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【開催レポート】「一人の想いが火をつけた、人口5万人の小さなまちの公民連携」〜4つのまちに学ぶ、公民連携とエリアリノベーション【群馬県みどり市】の事例〜

「変化が起きるまち」にスポットを当てて4つの先進事例に迫るオンラインイベント「変化が起きるまちは何が違うのか?〜4つのまちに学ぶ、公民連携とエリアリノベーション」。
初回で取り上げるのは、リノベーションまちづくりに取り組み始めて3年目の群馬県みどり市です。リノベーションまちづくりをはじめたきっかけから、約2年かけてプレーヤーを発掘し丁寧に関係構築してきた経緯、自身の変化、部署の垣根を超えた庁内連携まで、お話を伺いました。本記事では、2024年7月22日に開催したオンラインレクチャー&トークセッションをレポート形式でお届けします。



【ゲストスピーカー】

前半は、みどり市職員3名の方に、これまでの関わりとご自身の変化についてお話を伺いました。

①石坂 克広さん(みどり市 教育委員会 教育部 教育総務課)

最初の担当者として手を挙げた石坂さん。
コロナ渦でお祭り等のイベントを中止、縮小せざるを得なかった令和2年度に「部を跨いだ新しい取り組み」としてリノベーションまちづくりに着目。「とにかくやってみよう」と石坂さんが手を挙げ、新規事業として検討を始めました。
埼玉県杉戸町や草加市、群馬県館林市の現地視察に行き、リノベーションまちづくり先進地の取り組みを確認。沼津で開催されたシンポジウムにも自ら参加しました。
事業が開始した令和4年度には、まちに出てまちのプレイヤーを見つける「カルティベイトプログラム」を開催。他の課にも積極的に声掛けし、担当課だけでない、全庁的な参加を促しました。
教育委員会へ異動になった現在も「第1回リノベーションスクール@みどり」へ関わり続け、担当者時代にできた民間との繋がりは続いていると言います。

②須永 正樹さん​​(みどり市 産業観光部 観光課 リノベーションまちづくり推進係)


リノベーションまちづくり事業の現担当者である須永さん。
「人と人が出会い、繋がる。その繋がりが深まるにつれて、事業も面白くなっている感覚がある」と話します。
令和4年度に実施したカルティベイトプログラムでは、実際にまちに出ることでまちの人と仲良くなり、リノベリングスタッフに「市民の方と距離が近いですね」と言われることも。
また、須永さん個人としてはこれまで庁内で自主勉強会を実施してきた経験があります。地道に築いてきた職員との繋がりによって、リノベーションまちづくり事業の庁内連携がスムーズに進んだそうです。
まちに出て、まちに溶け込み、まちを楽しむ須永さん。もともと色んな所に行って、色んなところで勉強することが好きな性格だそうですが、リノベーションまちづくり事業を担当してからは知識を取り入れるだけでなく、現地視察やCleanup & Coffee Club(以下、CCC)の立ち上げなど、行動に移すことが多くなったそうです。

③櫻井 駿さん​ ​(みどり市 産業観光部 観光課 リノベーションまちづくり推進係)

令和5年度からリノベーションまちづくりの担当になった櫻井さんは、ほぼ知識0からのスタートだったそうです。
担当後初めての出来事は、富所さん主催の「みどり会議@ながめ余興場」でした。イベント終了後の懇親会に、令和4年度に開催したカルティベイトプログラムの参加者もおり、激励の言葉をもらったと言います。過去のプログラム参加者と行政の新規担当者の接点が生まれた場だったんですね。
その後は、これまで庁舎で食べていた昼食をまちの飲食店で取るようになったそうです。また、休暇をとってリノベーションまちづくりに取り組んでいる花巻や熱海に旅行に行ったり、岩手県紫波郡紫波町オガールシンポジウムにも自主的に参加したとのこと。
まちに染み出し、他の地域にも足を運ぶことで、そこに住んでいる人の生活や、地域で頑張っている人の存在を知ったという櫻井さん。自ら動くことで「楽しい」という思いが加速していったと語ります。
令和5年度には、塾長に花巻市の小友康広さんを迎えた「家守塾」、令和6年度にはローカルユニットマスターに富所哲平​さんを迎えた「第1回リノベーションスクール@みどり」を開催。これらをきっかけに今も活動を続けている個人やチームがいるそうです。


【トークセッション】

後半は、みどり市の民間プレーヤーである富所哲平さん、リノベリングの福島正・中島明も加わり、みどり市の取り組みと変化についてお話しました。

左上:中島 明(リノベリング)、中央上:石坂克広さん(教育委員会)、右上:須永 正樹さん(観光課)、左下:櫻井 駿​さん(観光課)、中央下:福島 正(リノベリング)、右下:富所 哲平さん(暮らしづくり会社いろといろ​​)

「とにかくやってみよう」と手を挙げたものの、立ち上げ当初は「まちに人がいない」と思っていた石坂さん。自らまちに出て一個人、一市民としてまちの人と関わりを続けていくうちに、芋づる式にまちに友達が増えていきました。
令和4年度に実施したカルティベイトプログラムによって、まちに頼れる人がいることを知った須永さん。世代問わず絶妙な湯加減で人と人を繋ぐことができると思い、まちのプレイヤーと共にCCCを開始しました。
令和5年度には新たに櫻井さんが参画。当初は仕事とプライベートの曖昧さに戸惑いもありましたが、まちの人の楽しそうな姿や、他の地域のステキな場所を見ていたら、仕事としての関わりのみならず、プライベートでも楽しくなってきたと言います。

民間の立場で関わってきた富所さんは「行政と民間が大きなビジョンに向かって協力できるようになった」と語ります。民間の人と行政の人が一緒に汗を流し、損得なく一緒に何かをすることで両者の距離が縮まり、「民間が要望を出す、行政が許可を出す/出さない」というよくある対立構造が薄まったそうです。5万人という小さな規模だからこそ、それぞれがそれぞれのキャラクターを理解し、「職業ではない役割」をまちの中で担えているのかもしれません。

令和6年度、立ち上げメンバーである石坂さんが別の部へ異動になります。しかし、同じ目的や気持ちを共有しながら事業を進められていたため、立ち上げメンバーが異動になっても次の担当者へ思いが継承されています。リノベーションスクールなど、新規プロジェクトもスムーズに展開されています。

想いが庁内へ、まち全体へと伝播し、変化が生まれていっているみどり市の今後がますます楽しみです!


4つの先進事例に迫るオンラインイベント「変化が起きるまちは何が違うのか?〜4つのまちに学ぶ、公民連携とエリアリノベーション」。他都市の開催レポートもぜひご覧ください。


株式会社リノベリングは、上記の都市以外にも100を超える自治体のみなさんと様々な実践を繰り返してきました。まずは個別相談から承っています。新しいチャレンジをぜひ自分のまちでも取り組んでみたいというみなさんは、どうぞお気軽にご相談ください。