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ローリン、ローリン、ローリン、ローリングリターン! ― スナップショットより連続写真を #投資信託

私はファンドをInvestするかどうか決める際、過去のリターンだけで判断することはありません。材料の一つです。

モーニングスター でファンドを調べたら、こんな数字が出ています。

201911_モーニングスター_三井住友・中小型株ファンド

ファンドのリターンを評価、比較する際に、この種の数字を活用されている場面を多々見ますが、疑問に思われたことありませんか?

これだけ、この種の数字の比較を見ても、何も分からない、というのが私の率直な意見です。

1年:2018年11月末から2019年11月末までの1年の騰落率
3年:2016年11月末から2019年11月末までの3年の騰落率
5年:2014年11月末から2019年11月末までの5年の騰落率
10年:2009年11月末から2019年11月末までの10年の騰落率

上表の数字は一瞬、その一日、2019年11月末のスナップショットに過ぎません。この数字を他のファンドと比べることにいくらかの意味はあるかもしれませんが、これで優劣を判断するとか、他のファンドやベンチマーク、参考指数と比較するとかって、あまりに一面的ではありませんか。なぜなら公募ファンドは購入も解約もほぼ毎営業日可能なわけですから。1年のリターンを見るのであれば、2018年10月末から2019年10月末まで、2018年9月末から2019年9月末まで、2018年8月末から2019年8月末まで・・・・の推移も確認すべきだと考えます。↑↑↑の表がスナップショットだとしたら、この推移は連続写真と言えるかもしれません。

そこで↑↑↑の表で取り上げたファンドをサンプルに、1年保有していたらどんな結果が出ていたのか、その推移を調べてみました。

201911_三井住友・中小型株ファンド_1年_ローリングリターン

最大値は 68.8%(2012年11月末から2013年11月末まで)
最小値は △52.4%(2007年10月末から2008年10月末まで)
平均値 14.0% 中央値 12.5%

1年保有してマイナスリターンとなったのが53回です。データは183個の期間がありますので約29%です。1年保有していれば約3割の確率でマイナスになっていたということです。

同じように、3年保有のリターンの推移を確認してみました。

201911_三井住友・中小型株ファンド_3年_ローリングリターン

最大値 201.3%(2012年7月末から2015年7月末まで)
最小値 △60.9%(2006年3月末から2009年3月末まで)
平均値 63.2% 中央値 49.9%

3年保有してマイナスリターンとなったのが43回です。データは159個の期間がありますので約27%です。一方、この数値で100%を超えているということは、3年保有したら投資した金額の2倍超になったということです。この100%超が34回です。21%となります。

続いて、5年保有のリターンの推移です。

201911_三井住友・中小型株ファンド_5年_ローリングリターン

最大値 340.8%(2012年11月末から2017年11月末まで)
最小値 △48.4%(2006年1月末から2011年1月末まで)
平均値 100.9% 中央値 126.1%

5年保有してマイナスリターンとなったのが51回です。データは135個の期間がありますので約38%です。一方、5年保有して投資した金額の2倍超になったのが75回です。56%となります。さらにこの中に3倍超が37回(27%)、4倍超が6回(4%)含まれています。

最後に、10年保有のリターンの推移です。

201911_三井住友・中小型株ファンド_10年_ローリングリターン

最大値 599.2%(2008年11月末から2018年11月末まで)
最小値 55.9%(2006年2月末から2016年2月末まで)
平均値 220.3% 中央値 119.4%

グラフの通り、10年保有してマイナスリターンはありません。データは75個の期間があります。10年保有して投資した金額の2倍超になったのが53回、71%となります。この中に3倍超が27回(36%)、4倍超が23回(31%)、5倍超が16回(21%)、6倍超が8回(11%)含まれています。

このように期間をずらしながら見る保有期間のリターンを

ローリングリターン といいます。

投資信託のリターンを評価する際に、私はこのローリングリターンに一番注意しています。同時にもう一つ注意すべきことは、これはあくまで過去の成績であって将来は全く分からない、ということです。今回取り上げたファンドの過去の成績は上記の通り立派なものと評価できます。繰り返しますが、しかし、これは過去のお話なのです。この数字を見てどうしてこのような成績を残せたのか、ということを想像するのです。想像できるだけの材料があるのか、というのも大事なポイントです。

10年前にこのファンドを探し出すことはできただろうか。
仮に探し出せたとして10年間保有し続けることができただろうか。

この2つをクリアできていれば、このファンドの立派な成績を享受できたかもしれません。そう考えると、このファンドの作り手がこの2つをクリアしうるような情報発信が出来ていたか、が非常に重要だったと私は考えます。きちんと情報が提供されていなければ、ファンドを見つけ出すことも、保有し続けることも非常に困難であるはずです(提供されていても難しい)。10年の間には評価損状態になっていた時期もあったでしょうし、それに耐えられず解約したり、ある程度利益を得たところで解約したりすることもあったでしょう。

ローリングリターンは非常に大事なのですが、その数字を生みだしたのは何だったのかを考える、想像するための情報、材料と一緒にファンドを評価したい、と常々考えています。

ファンドのリターンを見るには

ローリングリターン!スナップショットより連続写真を

です。

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