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小説|不思議の国のカギ

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ーーこれは、不思議の国の"カギ"を探すアリスと不思議の国の住人達との物語ーー
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2022年3月の記事一覧

小説|不思議の国のカギ(13)

小説|不思議の国のカギ(13)

ーーそれは10年ほど前の話。
白ウサギは『鍵』を止めるため、アリスの様子を探りに人間世界にやって来た。
耳と尻尾は巧妙に隠し、人間に紛れ込む。
着いたのは街外れの山奥。本当に人が住んでいるのかも不思議なその場所に、ぽつんと一軒家が建っていた。
白ウサギがその家に近付こうとした、その時。
「!!」
『鍵』が白ウサギの行動に気付いた。
急な異空間からの攻撃に対処しきれず、白ウサギは数十メートルほど後ろ

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小説|不思議の国のカギ(12)

小説|不思議の国のカギ(12)

翌日。
太陽の強い日差しが不思議の国を照らす中、3人は死の森の中央部の川辺に立っていた。
アリスの顔が引きつる。
「…………それ、本気で言ってるの?」
「………………」
それはほんの数分前のこと。
その川は横幅十メートルになるかという、とても大きな川なのだが、白ウサギはそれを飛び越えて渡ると言い出した。
三月ウサギも当然そのつもりだったらしく、準備運動を始めている。
そのため、アリスが三月ウサギに

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小説|不思議の国のカギ(11)

小説|不思議の国のカギ(11)

「ーー大丈夫だ。あいつは死ねない」
「え……」
アリスは白ウサギの言葉に疑問を持った。
『死な』ないではなく『死ね』ない……?
「どういう……こと…………?」
白ウサギはアリスの方を向いた。その瞳にアリスが映る。
「帽子屋だけじゃない。この不思議の国の住人は全て……死んでもまた、甦る」
「!!」
不思議の国の住人は、その生を終えると再びハートの女王の薔薇園から甦るのだという。
名前や見た目はそのま

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小説|不思議の国のカギ(10)

小説|不思議の国のカギ(10)

しばらく走った所で、アリスは足を止めた。目の前には小さな扉がある。
アリスは、その扉をゆっくりと開けてみた。
「……違う」
扉が閉まると、アリスは再び歩き出した。『鍵』が見つかるまで、これを永遠と続けていかなくてはならないのか。
それを考えると、気が遠くなった。
「でも、やらなきゃ」
アリスは自分の頬を叩き、気合いを入れる。
白ウサギ達に助けてもらうだけじゃダメなんだ。自分が決めた事なんだから、自

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