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2022年6月の記事一覧
小説|ユリテルド村の村長(2)
パチ……パチ……。
ランシェルの目が覚めると、目の前にオレンジ色に光る炎が見えた。横に視線をずらすと、若い青年が木に寄りかかりながらこちらを見ていた。
「……起きたか?」
「………………」
青年は、闇に呑まれてしまいそうなほど真っ黒な髪色をしていた。
少し会話をすると、この青年が先程の従者だということが分かってきた。
彼はずっとフードを被っていたので、顔まで認識することが出来なかったのだ。
小説|ユリテルド村の村長(1)
ーーどうか、元気に育ってね。
ある村の一角にある大きな家の中で少女は目覚める。
最近見るようになった、女の人の夢を思い出しながら。
とは言っても、夢の中の女性の顔は知らない。
誰かに手を引かれながら走る少女の後ろから、幾度となく聞こえる小さな声。
その正体を知りたくて後ろを振り向こうとすると目が覚める。
……その繰り返しだった。
少女の名は、ランシェル・ブランジェ。
ブラウン王国、スティナ皇国