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博物館へ行こう#2「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」

レンタル学芸員のはくらくです。何件かお問い合わせはあるものの、レンタルまではなかなか行きつきません。やはり、ところどころに感じるネット弁慶しぐさがいけないのでしょうか……(ちなみにレンタル学芸員という活動のごあんないはこちらから読むことができます)

今回来訪した館

名称:豊島区立トキワ荘マンガミュージアム
区別:公立・その他(歴史・文学・美術)
住所:〒171-0052 東京都豊島区南長崎3丁目9−22
アクセス:都営大江戸線「落合南長崎駅」A2出口より徒歩5分
ウェブサイト:https://tokiwasomm.jp/guide/access.php

なお、前回の博物館の探訪記録「博物館へ行こう!」#1では、「豊島区立郷土資料館」を見学してきました。前編・後編に分けての記事でしたが、第2回の記事の最後の謎の物体、みなさんなんだかわかりましたか?

正解は害虫を捕らえるトラップです。捕らえるといっても、駆除を目的としたものではなく、展示室等にどれくらい文化財を損する害虫がいるのか確認するためのものです。ちなみに、塗りつぶしたところには「IPM(総合的有害生物管理)の一環で環境調査を行っています」と書かれていました。虫を殺すあるいは虫が忌避する薬品を用いるだけではなく、害虫が侵入しづらい環境を構築するなど、ひとつの方法に頼らない害虫対策のことです(IPMについては、あまり詳しくないのでこれ以上は書けません。誰か教えてください。勉強します)。

害虫調査の罠

日本のマンガの聖地・トキワ荘

さて、この日はハシゴで博物館にいってきました。池袋から歩くこと30分、「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」に到着しました。トキワ荘は、昭和27年に建築されたアパートで、手塚治虫や石ノ森章太郎など、その時期の日本を代表する作家が日々を過ごし、創作活動をしていたそうです。「マンガミュージアム」は、そんなトキワ荘の様子を再現した展示施設でした。


看板も再現

外観もトキワ荘を模して作られているとのことでした。公園のなかには、当時の電話ボックスも再現されています。さっそく中に入ってみましょう!

当時の雰囲気を再現した部屋を訪ねて歩く

館内では2階が常設展示、1階が企画展示や管理空間になっています。順路は2階からのようですので、さっそく上がっていきます。ちょうど同じタイミングで来館されていた方とご案内をしていただいている職員の方が階段について話をしていました。「狭く感じると思いますが、これでも当時ののものよりは広くしてあります」とのこと。このあたりは、消防法との兼ね合いでしょうね。文化財建造物などの場合、適用除外が受けられるはずですが、このミュージアムの場合対象にならないでしょうね。

そんなわけで2階です。2階はアパートの部屋を模した作りになっており、4畳半くらいの広さの小さな展示室が連続しているイメージです。写真撮影ができるところには表示があります。

よこたとくおさんの部屋の再現

テーマ性のある博物館と地域

再現をしている部屋に住んでいた漫画家さんに関する展示が中心ですが、トキワ荘のあったこの豊島区椎名町(現在の南長崎)の歴史も紹介しています。トキワ荘のようなテーマが限定された博物館の展示の一部として、その地域の歴史を紹介する構成は何度か目にしたことがあります。

思いつく限りですと、この館と同様に主にマンガを取り扱っている「京都国際マンガミュージアム」(京都府京都市)では、元小学校の校舎を利用していることから小学校の歴史についても紹介がされていたはずです。

似たような事例をもう1つ。港区郷土歴史館(東京都港区)は、旧公衆衛生院という指定文化財を活用した博物館などの複合施設ですが、建造物に関する解説も多く行われていました。喫茶店も入っており、その一角では港区の学校に関する展示が行われていたように記憶しています。

さて、本題に戻りましょう。私立の館ならいざしらず、やはり公立館でテーマ性の強い館を作る場合には、こういう取り組みが必要になってくると思います。なぜその土地に館を作るのか、その地区にとって博物館とはどんな存在なのか。そのあたりの問題に関わってくると思います。

この館のウェブサイトにもありましたが、「昭和20〜30年代のマンガ家たちの生活を垣間見る」ということで、身近な暮らしの道具が再現されて展示されていました。こういった「身辺卑近の道具」(byアチック・ミューゼアム)は、自分自身の研究対象でもあるので面白かったです。

共同炊事場の再現

意外に凝った企画展示室

さて、1階に降りていきます。1階には、企画展示室のほかにトキワ荘ゆかりのマンガ家の作品がディスプレイされている「マンガラウンジ」やミュージアムショップがあります。

入り口は自動ドアでした

わたしがいったときは、特別企画展「よつばと!原画展」が開催されていました。名前は聞いたことがありますが、どんな漫画なのかまったく知りません。ただ原画を眺めるのは面白かったです。点と線との集まりでマンガができているんだなー、と当たり前のことを思いながら、見学していました。企画展示室もそれほど広くないとはいえ、奥にはウォールケースがあります

モノがたくさん並んでいると楽しい病にかかっています

今回の展示では、作画に用いる参考資料としてのモノが並べられていました。マンガをテーマにした館だということもあり、基本的には壁面や移動式の壁を使った展示が多いんでしょうが、モノも並べることができる構造にはなっているようです。ちなみにケースの左隅にある四角い機械は、デジタル温湿度計です。「おんどとり」という製品でUSB接続などで、データを引っこ抜ける仕組みです。

左のアンテナのようなところで計測している

ちなみにアナログ式の温湿度計もありました。ちょっと面白かったのは、壁に取り付けた展示ケース。軽量物だから成り立つものだとはいえ、備え付けではなく企画展でこういうものを作るのは珍しいなぁと見ておりました。重さ、どれくらいまで行けるんでしょう。

作家さんの利用している道具を展示
正直「え、これで強度出るの?」って思いました

常設展示を見ているときから気になっていたのは、展示業者。丹青社か乃村工藝社のどちらかかなーと思っておりましたが、丹青社だったようです。館が設置された経緯の文章に書かれておりました。

見学させていただいたあと、建物を出たところでご案内の方に「トキワ荘通りお休み処」という商店街のなかにある施設をご紹介いただきました。トキワ荘がもともとあった場所もその近くとのことで、そちらにも足を伸ばしてみることにしました。ということで、次回はそちらのレポートを記事にする予定です。実はこの小さな散策が、博物館論的にも非常に面白い経験でした。キーワードは「地域の博物館化と拠点施設整備」です。お楽しみに!

注:noteの記事に掲載している写真は、毎回スタッフの方に「SNSなどに掲載して良いですか?」と確認した上で掲載しています。念のため。