぶかの如く建てられたその離宮は、白を基調としたデザインとなっていて、所々に違う色の石を埋め込む事で、色彩に色合いを出している。その石が水に反射するとキラキラと輝き、まさに壮観だった。離宮へは、湖にかかる一本のアーチ状の橋を渡るしかなく、孤
もっとみる小説|ユリテルド村の村長(3)
翌日、従者とランシェルはまだ日の昇らないうちに森を出発した。ブラウン王国まではまだ距離がある。
昼までには到着する心積りでいた。王家には、昨日の夕方頃には着くと連絡していた為、さぞ心配をかけてしまったことだろう。出来るだけ早く着いたほうが良いに違いない、と早々に出発したのである。
森から王城までの道のりは何事もなく進んだ。
「ここで待て」
予定通り昼前に城に到着した2人は、馬車から降りて門の中