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博物館へ行こう!#1「豊島区立郷土資料館」②

レンタル学芸員のはくらくです。博物館へ行こう!第1回「豊島区立郷土資料館」の後編になります。後編では企画展示室についてです。常設説展示室について書いた前編は、下記からご覧ください!

さて、前編はコンパクトかつ読ませる展示室だった常設展示室について書いてみました。後編の企画展示室は、常設展示室に隣り合う部屋です。広さは常設展示室の3分の2くらいでしょうか。わたしが訪ねた時には、令和5年(2023)度収蔵資料展「関東大震災100年、新着資料展」を行っていました。このタイトルは正直少しわかりにくいと思うのですが、「関東大震災100年」と「新着資料展」という2つのミニ展示を一緒に開催している、という感じでした。

画面右側が関東大震災100年展

「関東大震災100年」は絵葉書や雑誌・冊子類を中心に豊島区における被害について紹介するものでした。ご興味のある方はぜひ観に行っていただくことにいたしまして、今回は「新着資料展」を中心に紹介します。

わたしがこちらの展示を紹介することには、意味があります。この「新着資料展」のリード文(展示にあたってのごあいさつ文)に、博物館にとって重要なことが書かれていたからなんですね。それは下記の文章です。

昨年度開催した区制90周年特別展「豊島大博覧会」の会期中に、見学者や区民(元区民を含む)の方から、資料の寄贈の相談が多くありました。当館では「豊島区立郷土資料館資料収集管理要綱」に基づき、資料調査を行い、収集基準と保存状態、活用方法等を検討した上で、寄贈の手続きを行っています。

令和5年(2023)度収蔵資料展「関東大震災100年、新着資料展」展示パネルより

わたしが良いなと思ったのは、次の3点です。

  1. 展示をきっかけとした資料収集

  2. ルールに基づく資料収集

  3. 博物館の仕組みの紹介

1 展示をきっかけとした資料収集

豊島区は昨年でできてから90周年だったそうです(実はわたしも別件で少しだけ関係事業にお邪魔しました)。その時に行った特別展の内容はわかりませんが、おそらく区制施行から今に至るまで、豊島区の歩みを資料とともに紹介したのではないでしょうか。その展示を観た人から寄贈のお申し出が複数あったことが紹介されています。おそらく「こういうものが資料館の資料になるんだ!」ということに気づいた区民の方々が、「実はうちにもこんなものがあるんだけど……」と言って、ご相談にいらしたということかと思います。実はこれ、博物館では珍しいことではないと思います。同様の話はちらほら聞きますし、わたし自身も「うちにもあるんだよ!」と声をかけられたこともあったような気がします。展示の性質から行って館蔵資料を中心にした特別展だったと思われますが、その展示は区民の方に「自分が持っているものが、豊島区の歴史を語るような資料になるかもしれない」という事実を気づかせるような展示だった、ということだと思います。博物館は資料(モノ)を中心に、様々な活動を展開しています。そのはじめの一歩が資料の収集です。一方、展示は最終的なアウトプットの方法のひとつです。展示が、資料の収集につながるというサイクルは、わたしは良い循環なんだろうと思っております。

2 展示をきっかけとした資料収集

この館では「要綱」に従って、資料の収集が進められていることが明記されています。これ、とっても重要なことです。おそらく多くの館が大なり小なり資料の収集方針を持っていると思われますが、明示して紹介するくらいですから、おそらくかなりきちんとした要綱だと思われます。

博物館にとって、資料とはすべての活動の源泉です。とはいえ、何でもかんでも集めるわけにはいきません。なぜなら博物館の持つ経営資源には限りがあるからです。よく話題になるのは収蔵庫の容量です。基本的に博物館では収集した資料を廃棄することはありません。その役割が続く限り、資料は増える一方です。当然、それらの資料を物理的に保管し続けることにもコストが発生しています。

「収蔵庫はいっぱい” 地方博物館は使命を果たせるか
資料をどう保管するか課題を抱えている博物館も少なくありません。前述の、地域との連携を進めている平塚市博物館では、地域住民の代替わりや終活などに伴い、年間、数百点の資料が寄贈されています」

場所だけではありません。資料を収集し、整理し、情報を蓄積していく仕事をする人が必要です。良いモノがあれば、それだけで良い展示ができるわけではありません。また、一般的に私たちにとって、博物館は展示を観に行く場所であり、目にする機会が多い故に博物館=展示という考えになってしまうことが多いと思います。ですが、実際には収集からはじまり、さまざまな作業を経て、わたしたちの目の前に資料として展示されているのです。その作業を行うには、十分な人と時間とが必要です。

当然のことではありますが、公立館であれば、そのコストは税金として住民が負担しています。もちろん、将来のためにはたくさんの資料を収集したい。その気持ちはありますが、わたしは毎回コストのことも頭の隅に置きながら、判断をしています。

3 博物館の仕組みの紹介

わたしが特に感銘を受けるのは、きちんと展示の裏側にある作業、それも博物館のキモといってもいい、資料の収集について触れていることでした。

わたしはこれからの博物館にとって大事なことは、自分たちの活動をきちんと目にみえる形で紹介していくことだと思っています。博物館に関するニュースを目にするとき、だいたいが明るいニュースではありません。また、そこにつくコメントに「もう少し館の側の事情も想像してもらえるとな……」と思うことも正直あります。

これから博物館が生き残っていくためには、多様な評価軸を持ち、自らの活動のわかりにくい部分も含めて発信し、博物館のミカタ(博物館の活動に関わる人)を増やすことが必要だと考えています。この活動とその一環(のつもり)です。

その点で収集という博物館活動のはじまりについて触れたこの展示を素敵だなと思ったわけです。

長くなってしまいましたが、10月8日まで実施しているそうですので、気になる方はぜひ足を運んでみてください。

あ、あと展示室でこんなものを見つけました! みなさまはなんだかわかりますか? そのうち答え合わせをしたいと思います。

灰色のところに答えが書いてありました