昨季の振り返りとちばぎんカップ柏戦

 お久しぶりです。こんにちは、私です。
 小林体制1年目の昨シーズンは6位でフィニッシュ。J1昇格プレーオフに進出するもヴェルディに敗れ、昇格を逃しました。
 前半戦は内容的には相手を上回るもなかなか勝ち切れず、8戦未勝利の苦しい時期もありました。一時は降格圏まで順位を落とし、アウェイ藤枝の試合は本当にどん底でした。
 しかし、後半戦に入ると調子を上げ終盤はクラブ最多タイ記録となる7連勝を達成。チームの調子に合わせて観客動員も上がり、最終節長崎戦は15000名を超える入場者数を記録しました。チームの最大目標であるJ1昇格は逃してしまいましたが、後半戦のインパクトを考えると2023シーズンはポジティブに捉えても良いのではないでしょうか。
 そして、小林体制2年目となり期待される今シーズン。昨シーズン後半戦のインパクトと補強の充実度から昇格候補として注目を集めています。ただ、今シーズンは対策される側となり、そう簡単にはいかないでしょう。昨シーズン積み上げてきたベースをさらに強固なものにして、昨シーズンからあるチームの課題を解消させ、相手の対策を上回っていかなければいけません。

・昨シーズンの振り返り

 リーグ成績 6位 勝点67 19勝10分13敗 得点61 失点53 +8
 昨シーズンは前半戦勝てない時期が続き、一時は降格圏にまで落ちました。しかし、後半戦は調子を上げてクラブ最多タイ記録となる7連勝を達成。一気に昇格争いに加わりました。プレーオフで敗れ、目標であったJ1昇格は逃してしまいましたが、次のシーズン(今シーズン)に期待の持てるシーズンになりました。

①苦しい前半戦

前半戦 17位 勝点24 6勝6分9敗 得点19 失点28 -9

前半戦の主なスタメン(攻撃時の立ち位置)
 

 前半戦は不安定な戦いが続き、序盤は8戦未勝利。その後連勝を達成する時期もありましたが、なかなか勝点を積むことができず、前半戦を17位で折り返しました。

前半戦のオフェンス面
 小林監督の志向するサッカーはまず背後を狙うこと。前線の選手にラインブレークの動きをさせて積極的に背後を突くことを求めました。

背後へのロングボールが繋がってチャンスが作れるなら効率的ですし、この狙いは合理的だと思います。ただ、背後を狙いすぎていて前半戦はロングボールを蹴るシンプルすぎる攻撃が多くなってしまい、簡単にボールを失ってしまうシーンが少なくなかった。また、ポジションが整っていない状況でロングボールを蹴ってしまい、セカンド回収できないシーンも多かった印象です。背後が空いていて配置が整っているならばロングボール、そうでないのなら後方からゆっくりと繋いでいく。こういった判断があまり上手くいかなかったことで相手ボールになりカウンターを受けてしまう場面もあってここは前半戦の課題であったと思います。
 アンカーの立ち位置に関しては尹体制に比べるとかなり改善しました。

 アンカーの選手が相手2トップの間かつ背後に立つことでCBへのプレスを軽減させ、相手2トップは間を通されることを警戒するため2トップ間が絞り、2トップの脇からボールを持ち出しやすくなります。尹体制ではこの立ち位置をボランチが取れておらず、うまく繋ぐことができませんでしたが、小林体制になりこれが改善。尹体制よりも攻撃時の立ち位置が整理され、ボール保持の質が上がりました。
 ただ、立ち位置は整理されてきたものの同サイドに固執してしまう攻撃が多かったように思います。同サイドが詰まっているのにも関わらず、同サイドのスペースがないところへとボールを送ってしまい、ボールロストをしてしまうことが多く、前半戦はもっと揺さぶるということをしなければいけませんでした。

 揺さぶって空いているスペースを使って前進をしていくことで同サイドをゴリ押しするよりも難易度は下がるはず。こうした同サイドへの固執により時間とスペースがない状態でのプレーを迫られ、シュートやパス、クロスなどの精度が落ちてしまい、ボールロストしてしまうことが多かったように思います。

ハイプレスと3バック脇
 
尹監督の頃のサッカーとは違い、小林監督はハイプレスを志向し、高い位置でボールを奪うということを狙いました。実際に序盤戦はゴールの起点となる高い位置でのボール奪取が多かったように思います。
 例えば、第2節の山形戦の小森の先制ゴールは相手陣内でボールを奪って、速攻で決めたゴールでした。

 中切り外嵌めハイプレスによって大輔が回収。大輔のクリアが山形の選手に渡りますが、横パスを小林がインターセプトして呉屋に縦パス。これを呉屋がワンタッチで小森に落とし、小森がそのままドリブルで運んでゴールを決めました。
 また、その次の群馬戦も速いトランジションからハイプレスを発動させ、ゴールを奪っています。

 相手ボールになると素早いトランジションで寄せに行き、チーム全体で連動して中切り外嵌めのハイプレスができていました。これがチームのストロングとなっていて、このハイプレスが起点となって得点を取ることもできていました。
 ただ、このハイプレス戦術はチームのウィークポイントでもありました。
 ハイプレスが嵌らず、プレス回避をされてしまうと一気にピンチに陥ることが多く、相手に少ない決定機をモノにされてしまうことがとても多かった。
 例えば、ホーム山形戦のイサカに決められたゴールはボールロストからプレスをかけに行くものの嵌らず、サイドの広大なスペースを使われて決められたものでした。
 序盤戦のジェフは3バックの脇のスペースを使われることが多く、ハイプレスでSBやWBが空けたサイドのスペースがウィークポイントとなっていました。実際にホーム群馬戦ではここをよく狙われ、苦戦を強いられました。

 特にスピード勝負になると分の悪い大輔のところがよく狙われ、ここから崩れてしまうことが前半戦は多かったように感じます。一時期、サポーターの間では大輔を使い続けることに対して批判的な意見も上がっていました。確かにこの時の大輔のパフォーマンスは良くはなかったですが、単純に前年に長い期間離脱していたことによってコンディションが悪かったのかなと思います。
 前半戦はハイプレスというストロングポイントがあり、ここから多くのチャンスを生み出していた半面、プレスで釣り出た背後を使われ、チャンスを作られるシーンも多く、ウィークポイントにもなっていました。相手に少ない決定機を仕留められる試合が続き、安定した戦いができませんでした。

②後半戦の躍進

勝点43 13勝4分4敗 得点42 失点25 +17

後半戦の主なスタメン(攻撃時の立ち位置)

 後半戦は髙橋の右SB起用や佐々木の左CB起用、田中の成長、ドゥドゥの加入などによって攻撃の質、繋ぎの質が増しました。また、コンビネーションも深まり、得点を増やすことができました。

髙橋壱晟&佐々木翔悟の起用法
 
21節のいわき戦から髙橋は右SB、佐々木は左CBで使われ始め、後半戦はこのポジションでレギュラーに定着しました。
 右SBで起用されるようになった髙橋は安定したキープ力、プレーの正確さにより右SBの主力に。後ろから繋ぐ時の逃げ道にもなり、ボール保持のところで大きく貢献しました。
 小林監督はこのポジションの繋ぎでのイージーミスの多さを問題視していました。

 確かに前半戦に右SBで起用された松田や西久保はボール保持のところでイージーなミスが多く、相手ボールになってしまうことが多かった。この問題を髙橋の右SB起用によって解決することができました。また、前で起用されている田中との組み合わせも良く、サイドに張る田中に対して内側で、田中がカットインするとオーバーラップでサポートして攻撃に厚みをもたらしていました。あとはペナ外からミドルで決めるシーンは見たかったですね。アウェイ磐田戦でポストに当てたシーンなど惜しいシュートは多かったような印象なので、今シーズンはゴールが欲しいですね。
 守備面に関しては1vs1での対応やクロス対応など課題は多いように思いますが、試合を重ねて改善していって欲しいです。
 佐々木に関しては正確なロングキックで攻撃面において大きく貢献をしました。対角の田中に対して鋭いロングボールを正確に通すことができ、これがチームの大きな武器となっていました。右CBで出場したホーム仙台戦では対角の日高に対して鋭いロングボールを通し、仙台のプレスを無効化。このロングボールが起点となって、呉屋のゴールを生み出しました。

 この佐々木のキック・展開力は相手の脅威となっていて、7連勝達成に大きく貢献していました。
 一方で守備に関しては髙橋と同様に1vs1、クロス対応のところは課題であると思います。強力なFW相手だと力負けしてしまうこともあり、今季は守備でもレベルアップが必要です。

田中和樹の覚醒+ドゥドゥの加入
 田中のスピードと突破力を存分に発揮したこと、途中加入のドゥドゥがワイドストライカーとして機能したことも後半戦に調子を上げた大きな要因の一つだと思います。
 田中は前半戦から使われていましたが、正直パッとしない印象でした。速いけど怖い選手ではなく、中途半端なプレーが多かったように思います。しかし、国立開催の清水戦辺りから積極的に仕掛け、サイドをえぐっていくプレーが増えてから怖い選手へと覚醒しました。
 田中は攻撃面では相手の背後を突くラインブレークの動き、守備面ではトランジション速く、強度高く守ることができ、ジェフのベースとなるものを体現することができていました。縦へのドリブル突破や相手の背後を突くラインブレークだけでなく、カットインから左足でシュートを狙うことも得意としており、この形からゴールこそ生まれませんでしたが、惜しいシーンを多く作りました。

 田中がサイド高い位置に張って相手SBをピン止めすることで、相手SH-SB間のスペースで風間がフリーでボールを受けるシーンはチームの攻撃の形の一つとなっていて、ここから田中がラインブレークの動きをして、相手の背後でボールを受けるシーンを多く作り出しました。去年は風間田中のコンビから多くのチャンスを生み出しましたし、今年もこうした形が多く見られるのではないでしょうか。
 田中の覚醒だけでなく、ドゥドゥの加入もチームに大きな効果をもたらしました。
 今治から加入したドゥドゥはホーム山口戦でスタメン出場を果たすと早速1ゴール1アシストの活躍をし、そこから左SHとして定着。最終的には16試合で7ゴールと結果を残しました。前半戦は左SHを固定化することができず、絶対的なレギュラー選手が不在でした。攻撃において質の高いドゥドゥの加入によって左SHのパンチ不足感を解決できましたし、試合をこなすにつれて日高や見木とのコンビネーションを深めていきました。ドゥドゥが内側で間受けできるポジションを取ると日高は大外、見木は降りてCB−SB間の中継役に、ドゥドゥが大外で幅を取ると、日高は内側に入るというように旋回をしながら相手の守備ブロックを崩し、チャンスを作り出しました。

 また、明るいキャラクターでムードメーカーという面でもチームに大きく貢献して、ドゥドゥの加入によってチームの一体感がさらに増したように思います。

積み上げてきたベース
 
前半戦から積み上げてきたチームのベースとなる部分が当たり前のようにできるようになり、それが後半戦の好調を支えました。
 小林監督が選手に求めてきた、チームのベースは球際でのバトルやトランジションの速さ・強度で相手を上回ること、ラインブレークをすることです。これらを前半戦から徹底してきたことによって後半戦は波に乗ることができました。交代により選手が変わってもこのベースの部分は維持することができていました。誰が出ても同じレベルで球際のバトル、トランジションの速さを出せるということが後半戦のジェフの強みとなっていました。

CBのビルド能力
 
前半戦からの課題でしたが、後方からの繋ぎでCBが運ぶドリブルや正対して相手にパスコースを読まれないようにすることなどをできていないことが多く、特に引いた相手には苦戦しました。

 前にスペースがあり余裕があるときは、運ぶことで相手を釣り出す作業が必要になります。この相手を釣り出す運ぶドリブルを行うことで受け手に時間とスペースを与えることができ、前進しやすくなります。
 ジェフのCBは相手を釣り出すことがあまりできず、ホーム水戸戦やアウェイ群馬戦などでは苦戦を強いられました。攻撃においてCBはビルドアップの出発点となるため、運ぶドリブルなどのプレーがとても重要になります。これは今季も課題となるでしょうし、改善しなければいけません。

攻め急ぎが招くオープンな展開
 
これも前半戦からですが、攻め急ぐことでオープンな展開を招いてしまっていて、これが後半の運動量の低下に繋がっていました。
 上で述べましたが、ゴール前まで前進していくためには相手を釣り出し、受け手に時間とスペースを与えなければいけません。ただ、ジェフの選手たちは相手を引き寄せる前にボールを前に送ってしまい、受け手に時間とスペースを与えることができていませんでした。味方に時間とスペースを与えて次のプレーに余裕を持たせるためにはゆっくりとプレーすることが重要で、速く前に送るプレー、攻め急ぐプレーは減らさなければいけません。実際にヴェルディ戦では攻め急ぐプレーが多く、これが結果的にオープンな展開を招いてしまっていました。オープンな展開になると選手の質に左右されやすく、ヴェルディの強力なアタッカーに広大なスペースで自由にプレーされてしまいました。また、攻め急ぐ→受け手に時間とスペースがない→ボールロスト→被カウンターという展開は当然体力を消耗しやすく、ピッチ上でシャトルランをやっているようなもの。この展開によって後半は劣勢に陥ってしまう試合が多かった印象です。ボール保持時、相手の守備がスカスカだった場合は前へ速くボールを送るべきだとは思います。ただ、早く前にボールを送ると早く返ってくるというリージョの言葉があるように、攻め急ぎはボールロストのリスクを高めてしまいます。味方に時間とスペースを与え、プレーの難易度を落とすためにももっとゆっくりプレーすることが必要です。

・ちばぎんカップ柏戦

 柏戦は2-1で勝ち、世界三大カップの一つであるちばぎんカップの王者に輝きました。柏のビルドがあまり上手くなかったこともあってジェフのハイプレスが嵌り、高い位置でボールを奪うシーンを多く作りました。ただ、サヴィオに個の力でジェフの右サイドを崩されることが多く、ここのチャレンジ&カバーであったり、サヴィオのサポートをする小屋松のケアを誰がするのかはっきりできていないことが多かったのは気になりました。SB裏は誰が埋めるのかをもっとはっきりさせなければいけません。
 攻撃面で気になったことがいくつかあったのでここについて触れていきます。

①後方からの繋ぎ

 ボール保持時は4-1-2-3の形になり、去年とあまり変わらず。とにかく藤田の加入は大きいなと思いました。正確に味方に繋ぐことができ、プレス回避でとても効いていました。
 また、久保庭に関しては縦につける意識が高く、攻撃の起点になろうとするプレーが多かったのは良かった。ただ、相手を釣り出せず、受け手に時間とスペースを与えられなかったシーンが多かった。また、正対できていないシーンも多く、パスコースも読まれており、受け手が困ることが多かった印象です。味方に時間とスペース与えるようなプレーをもっと意識しなければいけません。
 さらに、横山に関しては立ち位置が高すぎで、メンデスからのパスコースが少なかったように思います。もっと低い位置でビルドアップに参加すべきでした。

 上の図のようにメンデスが持った時にボールを受けれるような位置におらず、メンデスは藤田に戻すか、日高に出すかの2択しかないシーンが多かった。横山はもっと低い位置に立ちボールを引き出さなければいけません。

 横山がボールホルダーと対峙する守備者の斜め後ろまで下がることでメンデスからのパスコースが増えますし、中盤が空いてそこに小森が顔を出してボールを引き出すこともできます。
 去年は見木がこの位置でプレーしていましたが、見木はもっと下がってビルドアップに参加していて、これによってパスコースを作ったり、日高を押し上げたりすることができていました。横山も同じようにもっと低い位置でビルドに参加することが求められます。

②攻め急いでオープンな展開に

 昨シーズンと同じように攻め急ぎによりオープンな展開を生み出してしまうという課題は変わらず、この試合でも上で述べたような課題が起こってしまっていました。特に前半は消耗の激しい試合となっていて、カウンター合戦のような形になっていました。試合を落ち着かせるためにもゆっくりとボール保持をし、相手を引き付けることができたらリリースするというプレーをして、受け手に時間とスペースを与えることを意識しなければいけません。前に急ぐプレーによってボールロスト→被カウンターの展開を減らすためにもスピーディーなプレーは改善が必要です。

・最後に

 柏戦については改善点を主に書きましたが、普通に強い内容だったと思います。シーズン前の試合であれだけの完成度を出せるチームはなかなかないのではないかなと思いました。しっかりと昨年からのベースを表現することができていましたし、今年はスタートダッシュでハナを奪って逃げ切り優勝を期待しましょう!


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