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第9章 「MOTHER 」魔女の奇異な人生

「 母の思うようにはなりませぬ 」

小さい頃からお花屋さんになりたい。と思っていたけど、小学生頃には「あれ?!お花屋さんになりたいのは,お母さんじゃないか?!」と気付いてしまった。親は、子供に自分の夢を被せてくるものだ。それも、すごく自然にゆっくりとじわじわと入れてくるから、意外と多くの人が自分で決めているようで、知らず知らずに親の希望や、夢と同化して、まるで自分の意志であるように生きてしまっている人も多いんではないかと思う。

何らかで自分というものを知った人間、或いは、反抗期や、親に呆れたりして、親離れした人やらは、親を一人の人間として客観的に見ることができたりして、自分の道を歩み始めるけど、以外と親子の共依存は現実的に多くある。そういう人生もあるんだろうけど、そればっかりやっていると人生の殆どが親子関係だけで終了してしまう。
魔女的には、すごい倍率でこの地球に生まれてきて、誰もが唯一無二の存在だとすると、、、。自分という生き物を追求、探求する旅に皆んな地球に出かけて来ているわけであり、それなのにいつも「お母さんお父さん同伴で〜す!!」みたいなのって勿体ないなぁ〜。。。
そんな風に思うのです。

「可愛い子には旅させろ」ってね

母親の愛って、ほんとこれに尽きる。我が子の生命力を信じるのが親の役割。そう思います。特に、母親は自分の身体から産み出してるわけで、考えたらすごい事です。細胞レベルから自分の身体の中で生命が育っていくことを体感したならば、もう産まれてきた後は、とにかく子供の邪魔をしちゃいけない。だって子供は皆んな、ものすごい能力を持ってきているから、自分で勝手に道を行くものですから信じきって見守るのが親の役割。親が、手取り足取りすればするほど子供の能力は奪われていき、面白さはうんと無くなる。

そんなんで、魔女は反抗期がめちゃめちゃ長かったのと、学校の先生や大人の誘導するような言い方に非常に敏感だったから、母や大人の思うようにはならず、いつからか誰にも相談することなく常に事後報告。いつの間にか、そんな風に仕上がってしまっていた。そして、魔女は美容の専門学校へ進みました。

「 友人たちと突然のお別れ 」

美容学校2年目、19歳の時。この一年で魔女の人生は大きく変わっていった。
始まりは春。幼馴染の女の子が大学へ通学中に、通過中の快速の電車に当たってしまうという事故で亡くなった。彼女は、九九を覚えられず「なんでこんなこと誰が決めたの?」という私に「決まってるから、覚えればいいだけだよ」そう諭して、根気強く私に九九を教えてくれた人だった。

暫くして夏になり、美容学校の実技テストがあり魔女は、仲良しの男の子とトップを争っていた。「明日のテスト負けないよ〜!!負けた方がアイスおごりね」と言いながら彼と別れた。翌日、学校へ行ったら彼が来ていない。当時の美容学校は、何となく来てる子か、美容に対してすごい熱い情熱を持った子か分かれていた。彼は、後者で一度も学校を休んだことがなく、常に魔女とライバル関係にあった。そんな彼だったから「珍しいね。どうしたんだろう?」と皆んな心配していた。

「彼がいないと張り合いないな〜。どっちみちアイスおごってもぅらおう」と私は思いながら、余裕でテストを終えた。しばらくしてホームルームが始まると、先生が涙をこらえながら「美原君が、今朝亡くなリました。」と。。。彼が昨夜、夜中まで実技の練習をしていたのは、お母さんが確認していたそうで、珍しく朝になっても起きてこなかったから、起こしに行ったら既に亡くなっていたそうだ。心臓発作だろうとのことだった。数日後、夏の暑い中、先生と友人代表数人とお葬式に参列した。蝉がうるさいくらい鳴いていたお葬式だった。

それから冬になり、高校の同級生が原チャリの事故で即死した。彼女は、とっても明るく誰にも優しい人気者だった。看護の道に進み、その道がぴったりな子だった。お父さんが早くに亡くなっていたから、学費もかかるからとバイトしながら勉強も頑張っていて、その日は遅くまでのバイトの帰り道だったそうだ。寒い日で路面が凍っていて、現チャリで止まっているトラックにぶつかったと聞いた。
お葬式に行くと、春に亡くなった幼馴染もそうだったけど、二人とも来年の成人式に着る予定だった着物を着て、綺麗にお化粧して布団に寝ていた。

その冬にやってきたお別れは中学生の時の友人だった。彼女は、風邪をひいていたらしく、嘔吐したものが詰まり救急車を呼んだけど、たまたまその日は珍しく雪が積もり救急車が到着するのに時間がかかり、間に合わなかった。。。そう後から聞いた。

お参りにお家に行ったとき、子どもが先に逝ってしまったお母さんたちの悲しみが、どうにも悲しくて苦しくてそれが一番切なかった。そしてきっと、友人たちもその様子を見ているだろうに。。。

一年間に、4人の友人が死んでしまった。

魔女は、もう理解を超える事実についていけなくなっていた。
「自分は、もしかしたら死神?」「次は私の番?」一瞬そう思ったこともある。幼馴染、中学、高校、専門学校。「どうして?」死んだおじいちゃんや、神さまに毎日訪ねてみた。
友達が次々と亡くなっていく現実。だいぶ異常事態であることは間違いない。それでも、不思議と気持ち悪さや怖さはどこにもなかった。おじいちゃんの時と同じように、亡くなった友人たちに「おはよう。もうすぐ卒業だよ」とか普通に妄想の世界で話をしていた。

事実は奇なりというけど、おかしいでしょう。。。
この一年の間に起こったことをずっと毎日毎日考えていたけど、「何も分からない。。。」ということが分かった。
でも、生きたかったろうな。。。
少なくとも、この4人は生きたかっただろうな。そう思った。

「無条件の愛のシャワー」

分からないことが分かった後、今まで生きてきて教えてもらったこと以外に、もっと壮大な世界があって、その世界のことをもっと知りたいと強く思った。
「誰に教わったらいいんだろう?」周りに、そういう事を教えてくれる人はいなかった。気丈に冷静に呑気にいたけど、時間が経ち、知らず知らずのうちにやり場のない哀しみが自分を粉々にしそうになっていた。
誰にも胸の内を話すこともなかったからか、何かが限界に達していた。

そんな時、
「大丈夫。大丈夫。必ず導いてくれるから」

ふと、そういうエネルギーがシャワーのように魔女に注いできた。その時、最愛のおじいちゃんが死んだ時、どうしていいか分からなくなった魔女に、カラスや精霊たちから寄り添ってくれて、色々な事を教えてくれた感覚を想い出した。
そのエネルギーのシャワーは、その時は分からなかったけど、今なら「無条件の愛」という言葉がぴったりかもしれない。全てを許してもらい細胞という細胞が癒されていく。バラバラになったカラダと、はち切れそうな哀しみの細胞が溶けていく。
ものすごい癒しを不意に受けた魔女は、抱えていた哀しみを、全部洗い流してもらったように感じた。言葉にならない想いが涙となって溢れ解け出ていった。

第10章へ つづく  


母 mother・・・動物のお母さんは、わが子が生き抜いていけるように時に厳しく命を見定め突き放す。生き物は、愛情がないと生きられないようになっている。スキンシップをたくさんして、愛のシャワーをたくさん浴びて、それだけで子供はすくすくと育つのだろう。ただただ命はそういうふうに繋がっていくんだろう。


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