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小説|不思議の国のカギ

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ーーこれは、不思議の国の"カギ"を探すアリスと不思議の国の住人達との物語ーー
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2022年2月の記事一覧

小説|不思議の国のカギ(9)

小説|不思議の国のカギ(9)

それが全ての始まり。これは、アリスと不思議の国の物語ーー。
「『アリスも、初めは普通の少女だったんだ。不思議な事が大好きで、この国の住人とも仲良く暮らしてた』」
彼女と特に仲が良かったのは、ハートの女王だった。2人はいつも街に繰り出して遊んでいた。赤い薔薇が好きなハートの女王。城の庭園に白い薔薇を植えてしまって困り果てていたハートの兵士達に、アリスは優しく声をかけた。
ーー大丈夫。ペンキで赤く染め

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小説|不思議の国のカギ(8)

小説|不思議の国のカギ(8)

アリスとハートのジャックは、先程歩いた廊下をゆっくりと戻っていく。その途中、庭に赤い花が咲いているのに気付いた。
あれは……ーー。
「あれは元は白い薔薇だったのですよ」
「なぜ、赤く染まっているの?」
「貴女の前の"アリス"が、陛下が赤が好きだと聞いて、城の兵士と共に、ペンキで白い薔薇を赤く染めたのです」
アリスは口をつぐんだ。ハートのジャックは続ける。
「……『アリス』は陛下の全てだったのです」

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小説|不思議の国のカギ(7)

小説|不思議の国のカギ(7)

「ん……」
誰かに呼ばれた気がして、アリスは目覚める。辺りを見渡すと、一面が花畑だった。不思議の国ではないーー直感でそう思った。
「……ここは…………?」
「ここは『鏡の国』だよ、アリス」
後ろから声がした。
慌てて振り向くと、双子の小さな少年達が、2人仲良く手を繋いでアリスを眺めていた。見た目は5、6歳程度に見える。
「鏡の国って?」
アリスが疑問を投げ掛けると、2人は顔を見合わせて笑う。
「鏡

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小説|不思議の国のカギ(6)

小説|不思議の国のカギ(6)

あれから数日が経った。
三月ウサギの傷も塞がり、あとは体調の回復を待つだけなのだが、白ウサギの提案で街の散策に出掛ける事になった。
今日は『鍵』の気配がないから、アリス一人で外出しても問題ない、らしい。
街の中央部に入ると、人々の賑やかな声が充満していて、楽しそうな雰囲気が伝わってきた。街に響く愉快な音楽や香ばしいパンの香りも、アリスにとっては全てが新鮮だった。
「お嬢さん、お一つどうだい?」

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